~来訪者と会ってみましょう~
~来訪者と会ってみましょう~
リムバからの相談はこのイージェの城門前に来訪者があり、その対応をどうしたらいいのかということだった。
え?色んな人が普通にイージェにはやって来たけれど、そんなことを相談されたのは初めてだった。
「え?リムバ?その来訪者って何か問題ある人なの?」
「問題しかありません。それに、領主を出せと言ってきています。お許しをいただければ滅殺してきますが」
ちょっと待って。なんで滅殺?リムバの顔は冗談を言っている感じじゃない。
「とりあえず、会ってみます。その人は領主を出せって言っているんですよね?」
私がそう言うとリムバは顔が曇った。私に会わせたくないような変な人なのだろうか?
どんな人だろう?変態さんとかなのかしら?全裸のおっさんとかだったらいやだな。
なんて思いながら城門に向かいました。いつの間にかミューズが私に付き従っていた。
振り返ればいつの間にかいるのがミューズだ。うん、怖い。
城門につくと、3年前は領主館の門番をしてもらっていたジェムスが応対していた。
ジェムスは今では衛兵を取りまとめている衛兵長をしてもらっている。
部下からの信頼も厚く、また詰所の管理なども問題なくしてくれているのだ。
ジェムスはミューズにかなり鍛え上げたしね。それに、今私の背後にはなんというか『いい笑顔』をしたミューズがいるのが解る。
だって、ジェムスの顔が引きつっているのだから。
私は左右をジェムスとミューズに守られ、そして私の前にリムバが立っていた。
そして、城門前にいるその集団を見て思った。
「ねえ、なんか大きな猫がいるのだけれど、あれは何?」
そこには伏せている大きな黒い猫が3体いた。いや、猫だけれど、ズボンをはいているのだ。なんだろう?
「あれはモンスターの出来損ないです。狩りつくしましょう」
ミューズがそう言っている。私がジェムスに近づくと「領主様はこちらに来られなくても大丈夫ですぜ。」と言ってきた。
ちょっと待って。このままだと滅殺が起きる感じですよね。え?でも、これってどうしたらいいのかしら?悩んでいたらその伏せっていた猫が顔を上げて話し出したのだ。
「領主さま。私は猫族のブニャと申しますにゃ。私たちの集落をお救いくださいにゃ!」
「猫がしゃべった!?猫」
びっくりしてついミューズにしがみついてしまった。だって、人と同じくらいの大きさで、顔は猫。体は人のような体格だけれど、上半身は裸というか毛でおおわれている。
イメージは人の大きさの猫が二足歩行している感じだ。ただ、手と足が人のそれに近いのだ。
「あれは、一応人と同じ言葉を話すモンスターです。人族ではありません。変な病気に罹るかもしれませんのでお嬢様は離れてください」
ミューズがそう言って私を二足歩行の猫、ああ、ブニャとか言っていた、その猫から引き離した。
「あれ?でも、救ってくださいってことはどういう問題が起きているんですか?というか、その猫さんの集落はここから近いのですか?もし、近いのなら、その問題がこのイージェにも波及することはあるのでしょうか?」
私がそう疑問を投げかけるとジェムスが教えてくれた。
「こいつらの集落はこのイージェから南東にあります。半日から1日程度の距離ですね。近いと言えば近い。おい、お前ら畜生ども。どういうトラブルが起きたと言うのだ?」
ジェムスもこの猫たちには辛辣だ。何か過去にトラブルでもあったのかしら?
それに、ここまで猫そのものではないけれど、猫と人を足して2で割ったくらいの猫っぽい人はアネモネ時代に見た事あるんだよね。
「聞いてくれるのか。集落で人がバタバタ倒れて行ったのだ。病気が広まっている。助けてくれ!」
ちょっと待って。病気ってことは、猫たちはひょっとして病原菌をこの付近にもちこんでるんじゃないの!?
「ウォッシュ!ウォッシュ!ウォッシュ!ウォッシュ!ウォッシュ!ウォッシュ!」
まずはここにいるすべてのものを『ウォッシュ』の魔法できれいにした。次に地面を2回蹴って、リーリカにここから離れる様に依頼した。リーリカが離れたのを確認してから
「ミスト!(聖水Ver)」
周囲を聖水で清めた。
「おい、お前ら!お嬢様に何かあったらどうするつもりだ!」
ジェムスがどなっている。すでに私はミューズたちに引っ張られかなり距離を保っている。
「ジェムス。犯罪奴隷たちをつかって構いません。現地を確認してきてください。このイージェに影響が出るのかどうか。それと、病気についても調査してください。まずは、私たちとこのイージェの安全が最優先です」
猫たちには悪いが、疫病の流行とかしゃれにならない。時に感染力が強い病気だった場合、領民を隔離もしくは避難させる必要がある。
指示をしながら思い出していた。
そう言えば、イージェ村の南東に何かあるけれど、絶対に立ち入るなって言っていた場所があったのを思い出した。
この猫たちのことだったのか。
でも、ちょっと謎なんだよね。猫たちをこの3年間見たことが無かったんだよね。
「ねえ、ミューズ」
「とりあえず、今日から数日はお嬢様や私たちは隔離です。病原菌を保菌しているかもしれません。しばらく一緒に生活しますので、その間にお話しにはお付き合いしますが、今は少しだけ時間をください!」
ミューズの鬼気迫るその話し方に「わかりました」とだけ答えた。
そこから、4日間。私たちは隔離生活を行った。料理はミューズが作ってくれたが、大味なものばかりだった。
その4日間の間に猫たちのことを聞いた。
どうやら、あの猫たちの集落は男性ばかりだという。猫なのに寿命は人よりも長いらしい。そこは猫とは違うんだと思った。
そして、過去2回。イージェ村にいた女性が攫われたことがあるそうだ。
一人は孤児だった女児。もう一人は足を怪我した少女だそうだ。どちらも身寄りはなかったが、繁殖のために攫ったということらしい。
どうして、そう判断したかというと後日猫たちが今日みたいに村を訪れてそのことを告げたそうだ。それ以降、若い女性は絶対に猫がいるというイージェ村の南東には行かないというルールを設けたみたいなのだ。
それと文化がかなり違うらしいのだ。
過去に接触を持った者がいるそうなのだが、猫たちの食文化に同族を食べるという風習があるのだそうだ。
聞いて吐きそうになった。猫が猫を食べるのか。それも、弱ったり、年老いたものを食べるというのだそうだ。
「だからあれらは人の言葉を話しますが、道にいる猫と変わりありませんから気を付けてくださいね」
ミューズが教えてくれた。
一緒に言ってくれたリムバは猫たちについは何も思う事がないようだ。
「まあ、話しは聞きましたが、人づてですし、それに、そこまで害があるようにも見えまえんでしたからね。ただ、病気は困りますな。ひどい場合は一角を燃やし尽くす必要があるかもしれませんな」
8歳の悪辣女王ってそう言えば、村を燃やし尽くしたとあったけれど、どこの村を焼き尽くしたのかって何も残っていなかったんだよね。ひょっとして猫の集落を燃やし尽くしたのかしら?
ただ、解ったことは4日間に誰も発病したものはいなかった。けれど、現地を見に行ったものは誰も帰って来なかった。さて、どうしましょう?




