~お茶会という尋問を乗り切りましょう~
~お茶会という尋問を乗り切りましょう~
「イレスティア王女殿下は離宮をどうして燃やされたのですか?」
なんだこのお茶会。というか、お茶会と言う名の尋問を今受けている。
目の前に聖ブブロ王女のジャミラ・フォン・ブブロが目を光らせている。
その横には青、緑、黄色の髪をした令嬢がいて、令嬢の後ろには執事が立っている。ただ、その執事はなぜか帯刀しているのだ。
普通お茶会って平和的な感じですよね。今の私はなんというか尋問大会と言う感じです。
お茶の味がわかりませんし、目の前のお菓子もなんというか砂でも噛んでいるのかっていうくらい味がわかりません。
「対外的には私が魔力暴走したことになっております」
実情を話すわけにはいかない。本当のことは隠さないといけない。私がそう答えるとジャミラ王女の眉がぴくっと動いた。なんだかこの人怖い。
「5歳児の魔力が暴走して離宮全体を燃やすとなるとかなりの魔力量を保有していることになりますよね。念のためこの水晶で魔力を計測させてください」
ジャミラ王女はそう言って魔力測定ができる水晶を取り出した。私は水晶に手を乗せる。
魔力が低い順にこの水晶は光るのだ。水色、緑色、黄色、赤とひかり最大だと眩しいくらいに光り輝くのだ。
そして、水晶は目が開けられない位に輝いている。
「もう、よろしくてよ」
ジャミラ王女は無表情だった。いや、話し方も感情がこもっていない。怖い。
「あなたは離宮全体を燃やせるだけの魔力は十分あることはわかったわ。魔力暴走をしたというのも5歳ならあり得る話し」
いや、勝手に決めつけないでよね。そりゃ、魔薬のことは言えないし、それにその魔薬の素材となる『ヒポポリ草』はなぜかカージェス領からこの聖ブブロ王国に販売されていたからね。
帳簿を見たけれど誰に売ったかまではわからなかったんだよね。量だけはわかったけれど。
『ヒポポリ草』を廃棄した後に何か動きがあるかと思ったけれど、何もなかったし、王都から聖ブブロ王国に使節団が送られたけれど、これも目ぼしい情報は手に入らなかった。
まだ、内通者がいるのかもと思ったけれど、ミューズたちの調査でカージェス領にはそれらしい人物は見当たらなかったのだ。
遠くから監視だけをされていたらわからないと言われたけれど。
誤解は解きたかったけれど、本当の事は言えないからな。だから、こういう時は何も言わない方がいい。
「では、次にカージェス領の領主でもあるのよね?ここ数年でかなり発展したみたいだけれど代官が優秀なのかしら?」
「ええ、リムバはとても優秀ですわ」
それは事実だ。リムバが居なければ発展はなかったですものね。後はラナさんだ。彼女が居るからリムバも頑張っている。
ちょっと歳は離れているけれどお似合いの二人だ。今回はジャミラ王女の眉は動かなかった。なんだろう。この眉の動き。怖すぎる。
「自分が行ったからと主張するのかと思ったら、きちんと他人を立てることもできるのですね」
ってか、ジャミラ王女は私のことをどういう評価をしているのだろう。もしかしたら私はそんな傲慢とか尊大とかいう噂が流れているのだろうか。
まあ、悪辣女王ってなんかひどい性格だっていう話しもあったような記憶が戻ってきた。
「自分一人で出来ることは限られていますから。それに、今の私があるのも色んなかたの支えのおかげですから」
とりあえず、ちょっとでもこのジャミラ王女の心証を良くしておかないと。といっても、本当にそう思っていますもの。だって、私は未来のことを知っているとはいえ、一兵卒だったのですもの。色んな人の知恵を借りないと何もできないですもの。
ジャミラ王女は無表情だ。顔のどのパーツの微動だにしなかった。怖い。
「噂とは違うようですね。では、どうして一つの集落を焼き払ったのですか?」
あれは私じゃなくダークエルフがやってきたからなんですよ言いたい。だが、ダークエルフは悪とか魔の存在と言われており、特にこの聖ブブロ王国では禁忌とされている存在だ。
どうも、聖ブブロ王国の神殿の最奥というか、最司教はエルフなのではという話しがある。そして、エルフとダークエルフは仲が悪い。
「まず、森を焼き払ったのは焼き畑農業という手法です。それはカージェス領の村を拡張する際に行いました。次に集落を焼き払ったのではなく、疫病で多くの民がなくなった集落の死体を焼き払いました。その死体から病が広がる可能性があったためです」
ダークエルフのことは告げない。そして、焼き払ったものが『猫人族』であるということも告げない。
イレスティア王国では人族とそれ以外では対応が異なるが、聖ブブロ王国は神の前は全て平等であるという教えがある。
イレスティア王国の価値観をここで告げた場合ジャミラ王女は対応を硬化させる可能性がある。
だから、ダークエルフが関わっているという情報を伝えていないだけで、後は本当のことを話す。
一生懸命話したけれど、ジャミラ王女は表情が変わらない。無表情が怖すぎる。
「そうだったのですか。だが、なぜそういう話しにならなかったのですか?」
「私は決定に従ったまでです」
これは嘘ではない。というか、こう返答する以外ない。
無言の圧力だ。しかも徐々にジャミラ王女は私の顔を覗き込んでくる。逃げちゃダメなやつだよね。逃げたら嘘だと思われるだけだ。
実際、私は決定に従う以外なかったですからね。
「どうやら本当のようですね。私は嘘を見抜く能力があります。あなたの話しには真贋が織り交ぜられているみたいです。では、最後にこれは『はい』か『いいえ』で答えてください」
嘘を見抜く能力とかまじでヤバかった。まあ、嘘つくとすぐにボロがでるからね。
「わかりました」
ちゃんと答えよう。
「あなたは自分がしてきた行動を誇れますか?」
「いいえ。誇れません。もっと他にやり方があったのではないか。違う選択をしてれば救えた命があるのではといつだって後悔しています」
後悔してばかりだ。
5歳の時なんて使用人だったあの人たちも、やり方が違えばあんなにも死なずに済んだはずだ。
カージェス領に来た時もそうだ。オーゴを死なせずに済む戦い方もできただろうし、オリビアだって獄中で苦しみながら死なせるのではなく助ける方法だってあったかもしれない。
ただ、あの時のカージェス領にはお金が足りなかったし、オリビアがしてきたことを無罪にすることも難しかった。そして、民が主導する私刑を認めることもできなかった。
言い訳なのはわかっている。だからこそ、私はこの罪を背負う必要があるのだ。
「わかりました。学園で流れている噂は事実ではないと判断いたしました。これからもよろしくお願いします。イレスティア王女」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ブブロ王女」
乗り切った。よかった。ってか、あのプレッシャーきつかったよ。
「では、ここからはお茶を楽しみましょう。色々と聞きたいことがあったんですよ」
ジャミラ王女の笑顔が怖かった。その後はかなりさっちゃんの知識とイスファのさりげないフォローにかなり助けられました。
ずっと、お茶もお菓子も味がわからなかった。
「楽しかったですね」
「ソウデスネ」
笑顔が引きつってしまった。
ジャミラ王女の眉がぴくっと動いた。
「嘘つきましたね」
このジャミラ王女怖いよ。




