~無茶振りされましょう~
~無茶振りされましょう~
シュラとエンジェがエリーゼを連れてでかけていった。
エリーゼが連れていかれてから変化が起きた。それまで魅了の影響を受けていたさっちゃんとその子供たちの言動が変わったのだ。
「なんであんな普通の子を特別って感じたのかわからなくて」
「取り乱してすみません、でもなんであんな子を」
「あんな子を特別視するなんておかしかったです」
そうなのだ。魅了が解けた感じなのだ。それも解けた後からエリーゼに対する拒否感が強いのだ。
これが呪いの反動なのだろうか?
「ちょっと私の記憶についても怖くなってきました。これも『呪い』なんですよね?」
さっちゃんがそう言って来た。
「でも、『呪い』で特に困ったことにはなっていないんだよね?」
「そうですね。記憶する時に整理することで混乱を防いでいます。時間軸と内容で整理をするのと、重要なもの、何かに使えるもの、どうでもいいものという形でわけることにしています。どうでもいい記憶は思い出さないように封印することで楽になっていますね」
というか、まったく意味がわからない。でも、忘れることができないということはいつか、記憶がパンクするのかもしれない。
ただ、今のエリーゼに対する嫌悪感を持っているものたちを見ると、呪いには解呪するとその反動が来るのかもしれない。
ということは、さっちゃんが解呪されてしまったら廃人になってしまうのかも。考えるだけで怖いな。
「考えたって仕方ないわ。ただ、解呪されることだけは気を付けないとね」
「そうですね。それと私に何かあった時に、代理として何かできるものを教育しておきます」
さっちゃんがそう言ってくれた。え?ここにいる二人の少女がそうなんだと思っていたけれど違ったのかしら?
私がそう思っていたら「この子たちは私のアシスタントです。代理じゃないから」と言われた。何が違うのかよくわからないけれど気にしないでおこう。
「それよりも、出来るだけ早くダールトン辺境伯に接見する必要があります。おそらく私たちと同じようにエリーゼに対して嫌悪感が出ている可能性がありますから」
そうだよね。「魅了」の反動って怖いなって思った。
ちなみに、さっちゃんは二度とダークエルフや厄災のシュラに会いたいと言わなくなった。まあ、あれは本当に天災みたいなものだ。出来れば出会いたくない。今は目に付くところに居るけれど。
ダールトン辺境伯への接見は、魅了が解呪されてから2日後になった。
この2日の間に色んなことが起きた。まず平原の中央に石造りの館が出現した。
事情を知らないものが何人か石造りの館に押しかけてバラバラに爆発していった。まあ、大きな声であそこにダークエルフがいるとも厄災のシュラがいるとも言えないものね。
何回か人が爆発するのを見て、触れない方がいいことを周囲が納得したみたいだ。それもイレスティア王国だけでなくイース帝国側もだ。
ただ、その平原は交易路としても使われていたみたいでなんだか商人の中では平原が通行できないことは大問題になっているのだという。
「イーキャ男爵から連絡がありました。どうにか商隊だけでも通行できないか許可をもらってきてもらえないかだそうです」
いやいや、イーキャ男爵にはあの場にいるのは厄災のシュラだと伝えたよね。なんで私が交渉することになっているのかしら?
私が嫌そうな表情をしたらさっちゃんがこう言って来た。
「厄災のシュラの圧に耐えられるのはお嬢様くらいです。私たちでは交渉以前の問題です」
ミューズを見つめる。
「あれは無理です。ただ、近くまでなら付いて行きます」
そう言っているけれどミューズの足がプルプル震えていた。ああ、仕方がない。
「とりあえず、ダールトン辺境伯と会った後にでも考えます」
問題の先送りをしたのだった。
ダールトン辺境伯との接見は一回目と違っていた。会ってそうそうこう言われたからだ。
「この前は失礼した。どうにかしていた」
そう言ってダールトン辺境伯は頭を下げた。
「確認ですが、エリーゼという少女に何か言われませんでしたか?」
私がそう切り出すとダールトン辺境伯の表情は醜く歪んだ。
「あの女狐のことを知っておるのか。あの女狐に騙されたのだ。イース帝国ともめないようにと言ってきて、なぜかその言葉を信じてしまったのだ。あの女は何者だ?探しておるのだが見つからぬ。居場所を知っているなら教えるがいい!」
うん、居場所は知っているけれど、そこに殴り込みに行くと爆発しちゃうよ。
「知ってはおりますが、その場に行くことをお勧めいたしません。ただ、私の話しをすべて聞いた上で判断してください」
圧を込めてそう伝えた。
「う、うむ、わかった」
なんだか挙動が怪しいが承諾は得られた。よかった。
とりあえず、『魅了』という呪いについてと、エリーゼの居場所について、その場所にいるのが『厄災のシュラ』であることを伝えた。
「そんな呪いがあるというのか。そして、その『呪い』を利用したのがイース帝国なのか。イース帝国に鉄槌が必要だな」
「はい、そのためにダールトン辺境伯にもご協力をいただきたく思います」
「それは問題ないのだが、少しばかり事情もある」
なんだか話しにくそうなことなのだろうか?ああ、あれか。平原の通行が可能か確認したいんだろうな。
「実は息子のことなのだ。あやつも魅了にかかっておったのだろう。儂も悪い。今息子はイース帝国に留学に出しておるのだ。どうにか息子を戻す方法を考えねば」
革命が起きた時のダールトン辺境伯は目の前にいる人の息子で、その息子はイース帝国により洗脳教育を受けていたということか。
私の平穏のためにも息子は連れ戻さないといけないね。けれど、それは私がすることじゃない。
「それはそちらにお任せいたします。私は複数の商会から依頼を受けておりますので」
「ああ、それは知っておる。こちらにも依頼が来たがエリザベート王妃殿下にお任せする方がよいと多くのものが言っていたのでな」
ちょっと待て。誰だよ。そんな事言ったの。絶対に一緒に連れて行ってやる。なんて思ったけれど、結局ついて来てくれたのはミューズだけだった。
皆逃げたんだよね。無茶振りだけして。絶対に何かしてもらおう。そう決意した。




