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~オリビアについて考えましょう~

~オリビアについて考えましょう~


「門前に集まったものは強引に突破しようとしてきていますか?」


 私はラナさんにそう確認した。


「いえ、6名の女性が集まっていますが、無理やり突破というよりは一定の距離を保っています」


 意外と冷静なのね。領主に刃向う怖さを理解しているのかしら?


「私が言って一喝してきましょうか?」


 ミューズがそう言ってきた。今日だけならそれでもいいのだけれど、今後のことを考えたらちゃんと対応した方がいいと思うんだよね。


「オリビアと話しをします。お二人とも同席をお願いします」


 私がそう言うとラナさんがこう言って来た。


「それが、オリビアさんですが、館の中にいないみたいなのです」


 まさかの逃亡中なのか。仕方がない。私はリーリカを見てこう伝えた。


「リーリカ、お願いだけれど、オリビアを探してきてくれないかしら?」


 そう伝えたらリーリカは目を閉じたかと思うとこう言って来た。


「ヤカタノナカ、クローゼット、シタ、ソコイル」


 リーリカがそう言うとミューズがすでに動き出していた。数分後、ミューズはオリビアを連れて戻ってきた。


 オリビアは目が虚ろになっていた。


「私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない」


 そうずっと呟いている。


「オリビア。状況を説明してください。説明をする気がないのなら門前に出しますわよ」


 そうなると、石をぶつけられて死ぬのだろうな。


 もし、本当に多くの既婚男性に色目を使い、金を搾り取っていたのなら私刑ではなく、きちんとした罰を受けてもらうほうがいい。


 私刑が起きた後のイージェは疑わしきものが調査もされずに罰せられることもあった。あの流れだけは絶対に変えたい。村の雰囲気がぎすぎすするしね。


「ま、待ってほしいのよ。確かに私は金が必要だった。でも、でも、それには理由があったのよ。それに私は一回だって無理やりお金はもらっていないの。皆ちゃんと快く払ってくれたわ」


 なんで私にも媚びへつらうような感じで甘ったるく語るのだろう?


「どうしてお金が必要だったのかしら?」


 アネモネ時代にもなんで金を欲していたのか、なんで男漁りをしていたのかは謎だったのだ。その情報は広まっていなかったからだ。


「それは・・・弟を助けるため?」


 ってか、なぜゆえに疑問形なのだろう?


「オリビアさん。私は母が病弱だって聞いたことがありますが?」


 ラナさんがそう言って来た。


「オリビア。本当のことを言ってください。それとも、門の外にいるあの人たちに石をぶつけられてゆっくりと傷つきながら死にたいのですか?」


 これは脅しではない。私が何もしなければ起きる未来だ。


「そんなぁ。あの門の外にいる人たちは誤解からちょっと、頭に血がのぼっているだけなんですよぉ。それに私には病弱な母も弟もいるんですよぉ」


 本当なのだろうか?私はリーリカを見つめて頷いた。リーリカは優秀過ぎるからそれだけでわかってくれたはず。


 リーリカは影にそっと消え、私はそこからオリビアの言い訳をずっと聞いていた。



 しばらくするとリーリカが戻ってきた。


「な、何この子。いつから居たのよ?」


 オリビアがリーリカを見て驚いている。リーリカが教えてくれた。


「ねえ、オリビア。あなたの家を見に行ってもらったけれど、母も弟もいないみたいよね。でも、家の中は質素で何もなかったの。あなた一体何にお金を掛けているのかしら?」


 オリビアが既婚男性からお金を絞り取っている。それはオリビア自身も認めている。そのお金が何に使われているのだ?


「それは・・・私に掛けられた呪いのためよ」


 オリビアはそう言って胸元を見せてきた。左胸に魔方陣が刻まれている。あれ?私の胸にも魔方陣がある。そう、アネモネの時に貫かれた場所だ。そこに魔方陣がある。


 ただ、私の魔方陣よりも単純に見える。赤黒い円型に流線状の模様が二つ入っていて、文字と思われるものが2つ刻まれている。


「それは?」


「これが私に掛けられた呪い。金貨、銀貨、銅貨、銭貨。なんでもいいのだけれど、この呪いの紋章に吸い込ませないと私は死んでしまうのよ。お金は呪いをかけた相手の元に送られるのよ。私はただ死にたくないから頑張っていただけなのよ」


 オリビアはそう言って手に持っていた銅貨を胸の魔方陣に当てると吸い込まれるように消えて行った。


 こんな不可思議な魔法は知らない。


「死にたくないから、色んな事をしたわ。体も売ったし、心の隙間にも付け入ったわ。でも、無理はしないでってだけは言い続けたの。だから私にお金を払った男性たちは自己責任なのよ。私は悪くない。悪くないのよ!」


 オリビアがお金を欲していた理由はわかった。


「一体いつこんな呪いをかけたんだ?」


 こんなレベルの呪いをかけられるものがそうそういるとは思えない。それにいつからどういう状況でなのだろう。疑問は尽きない。


「この呪いは私が病気で死にかけている時に母が街に居た呪術師に依頼をしたの。私はこの呪いのおかげで一命は取り留めたけれど、取り返しがつかない呪いを受けた。お金を定期的に入手するなんて難しいから色んな事をしたわ。お金を魔方陣に入れないと体中がものすごく痛くなるの。痛くて痛くて眠れないくらいに。その私を見て母も弟も頑張ってくれた。でも、母は過労で倒れて死んでしまったし、弟はスリがばれて投獄されてしまったの。私もそのまま死を受け入れればよかったの。わかっている。けれど、私は死にたくなかったの。ただ、死にたくなかっただけなのよ!」


 そう言ってオリビアは泣き崩れた。生きるためというのはわかったが、この呪いって何なんだろう?


 聖水でどうにかできないだろうか?私はクリエイトウォーターで聖水を作ってオリビアにかけてみたけれど、胸に合った魔方陣は何の変化も起きなかった。


「さて、このオリビアについてはどうしますか?」


 ミューズにそう聞かれた。私が方針を決めないといけない。


「まず、外に居る人たちにオリビアの状況について説明します。けれど、だまし取ったお金については返金できないため、外にいる人たちは納得できないと思います。私は法に則った裁きが必要だと思います。ただ、牢屋に入れてしまった場合、おそらくオリビアは呪いのため死を迎えるのだと思います」


 私はオリビアを見つめた。


 私にはオリビアを助ける方法が思いつかない。領主と言っても潤沢にお金があるわけじゃないし、お金があったとしてもオリビアに使うのではなく領地運営に使うべきなのもわかっている。


「私にはオリビアを助ける術がありません。だから、人として苦しまない様に尊厳死を選ぶか、苦しみながら死ぬのかのどちらかを選んでください」


 自分で言いながら胸が痛い。多分今の私はひどい表情をしているのだろうな。


 そう思っていたらミューズが私を抱きしめてくれた。


「立派です。その年で情に流されずに判断できたこと、誇りに思ってください」


 そう言われた。私にもっと力があれば救えたのに。


「偽善者!」


 オリビアにはそう言われたが、聞こえないふりをした。ただ、ずっとその言葉だけが耳に残った。



 1週間後。


 イージェ村は落ち着いた。オリビアは獄中で死んだ。騙されていた男たちの中にはオリビアの死を悲しんだものが多かった。やっぱりかわいいは正義なんだろうな。


 でも、通常の生活ができなくなるまでお金を差し出すのは行き過ぎなのだと思った。


 イージェ村の女性たちはそんな男どものおしりを蹴飛ばしていた。


 日常を取り戻すのに1週間かかった。けれど、もうすぐ非日常がやってくる。


 王都から視察団が来るからだ。


 私はこれからしばらく5歳児を演じないといけない。


 優秀過ぎるとばれてしまったら殺されてしまうらしいから。でも、私優秀じゃないですからね。


 優秀だったら多分、オリビアを救えたはずだから。獄中で痛みに苦しみながら死なせることなんてなかった。


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