~孤児の二人と面談しましょう~
~孤児の二人と面談しましょう~
学園に届け出をだし、しばらく休学することになりました。
カージェス領の問題ってすぐに解決出来なさそうだし、ももちゃんともお茶会を開きたいもの。
目が見えないし、車いす生活なんだから、大変だと思うしね。
それに、私にとって一番大事なのはこの世界にいる『アネモネ』の存在だ。
カージェス領に近づくにつれ、何か精神的なつながりというか、何かと繋がっている感じがすごくするのだ。
このつながりを触ろうとすると気持ち悪くなる。おそらく、このつながりは『アネモネ』につながっている。ということは『アネモネ』が傷ついたらこの『エリザベート』の身体も傷つく可能性が高い。
なぜか本能的にそう感じたのだ。そして、この『エリザベート』に何かあっても、この世界にいる『アネモネ』にも影響を及ぼす。
二人は一つなんだ。そして、カージェス領に『アネモネ』がいることは確実だ。
カージェス領に着くと、リムバとラナさんが迎えにやってきた。
「お嬢様、おかえりなさいませ!」
リムバは私の横にいるムネリを不安そうに見ていた。
「リムバ。ムネリはかなり頑張ってくれていますわ。まあ、色々ありますけれど、問題はありません。それに、ムネリには彼女ができたんですよ」
そう言って私は同行してくれたさっちゃんを紹介した。
「はじめまして。サリナ・レドルフと申します。縁あってエリザベート様に仕えることとなりました」
さっちゃんはカテーシではなく、片膝をついて頭を垂れた。服装もドレスではなく、身動きがしやすいキュロットスカートをはいている。腰には短剣だが帯剣しているのだ。
「レドルフ嬢。頭を上げてください。貴女の事はムネリより報告を受けております。かなりの才覚を持ったものと聞いております。我が陣営としては貴女のような優秀な人が来てくれたことを心より歓迎いたします」
リムバはそう言って、さっちゃんと握手をした。和やかなムードはここまでだった。そう、私が孤児について質問をしたからだ。
「やってきた孤児は10人。男子が6人、女子が4人です。食事を与え、身綺麗にはしております。ただ、そのうち2名は少し問題があります。男性が1人、女性が1人です。お会いになりますか?」
嫌な予感しかしなかったが、会うことにした。男児も女児も自ら名前が無いと言っていた。男児の方の顔について、私が知っている人物に面影があった。ただ、このカージェスにはいないはずの人物だ。だって、私が彼、薄い灰色の髪をしたリッターと出会ったのは革命軍に入ってからだからだ。同じカージェス領に居たのなら記憶をしている。
「君の名前は?」
そう男児に、リッターに聞くとこう返ってきた。
「名前なんてねえよ。髪が灰色だから灰色とか、灰とか言われているくらいだ。で、俺は殺されるのか?殺すのか?お前らはいつだってそうだ!」
私の記憶の中にあるリッターとは全然性格が違う。どういうことだ?これは演技なのか、それとも素なのだろうか?
「いつだってそうってどういうこと?」
「俺には妹がいた。だが、妹は女ってだけで連れて行かれた。変態貴族にだ。妹はぼろぼろの身体になって帰ってきた。死んでいた。貴族ってのは変態の集まりなんだろう?俺を俺らをおもちゃのように使い潰して捨てるんだろう?ここにいる奴らもそうするつもりなんだろう。お前らはクズだ。全員死ねばいい。俺が、俺が殺してやる!」
なるほど。こういう感じだから、リッターは両手、両足を縛りつけていたのか。
「あなたの妹さんはひどい目にあったのね。助けてあげられなくてごめんなさい。そして、ここにいる孤児は孤児院で面倒を見るわ。ひどいことはしない。約束する」
優しくリッターに話しかけた。
「ふん、貴族のいう事なんて信じられるか。お前らは全員死ぬべきなんだ!」
リッターは心の底から貴族を嫌っているのがわかった。そう言えば、リッターがどうして革命軍に参加しているのか聞いたことがあったな。
確か、貴族が許せないと言っていたな。なんか詳細を聞くのが怖くて聞けなかったのを思い出した。
「そう。疑うのなら疑えばいいわ。しばらくしてその疑いが間違いだって気が付けば態度を変えてくれるかしら?」
「お前らのいう事は嘘ばかりだ」
交渉にもならない。
「なら、どうしてあなたは生きているのかしら?ご飯を食べてお腹もすいていないのでは?それも嘘なのかしら?」
私がそう聞くとリッターは黙り出した。
「なら、しばらく現実を観察しなさい。それでも納得ができないと言うのならこのカージェス領を出ていくといいわ」
私がアネモネ時代のリッターはカージェス領にはいない。だが、私が孤児としてカージェス領にやってきたのなら、これに近い出来事は起きていたはずだ。
ならば、リッターはカージェス領を抜け出してどこかに行ったのかもしれない。いや、そもそも、どこかの間者なのかもしれない。
「ただ、私たちもあなた達を観察させてもらいます。体調を崩されても困りますからね」
「わかった」
リッターは納得をしてくれた。もう一人。連れて来られた女の子を見て確信した。
この世の終わりを見てきたかのような暗い瞳をしているが、その女の子は紛れもなく、過去の私、アネモネだったからだ。
「あなたたちに不幸が訪れますように」
そう言った声は過去の私の声。だが、私には過去の記憶がない。一体何があったのだろう?




