~影と影の戦いを観戦してみましょう~
~影と影の戦いを観戦してみましょう~
一兵士として革命軍に参加していた時。
支給されるパンを食べながら私は何名かの同じような一兵士たちと食事を摂っていた。多分、私が女性だったから狙われていたのかもしれないが、正直行軍で汗だくだし、血みどろだし色気なんてまったくないと思っていた。
こんな状態の女性に欲情する男なんていないと思っていたが、つねに私の横にいる男がいた。王都戦の前に戦死してしまったけれど。
その男性、リッターは私が革命軍に参加する前から兵士としていた。薄い灰色の髪は短く刈り上げていて、くりっとした目をした若い男性。
お調子者でその癖、大変な時は助けてくれる。そのリッターは色んなことを教えてくれた。
その中にあったのだ。
「なあ、アネモネ。知ってるか?王国にはやべぇやつが4人いるんだ。その一人が影渡りのリーリカっていうやつだ。こいつは影から現れたと思ったら暗殺を繰り返すやつなんだぜ」
パンを食べながら楽しそうにそうリッターは話していた。
「え?そんなの防げないじゃない?」
「それがな、こっちにもいるんだ。影渡りができるやつが。といっても、ラース帝国のえらいさんらしい。俺も顔は見たことがないが、なんか噂では幽鬼みたない顔した怖い奴らしいぜ。目が合ったら死ぬらしいから絶対に見かけたら目を合わすなよな。もしくは影で渡れない場所に逃げるんだ」
まあ、話しは盛っていたのだと思っていた。そう、この時は。
「一体何が起きているんだ?」
オーゴは目の前で起きていることに対して私はこう言った。
「とりあえず、高い所に登って。後は出来るだけ影が小さくなるように」
影渡りは影から攻撃する際に安定感が必要なのだとリッターは教えてくれた。それが本当なのか確かめるためにリーリカにも同じ内容を聞いたことがある。
木の上に登っているものを攻撃する時は威力が落ちるらしい。できないとは言わなかったけれど。後は影の面積が小さくなりすぎると影から出られないと言う。便利なようで影渡りには制限があるみたいだ。
「お嬢様、失礼します」
私はミューズに抱えられて建物の屋上に連れて行かれた。影がある場所は段があり割れている。
だが、オーゴは木に登りながら地面で動いている影を見つめている。木の枝を折って影に向けて投げつけている。
そっちはリーリカだからやめてほしい。こんな事ならリーリカを仲間だと紹介しておけばよかった。
私は相手が影渡りをしていることから、戦っている相手はリーリカと同じように『ネクロマンシー』で復活した『生きる死体』なのではと思っている。
だって、普通の人間には『影渡り』なんて魔法つかえませんもの。
だから、クリエイトウォーターで『聖水』の水球を作ったのですが、リーリカにもあたりそうなのですよね。影の動きが早すぎます。
オーゴが投げている枝がリーリカではない方の『敵』にあたりました。
まあ、枝があたったくらいではダメージにもなりませんが、注意がそれたらリーリカが攻撃できますわね。
なんて思っていた私がいました。
だって、その『敵』の影がオーゴの方に伸びて行ったんですもの。
「オーゴ、逃げて!」
私は叫んだ。オーゴは木から建物に向かって飛んだ。影からの距離がある。直接攻撃をするにはきついだろう。そう思っていたら影から槍のようなものは射出された。
「ごふっ」
オーゴは致命傷を避けたみたいだけれど転がりまわっている。助けなきゃ。
「ミスト」
私はオーゴの周りに濃い霧を出現させた。その時にイメージしたのこの霧は聖水だ。
そして地面を2回叩きリーリカにこの場からすぐに逃げることを命ずる。リーリカはものすごい勢いで移動した。
「オーゴ立ち上がって!」
私はオーゴの怪我の状況はわからないが、地面に倒れたままだと危険だ。
「うごぉぉぉぉ!なんだこの霧は。これは『聖水』か!」
くぐもった声がした。どこかで聞いたことがある声だったけれど影は消えて行った。
逃げられたけれど、危機は去ったのだった。
「お嬢様、先ほどの件教えていただけますか?何があったのかということを」
ミューズの顔は般若みたいだった。
私、助けたよね?ダメだったのかしら?




