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~不正の証拠を集めてみましょう~

~不正の証拠を集めてみましょう~


「今すぐ拘束を解きなさい!」


 さっきも思ったが力強く声を出し、意識を乗せると威圧というスキルのようなものが発生する。


 周囲が怯んだり、跪いたりするのだ。


 スチュワートは辛そうな表情をしているが耐えているのが解る。馬車の御者の横に居たエルリックはどうしていいのかわからずにわなわな震えている。


 少年のわなわな姿はかわいいが萌えはしない。ごめんね。私にはショタの属性はなかったみたいだわ。


「な、何を。この私に歯向かうというのですか?」


 おかしな事をスチュワートは言う。


「歯向かう?スチュワートは筆頭執事なだけですよね」


 私がそう言うとスチュワートは胸を張ってこう言ってきた。


「ええ、そうですよ。この離宮の全権限を委任されて私はここにいるのです。だから私は誰よりも偉いのです」


 この離宮の責任者は私のはずだ。なぜならこの離宮は私が成人の儀を迎えるまでの住居で、この離宮は私のためのものだ。


「それは権限が委任されているだけでしょ。ならばその委任を解除いたします」


 その決定権は私にある。


 普通に考えて5歳児が行えるものでないので委任されているのだ。


 残念ながら転生前は17歳だったのよね。見た目は子供、中身は少女。その実態はまだ自分の状況が理解できていない私です。


 まあ、今の知識も孤児院で教育を受けたからだね。


 あのフードの人が孤児でも社会できちんとした仕事につけるため教育に力を入れてくれたお陰で私の知識はそこら辺の人よりも高いのだ。えっへん。そして、感謝です。


「くっ、後悔しますよ」


 スチュワートがそう言って引きさがっていった。よかった。暴れられたらどうしようかと思っていたのよね。


 今の所ちゃんと使える魔法は火魔法だと火の玉を投げつける「ファイアーボール」、水魔法は身綺麗にする「ウォッシュ」と水を生み出す「クリエイトウォーター」に、暗魔法の「ネクロマンシー」だけだ。


 というか、暗魔法だけおかしくない?これ表立って使えないし、効果も死者をアンデッドとして復活させることだからね。


 なんか、この「ネクロマンシー」だけは使うと何か魔力というより生命力がごっそり奪われる感じがするから使うのに勇気がいるのよね。


 スチュワートが居なくなったので、目の前には縛られた執事やメイド、その他もろもろが転がっている。横を見るとエルリックは目をきょろきょろさせて、挙動不審だ。


「エルリック。ここにいる人たちの拘束を解くのを手伝って下さい。私も行います」


 実はずっと観察していたけれど厳重に拘束されている人と、緩やかに拘束されている人と分かれていたのだ。


 こんな解りやすい事して、ばれないとでも思ったのかしら。解放しながら人を分けていく。もちろん、緩やかに拘束されている人は一つにまとめている。


 ちゃんと目に憑きやすいように目の前に固めておいてあげた。そして、周囲をきつく縛られていたものたちに囲ませる。


 衆人環視の中で怪しい行動なんてできないわよね。どう、私ってえらいでしょ?うふふ。

全員の拘束を解き終わったので、私がこれからの事を宣言した。


「皆さんもさっき聞いた通りこれから離宮は私が管理いたします。けれど私は見ての通り若輩者です」


 というか見た目は5歳児ですしね。その5歳児に大人たちが跪くという絵図らが最悪なことになっている。


 多分、悪辣女王はこの状況に悦に浸れる性格だったんだろうな。私は違うから。絶対に権力におぼれたりしないんだからね!


「そのため皆さんの協力が必要です。今までのやり方もあるかと思いますが、個人ではなくチームで仕事をしてもらいます」


 まずは今の関係性を変えていく。


「次に仕事の報告を1日に1回してもらいます。報告の時間はチームによって変えます。その時間になったら私が現地に確認に行きますね」


 視察だ。向こうからしたら子どもと思ってなめてくれたらありがたいけど、今目の前で目を大きく開いて私を見ているから警戒されるかもですね。


 特にゆるく縛られていた人たちの挙動がおかしい。動こうか、動かまいか、周囲を見渡しているけれど、残念でした。


 あなた達は多くの人の目にさらされているから変な行動はできないですよ。ぷくく。


「それではチーム分けしますね」


 チームはたださっきの緩く縛られていた人たちを閑職に追いやりつつ見張りをつけていっただけだ。


「では仕事を開始してください。最初はなれない仕事で戸惑いもあるかと思いますが時間を駆けて頑張っていきましょう」


 私はそう言ってまずは書類を保管している部屋に向かった。


 スチュワートがいたがここは私が確認しますと言ったらすごく嫌そうな顔をしていた。


「子どもに何が解る。ごっこ遊びが過ぎると王に進言してくる」


 そう吐き捨ててスチュワートは出ていった。どうやらなめてくれているみたいだ。ありがたいことだ。地面を2回ほどふみ「リーリカ。手伝って」と声をかける。


「ゴメイレイ、ト、アラバ」


 リーリカは影から出てきた。服装はメイド服を着ている。この館にあった自分のメイド服なのだろう。スチュワートの動きがどうも不自然なのよね。


「リーリカ。お願いがあるの。この部屋、この館で不自然なもの、ほんらいあるべきでなもの、厳重に隠されているものを調べて欲しいの?」


「カシコマリ、マシタ」


 あれ?なんだかリーリカの顔がすごく悪い感じの、三日月の様な笑顔をしていた。まあ、今のリーリカなら鍵がかかっている場所でも関係なく入れるし、誰かに見つかるようなへまをしないと思う。


 しないよね?大丈夫だよね?そう信じてるからね。


 ということで、私もこの執務室の書類でも確認しましょう。何か出てきたらいいななんて思っていました。




 すごい。まるで不正の宝石箱や~


 とか、言いそうになった。


 二重帳簿位出てきたら良いな~程度で調べてみたら横領よりももっと不味いものが出てきたのだ。


 前の世界で悪辣女王が散々なことをしてきた中でもこれだけは手を出していなかったご禁制のものがある。


「魔薬」


 体に吸収すると高揚感が得られ、ハイになれるというものだ。


 自らの楽しかった記憶が増幅されるのだが、辞める事が出来なくなるのと、吸収しすぎると体内の魔力が暴走し、人ではない化物になるのだ。


 まぁ、戦場で敵兵士に投与し、暴れさせるという戦略を北にある帝国は戦術として使用しているが、反人道的すぎるということで周辺国家から避難の声が上がっているのだ。


 あの悪辣女王ですら手を出さなかった禁制の『魔薬』を北のラース帝国から購入している記録があるのだ。


「書類だけじゃ弱いね。現物を確保しましょう。おそらくスチュワートしか入れない所で管理しているでしょうから」


 地面を2回叩いてからリーリカにそう告げる。



 そう言って離宮の中を捜索していたら父上が久しぶりに離宮にやってきたのだ。



「エリーよ。何をしているのだ?」


 低い声でそう言ってきた。この離宮にやって来たくなかったのだろうな。すごく嫌そうな雰囲気がしている。傷つくなぁ。


「ごっこ遊びはこれで終了です。お嬢様には罰が必要ですね」


 スチュワートがそう言っている。


「父上。ちょうどよかったのです。この離宮を任せていたスチュワートの不正を発見いたしました。これがその証拠の書類です」


 そう言って書類を父上に渡す。


 書類の一番上にあるのは禁制の『魔薬』についてだ。


「こ、これは本当なのか?」


「これから保管されているであろう場所を確認しにいきますが、一緒にいきませんか?」


 保管されている場所や鍵についてはリーリカから報告をもらっている。リーリカは優秀だった。


 ちょっと感情が読めないというか、無表情で、抑揚のない話し方のため掴み処はないのだけれど、優秀なのは間違いない。


「ここです」


 ちゃんとリーリカが案内してくれる。私の影の先がぴょこんと少しだけ動くのだ。


 まあ、注意して見ているものがいれば違和感があるかもしれないが、人って他人の影に注意なんてしないし、今はそれ以上に色んな問題が起きているからね。


 そして、着いたのは使われていない、本来は何も保管されていないはずの倉庫だ。


「ここの管理は誰だ?」


「スチュワート。あなたですよね?あ、そうそう。この倉庫の鍵ですが、かなり厳重にかかっていますね。スチュワート開けてもらえませんか?」


 スチュワートは大量の汗をかいている。そんな風にわかりやすいリアクションしたら私がやりましたって言っているのと同じだよ。


「そ、そうですね。開けたいのですが、鍵がなくて」


 そう言うと思ったので、先にリーリカに回収してきてもらいました。リーリカは影を渡れる。私のポケットという影の中に鍵をそっと忍ばせてくれた。


 ってか、なんだってできちゃうんじゃないの?


 そう、思ってしまったが、革命軍は四天王たちの弱点も把握していた。リーリカは死者だ。聖水を大量に浴びてしまったら消滅してしまう。


 後は太陽光にも強くない。日中外に出る時はフード必須なのだ。


 そうそう、鍵についてだった。


「ご安心ください。こんなこともあろうかとスチュワートの部屋から鍵をお借りしていますわ」


 私がそう言って鍵を見せるとスチュワートは実力行使を選んだ。5歳児の私は背が低い。当たり前だ。力任せに押さえつけ、鍵を奪われた。


「ふん、これは。大事な鍵なのだ。返してもらうぞ」


 もちろん、奪われることも想定済みだ。だって、私は非力な5歳児ですもの。


「あ、ちゃんと複製しているので。父上。これで、あけてください」


 私はそう言って父上に鍵を渡した。というか、スチュワートが奪ったのは偽物なのよね。鍵をあけて、倉庫の中にある『魔薬』をみた父上はこうつぶやいた。


「これはまずいな。これは焼却処分だな」


 まさかこれが引き金となってあんなことになると思っていなかった。



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