~閑話~
~閑話~
「お嬢様は一人で大丈夫ですかね?」
ミューズは新しく執事になったムネリにそう尋ねた。
「そうですね。一人で行動されたことがないから、不安はあるのではとリムバ様が言われていましたね」
ムネリはエリザベートの靴下を洗濯し、靴やスリッパに対して『ウォッシュ』をかけて洗浄している。
靴を手にしながらうっとりした表情をしている。
「ムネリはどうしてそこまでお嬢様の靴や靴下に執着しているのですか?」
「わかりませんか?お嬢様は成長期です。歪みを見てサイズがあっているのか、間違っているのか確認する必要があります。靴が小さいままだと足が締め付けられてしまいます」
靴を細かく見てチェックして匂いも嗅いでいる。
「一人で色々と出来るようにするよう特訓が必要ですかね?」
ミューズは部屋を慣れない手つきで部屋を掃除している。
「特訓方法は私が考えます。それと、慣れない仕事は無理にする必要はありませんよ。それにこの借りているゲストハウスについてはひょっとしたら侍女を一人雇い入れるかもしれません。ただ、誰でもいいと言うわけでもないので選定が難しいですが」
ムネリはそう言って次はカーペットにゴミがあるのか確認していた。
「ムネリ?誰か雇い入れるつもりですか?」
ゲストハウスは賃貸物件だが、部屋の数は多く、寝室、客間、応接室、食堂、、浴室、ダンスホールがある。特に客間や応接室は複数あるため、王族が住む物件として問題ないレベルだ。
このような賃貸物件はこの聖ブブロ王国内には多くある。特に相手の身分や予算に合わせて対応できるようになっているのだ。
部屋の掃除は軽くすましているし、庭園については1週間に1回程度剪定をするくらいだ。庭の水やりなどはミューズが行っている。いや、どちらかというと体力を使う作業をミューズが行い、掃除、洗濯、調理、お嬢様の服の裾上げなどについてはムネリが行っている。
「そうですね。私だけでは手が回らなくなりそうですから。それに、今のままだとお嬢様に何かあった時の護衛がミューズだけになってしまいます。私がもう少しだけ手が離せられるようになるのが理想ですね。ただ、お嬢様への教育は時間を見て行いましょう。勉強については問題ないくらいの知識レベルはお持ちですが、生活をするという点においては及第点には届きませんからね」
エリザベートを教育してきたのはミューズとリムバであって、ムネリではない。ミューズはエリザベートが年齢の割に色んなことができるため、教育が不要だと思っていたみたいだ。
リムバは聖ブブロ王国に向かう前に事前確認をした時に、自分の教育の漏れを実感し、ムネリに教育を託したのだ。
「お嬢様は年齢のわりに出来ることは多いです。けれど、その出来ることや、知識には偏りがあります。本日は入学式だけのため、大きな問題は起こさないと思いますが、これから徐々に教育が必要ですね。その教育の状況次第ですが、家事ができる奴隷の購入を検討したいですね。できればむっちり太ももの女性が希望ですが、丁度いい幼女がいればいいのですがね」
ムネリのその言動を聞いてミューズはため息をついた。
「どうしてそこまで太ももと幼女にこだわるのですか?」
「なぜ理解できないのですか?ただ、私にも矜持があります。見守りはしますが、私からは触れません。踏んでもらうことはあっても、すべて受け身です。わかりますか?」
ミューズは汚らしいものを見る目でムネリを見つめた。
「とりあえず、お嬢様が戻って来たら何かトラブルがなかったのか確認しましょう」
「そうですね」
二人は知らなかった。入学式の一日だけでエリザベートがトラブルをいっぱい抱えて帰ってくるということを。
そして、早めに家事ができる奴隷が必要になったのだ。迅速な対応が必要であったため、ムネリの理想の太ももの持ち主でもなく、幼女でもない女性の侍女を2名雇うことになったのだ。
元オザーム東方連合国のやんごとなき貴族に使えていたけれど、粗相をした結果、負債を負わされた少女とその母親。
二人とも食事が足りていなかったのかかなり細身であり、足は針金のように細かった。
髪は二人とも緑色。肩くらいの長さに整えられている。真ん中で髪を分けているためおでこがでている。
母親は36歳。名前はリズ。ただ、喉を潰されているため声が出せない。
娘は12歳。名前はラピス。背は年齢より低い。虐待を受けていたのか右足を少し引きずっている。
問題はあるが、家事については問題なくできるので受け入れることに決めた。
明日、学園から戻って来てから徐々に教育をして行こう。だが、それ以前に聖ブブロ王国、王女のジャミラ・フォン・ブブロから庭園に呼び出されているため、お茶会についてのマナーを教えないといけない。
一日でかなり詰め込んだが、なんとか及第点まで辿りついただろう。明日は新しいトラブルを起こさない事を祈っておこう。




