~雨宿りをしましょう~
~雨宿りをしましょう~
「これは結構はでにやられましたね。ちょっと確認するのでイレスティアさんは席をはずしてください」
理事長にイスファの傷を治してほしいと伝えた所、席を外すように言われたのだ。
まあ、傷は見える所だけとも限らないから服も脱がないと行けないのか。そりゃ、イスファも御年頃だから恥ずかしいよね。
私もまじまじ見るわけにもいかないし。これでも乙女だものね。ただ、本当は回復魔法を見たかったんだけれど、なかなか見せてもらえないんだよな。
というわけで、待っている間に理事長室の横にあった書庫の本を読ませてもらっていた。
聖魔法についての文献はなかったけれど、聖ブブロ王国の伝記があった。
聖ブブロ王国には過去勇者と呼ばれるものが降臨し、暗魔法を得意とする魔王を撃ち滅ぼしたと言う。
戦いは壮絶で、聖ブブロ王国は防衛のため聖魔法で結界を国内に展開したという。その結界内では魔と呼ばれる存在は力を奪われ、発揮できないという。
そして、魔が再び現れた時、すぐに感知できるよう結界に細工が去れており、空が赤く染まるというのだ。
御伽話し的な何かだと思って読んでいたのだが、ふと外が騒がしいと思ったら空が赤く染まったのだ。
「はへ?」
つい声に出てしまった。何が起きたのかと思ったら私の足下の影が動いた。
「ソト、デタラ、ソラ、アカクナッタ」
まじか。リーリカはイスファの姉フェリアルを見つめ、足をひっかけて転ばせることには成功したらしい。ただ、その時に手を少し出しただけで、空が赤くなったという。
というわけで、リーリカは聖ブブロ王国に居る時は影から外に出たらダメということがわかった。いや、これヤバすぎでしょ。
しばらくして理事長がやってきた。イスファの傷は完璧に治っていた。
「理事長。ありがとうございました。それで、外が騒がしいようですが、何があったのですか?」
いや、知っているけれど、ひょっとしたらリーリカ以外の何かに反応したと信じたいと思ったんだよね。後は誤作動的な事とか。
「私ははじめての経験ですが、どうやら悪魔がこの結界内に立ち入ったみたいです。悪魔の行方はつかめておりませんし、目的も不明です。しばらく学園は休校にする予定です」
え?まじですか。ってか、そんな大事になっているんだ。
「悪魔ってどういう存在なのですか?」
私はリーリカじゃないって信じたいんだよ。もっと、人から遠い角が生えていたり、ごつごつした羽があったり、爪が伸びていたり、牙がするどい何かであってほしい。
「そうね。人のそれに近いの。けれど、聖水に弱いの。だから、これから1時間ほど聖水の雨をこの学園内で降らせるの」
まじか、リーリカ大丈夫かしら。しばらく離れておくほうが安全かしら?
「タブン、ダイジョウブ。ツラクナッタラ、ニゲル」
どうやら大丈夫みたいだ。でも、無理しないでね。
「そんなこと出来るんですね」
「ええ、擬似的に雨を降らせる魔道具がありますの。今日から1週間ほど聖水の雨が不定期に降り注ぐから。傘を用意しておくといいですわ。それと、1時間ほどどしゃぶりになりますのでしばらくこちらに滞在ください」
ってか、どしゃぶりなのか。リーリカ大丈夫?
「タイヒスル。カージェス、モドル」
それがいいわ。リーリカに消滅されたら困りますもの。
「その聖水で悪魔は倒せるのですか?倒したってわかるものなのですか?」
リーリカ以外が退治されていて欲しいと願った。
「そうね、わかる場合もあれば、わからない場合もあるの。だから1週間ほどこの処置を繰り返すの。それにその間は何が起きるかわからないから、できるだけ外出は禁止で」
外出禁止を聞いてなぜかイスファの顔が曇った。どこか行きたかったのだろうか?
「それはお茶会とかもダメということですか?」
イスファがそう聞いてくれた。ああ、そうか。ブブロ聖王国のジャミラ王女からのお茶会をずっと実現できていないことを気にしてくれているのね。
私としては流れてくれて助かっているんだけれど。
「そうね、この期間は避けてもらいたいわね」
よっしゃ。これでまたしばらくジャミラ王女から逃げられる。ジャミラ王女って何かちょっと怖い雰囲気あるんだよね。
正義の執行官という感じで。
「先ほども話しましたが、姉が暴走する可能性があるので、あまり家には長く居たくないのです」
イスファを苛める姉が居ますものね。家の中でずっと一緒だとあれ以上の怪我をするかもしれない。これはどうにかしなきゃだわ。
「なら、イスファ。私のゲストハウスにしばらく滞在するのはどうですか?部屋も余っていますし」
また怪我されたら困りますものね。私がそういうと理事長は「あら、まあ、そういう関係ですの?」とかよくわからないことを言って来た。
イスファと姉のフェリアルはそういうドメスティックな関係なんですよ。
「イスファはどうかな?嫌なら無理にとは言わないけれど」
「嫌なわけないじゃない!でも、いいの?」
そりゃ、殴る、蹴るを受けるの嫌だものね。
「ええ、いいわよ。だって、イスファは大事な友達ですもの」
私がそう言うとなんだかイスファの顔が無表情に一瞬なった。理事長が「苦労するわね」とかイスファに向かって言っていた。
うん、姉と弟の戦いって苦労するよね。理事長がイスファの理解者になってくれて本当によかった。
「じゃあ、ちょうどいいわ。うちに来た時に剣術の稽古もしましょ。あ、でも、外は使えないのか。ならばダンスの稽古もしましょう。ちょうど背丈の近い練習相手が欲しかったのよ」
私がそう言うとイスファの表情が笑顔に戻った。やっぱり殴る、蹴るとかされていたら精神的に不安定になるよね。
無表情になったり、笑顔になったりイスファは忙しい。
ということで、1時間お話しをしたり、本を読んだりしながら楽しく過ごしてからゲストハウスに帰りました。
ちなみに、なんかフェリアルの近くで悪魔が出たのではという話しになり、フェリアルは事情聴取を受けていたそうだ。
いや、リーリカがばれなくて本当によかったよ。




