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~迷子にならないようにしましょう~

~迷子にならないようにしましょう~


 イレスティア王国は四方を他国に囲まれている。


 北はラース帝国。西は聖ブブロ王国。東はオザーム東方連合国。そして南にはミルザ王国がある。


 このミルザ王国は南にあるということもあり、広大な農地が広がっているのだ。


 アネモネ時代。食べるのに困ることが多かったからミルザ王国の広大な農地は羨ましいと思っていた。


 だが、悪辣女王はこのミルザ王国の第一王子を誘拐し身代金代わりに小麦を大量に要求したのだ。


 そして、小麦をもらったにもかかわらず第一王子をミルザ王国に戻すことはなかったし、第一王子の意思を無視して結婚までし、ミルザ王国から婚姻の祝い金を寄越せと金品や宝石などを要求したのだ。


 悪辣女王の有名なエピソードの一つだ。



 だから私は決めている。絶対にミルザ王国の第一王子とは関わり合いにならないと。


 今まで私は注意をしてきた。多分。

 頑張ってもきた。おそらく。


 けれど、悪辣女王エピソードの内容はわからないけれど、結果は変わっていないのだ。


 まあ、離宮では50人中2人は助かったけれどね。


 あ、リーリカがリビングデッドになったのは助かったと言っていいのかわからないけれど、まあ助かったと思っておこう。


 それと、少年執事のエルリック。今はリックだけれど、彼も生き残っている。


 けれど、不思議なんだよね。アネモネ時代に二人とも生きていた。


 ということは、ひょっとしたら、悪辣女王のエピソード自体が間違っていたのかも。


 本当は私が今回改変したと思っている内容と同じか近いことが起こっていたけれど、周囲から強引に『エリザベートを悪者にする』という結果を押しつけられているのではと思ってしまったのだ。


 そこで、私は考えたのだ。


 だったら、今回はミルザ王国の第一王子と接触しなければいいのだ。接触しなければ問題は起きない。


 そう思っていました。



「今日の入学式は門前までしか同行できませんのでご注意ください」


 ミューズが心配そうにそう言って来た。


「大丈夫よ。私だって子供じゃないんだから」

「いえ、8歳は子供です。それに迷子にならないか心配で」


 ミューズがそう心配してくれた。普段ならリーリカに下調べをしてもらうのだが、この聖ブブロ王国に来てからリーリカはなんかぐったりした感じなのだ。


 だから、リーリカにお願いはできない。


「大丈夫だって。学園でしょ。迷子になんてならないわよ」


 なんて思っていました。ほら、学園とかいうから、門を通ったらメインストリートがあって、そこを歩いていけば校舎があり、横に講堂とかがあって、そこで入学式があるって思うじゃない。


 門を通ると城下町みたいな感じで店が大量にならんでいるし、その先にあるのは学園ではなく、この中央学園を取り仕切る執行役員用の宮殿だって言うのよね。


 もう、意味がわからない。というわけで絶賛迷子になりました。



 でも、大丈夫。私みたいなきょろきょろしている同学年っぽい子の後について歩けば学園に着くよね。


 それに学園の生徒は制服を着ている。女性は紺のワンピースに胸元にリボンがあり、白いカーディガンを着ているのよ。更に白いショルダーバック。


 だから、この服装をしている女の子を探して歩いていたのよ。ちなみに、男性の制服は知らない。だって、私が着るわけじゃないから興味なかったしね。


 しばらく街を歩いていたら学園の制服を着ているっぽい女の子3人を見つけたのだ。


 おお、この子たちについていけばいいのだ。そう思っていたのに、なぜかその3人の女の子は人が少ない方に向かって歩いていく。


 どう考えたって路地に向けているような気がする。なんだかしかもこの3人。周囲を確認しながら進んでいるのだ。


 なんだかついていく相手を間違えたのかなって思っていたら、3人が何かを囲って騒ぎ、暴れ出したのだ。


「え?何しているの?」


 私が声をかけたら3人の女の子は私の顔を見てきた。


「はぁ?お前には関係ねぇだろうが」

「こっちくんな。どっかいけ!」

「お前も殴るぞ。こらぁ!」


 なんだろう。ものすごく下品な話し方だ。けれど、ちょっと身の危険を感じたけれど、私が使える魔法って即死させちゃう系ばかりだしな。


 あ、そうだ。


「クリエイトブレッド!」


 石みたいなパンを3つ造り出した。もちろん、造り出したのはこのものすごい形相でいかってくる女の子たちの頭の上。


 急いで作ったから大きさを失敗してしまって、女の子たちの頭の大きさに近いパンが出来上がってしまった。


「ぐふぉ」


 ぶつかると3人は気絶した。目の前に背の低いびくびくした少年が泣いていた。


「ねえ、大丈夫?」


 よく見ると少年は顔や体を蹴られていたのか怪我だらけだった。


 紺の半ズボンに白いシャツ。紺のジャケットを着ていた。


「あ、ありがとう」

「立てる?」

「うん」


 そう言って少年を立たせて路地を出た。


「お姉さん。助けてくれてありがとう。でも、よかったの?」


 なんかまだビクビクしているみたいだ。


「あんな集団で少年を苛めるなんて許しちゃダメだもの。ところで、学園ってどっちにあるかわかる?」


「わかるよ。こっち」


 そう言って指差してくれた。


「なら、一緒に行こう。私はエリザベート・フォン・イレスティアっていうの。あなたは?」


 私がそう名乗ると少年は身構えた。あ、そうか。イレスティア王国だけでなく、他国にも『エリザベート』の悪辣エピソードは広まっているのか。怖がらせたのかしら。


 でも、少年は震えながらこう言って来た。


「僕は、イスファン・ドゥ・ミルザって言います。先ほどは本当に助けてくれてありがとうございます。エリザベート様」


 ん?なんかその名前に聞き覚えがある。いや、間違いかもしれない。


「ねえ、イスファン様ってひょっとしてミルザ王国の第一王子?」

「はい、そうです」


 なんてこった!

 私は天を仰いだ。なぜ、絡まないと決めていたミルザ王国の第一王子と絡むことになったのよ!!



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