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~馬車の中でお話ししましょう~

~馬車の中でお話ししましょう~


 リーリカが影から離れたのを確認してから、私は理事長の所に向かう準備をした。


 準備と言っても私が何かをするわけではなく、ムネリが馬車の手配をしてくれ、手土産の焼き菓子はいつの間にかリズさんが用意してくれていた。


 どうやら、何があっても大丈夫なように手土産にできそうな焼き菓子やティーセットなどは備蓄しているらしい。


 使わない場合はお茶のお供として使うのだと。いつの間にこんなことに。


 ちなみに、ミューズは家事全般が壊滅的なので、こういう時は役に立たない。だから、イスファの姉を襲撃したかったみたいなんだよね。


 活躍できる場はいつか来るよ。そのいつかは多分今じゃないだけ。


 

 用意ができ、馬車に乗るのだが、ムネリが氷嚢を用意してくれていた。


「少しでも冷やされた方が痛みはましになるかと思います」


 そう言ってムネリはイスファに渡していた。ってか、ムネリが普通だ。いつものような変態色がまったくない。いや、目線がちらちら私のふとももを見ているくらいで言動とか行動が普通だ。


 これくらいならいいのにとか思ってしまった。


「エリーのところは優秀な人が多いんだね」

「そうでもないよ。ってか、イスファって侍女がいつもついているけれど、無言だよね」


 イスファにも侍女がいつもついている。黄緑の髪の無表情な女性がいつも近くにいる。だが、会話をしているところを見たことがない。


「そういうものでしょ。エリーのところが特別なんだよ。情報が外に漏れないように、侍女や執事の喉を潰す貴族もいるくらいだしね」


 だからリズは喉を潰されたのか。でも、そんな漏れたら困る秘密って何なんだろう?


 私なら胸にある魔方陣とか、未来を知っているとか色々あるけれど、話そうとしたらうまくいかないしね。


 他の人も言っていないだけで、私と同じように大きな秘密を抱えているのかも。


「イスファも大きな秘密を持っていたりするの?」

「秘密と言うか、言っていない事と言うか、言いたいこととと言うか、伝えたいことはあるよ」


 イスファにも秘密があるんだ。


「でも、伝えたいことは早めに伝えた方がいいわよ。何が起こるかわからないんだし」


 そう、ももちゃんだってもっと色んなことをしたかったはずだ。色んな世界を見て、色んな所に行きたかったはず。


 それはもう叶わない。だから、したいと思ったことは早めにした方がいいんだ。


「そうだね。わかった。エリー。今日、この後で時間もらえるかな?」


 あら。なんかイスファの目がいつもより爛々としている。ああ、傷が痛いんだよね。我慢しているからそういう目なんだろうな。


「うん、治ったらどこかいこう」


 痛みが治ったら落ち着くだろうし。


 馬車の中では他愛ない話しをした。この街におしゃれなカフェがあるとか、裏路地に過去のテストの問題集が売られていたとか、後は誰もいないのに影だけが動いている不思議現象を見たとかだった。


 うん?その影ってひょっとしてリーリカじゃないかしら。もっと目立たないように行動するように後で戻ったら言っておこう。


 会話を楽しんでいたら学園の離れにたどり着いた。そこに理事長がいるらしい。



 馬車を降りる時にそっとエスコートしてくれた。イスファの手は小さいけれど私のぷにぷにの手と違ってしっかりしていた。


「イスファの手って硬いのね」

「うん、剣の訓練をしているしね」


 そう言えば、授業で剣術もあったんだ。ミューズに特訓を依頼したら「ぷにぷには正義です」とかわけのわからないことを言われたし、ムネリに話したら「ミニスカートでニーソが正装です」とか言われたから断ったんだよね。なんか恐怖を感じたからだ。


 あ、そうか。イスファに教わればいいんだ。


「私は剣術得意じゃないから今度一緒に特訓しましょ」

「もちろん!」


 そう、私はこの悪辣女王のスペックの高さを理解していなかった。それを理解するのはもう少しだけ後の事だった。



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