~プロローグ~
~プロローグ~
イレスティア王国の最西にカージェス領はある。カージェス領の先には高い山が連なるボードイ連山がある。このボードイ連山の向こうには『聖ブブロ王国』がある。
聖ブブロ王国は神殿勢力を取りまとめており、どの国にも属さない中立であることを宣言している。また、神殿勢力は信仰により聖魔法の授与を行っており、各地に配置している神殿にて怪我や病気の回復を行っている。
また、どこの国にも負けない自ら回復をしながら戦える聖騎士というものも抱えている。神殿勢力に敵対することは治療を受けることができないことからどの国も聖ブブロ王国に攻め入ろうとはしない。
もし、攻め入ろうとしても聖ブブロ王国は周囲を高い山に囲まれているので、大軍が侵攻するには向いていないのだ。
つまり、イレスティア王国としては、他国である聖ブブロ王国と接しているカージェス領だが、防衛に力を入れる必要もなく、また、土地も痩せているため重要視をしていない僻地である。
罪人や何か問題を起こしたものが送られてくることが多いのがカージェス領なのだ。
そのカージェス領には3つの村がある。
一番大きなのはカージェス領の最東にある『イージェ村』だ。
元はイースト・カージェスという名前だったらしいのだが、省略してこの名前になったそうだ。
アネモネだった私もこの『イージェ村』にある孤児院にいた。
いや、私がアネモネだった時はイージェ村以外の残りの二つの村は廃村になっていたのだ。
一つは悪辣女王に焼き尽くされたと聞いているが、もう一つの村についてはいつ、どういう理由で廃村になったのかはわからなかった。
まあ、飢饉や冷害などがあったから生きていけなくなったのだろう。
そんなイージェ村に向かうことになった。
父上から私の護衛としてついてきたのは2名の騎士だ。
一人は20歳のオーゴという茶色のウェーブがかかった髪をした男性だ。
青いジャケットに白いシャツ、白いズボンをはいており、腰には剣がある。王都に居た時は全身鎧で身を固めていたのだが、今は軽装だ。ちなみに、無愛想、無口。いつも目つきが鋭くて怖い。
もう一人はミューズという女騎士だ。片目が隠れるような長いストレートの金髪をした、切れ長の22歳。
オーゴと同じく青いジャケットに白いシャツ、白いズボンをはいている。ただ違うのは剣が細身剣なところだ。
顔つきはクールというか、感情が外に出ない。こちらも無口だ。私が話しかけても二人とも何も語らない。
まあ、馬車の中に乗っているのは私だけで、二人とも馬に騎乗している。馬車はリムバという中年のほそくさえない男性が御者をしている。いつもおどおどしており、二人の騎士の動きを盗み見している。
リムバの髪は禿げ上がっていて、耳付近にだけ少しだけ申し訳なさそうに残っているだけ、後はあごにだけ髭が生えている。茶色のシャツにズボン。黒いベストを着ている。
このリムバも私の問いかけには何も答えてくれない。一心不乱に馬車を動かしているだけだ。
おかげで馬車の中に居る時はリーリカを呼び出すこともできたが、リーリカも片言でしか話してくれないから話しが盛り上がることはなかった。
まあ、地方に飛ばされるのだ。罪人扱いなのだから仕方ないか。
ただ、馬車の中には私のほかは荷物が詰み込まれている。馬車の上にも荷物は載せられている。
この人数で3週間ほどかけて私はイージェ村に向かうのだった。
アネモネの時ほどではないが、イレスティア王国は治安がいいかと言われたらそうでもない。
盗賊もいれば、モンスターだって出てくる。私は未だにファイアーボール、ウォッシュ、クリエイトウォーターしか使えない。
ネクロマンシーについては発動条件がわからないのだ。まあ、あれから発動させるタイミングもなかったからわからないけれど。
こう魔法の説明とかどこかにないのかしら?
まあ、暗魔法についての魔法書がないため、まったくわからないのよね。というか、暗魔法の魔法書なんて確実に禁書扱いでしょうけれどね。
あ、後神殿勢力は『暗魔法』を敵視しているから、もし私が暗魔法を使えることが知られたら敵認定されてしまうかも。
馬車の中で暇なので魔法制御を行うことにした。
といっても、クリエイトウォーターをつかって水を少量出して、宙に浮かべて、色を付けて見たり、球状だけでなく、四角にしたり星形にしたりして遊んでいた。
いや、これだけでもかなり大変なのよ。だって、ものすごく魔力制御が難しいのですもの。どちらかというと、制御せずに大量の水を放出する方が楽なのだ。
少量の水を出して制御するのが難しい。そうやって練習していたら馬車が急に止まった。
馬車の中にある窓から外を覗き込もうとすると御者のリムバが「奥に隠れてください。盗賊です」と言って来た。
高そうな馬車に荷物。護衛も二人だけ。狙われる可能性高いですよね。というか、リムバも剣を構えて戦おうとしている。
仕方がない。床を2回蹴ってリーリカを呼び出す。
「周囲にいる盗賊で隠れているものたちを倒してきて。盗賊だから殺していいわよ」
「カシコマリマシタ」
相手は脅威だろうな。死角の影から剣で一突きされる。リーリカとしたら単純作業だ。でも、窓から見ているとどうも盗賊って感じじゃないのよね。
普通盗賊って装備がバラバラだし、ボロボロなことが多いのに、この盗賊はみんな直刀を使っている。着ている服もきれいなのだ。
アネモネの時に盗賊は嫌と言うほど見てきた。何故かと言うと、彼らもパンが欲しくて革命軍に参加してきたからだ。
彼らは荒々しいし、汚らしいのだ。だが、見た感じ服装も清潔だし、髭とかもきれいに剃っている物が多い。
しまった。リーリカに何名か生け捕りにと言っておけばよかったかしら。しばらくしたら外の騒ぎが収まった。
どうやら護衛か監視役かわからないけれど、着いてきた2人は強いし、御者もかなり強かった。
まあ、影から弓で狙っていたものは全てリーリカが倒してくれていたみたい。しかも証拠隠滅と言う形で死体は遠くに捨ててくれるみたい。今は影の中にしまっているという。
ってか、私の足下の影にしまっているわけじゃないよね?
襲撃があったから先にリーリカに調査をお願いしたのだ。怪しい集団は全て倒してもらった。まあ、襲撃前に倒してしまったから、生け捕りにはできなかったけれどね。
いや、一度リーリカに生け捕りの指示をしたら「ムズカシイデス」と返されたので諦めたのだ。
難しいと返されるのなら仕方がない。でも、これで思った。
私の命を狙っているものがいるものが確実にいるのだ。
王位継承権もはく奪され、今は家名に「イレスティア」を名乗ることも許されていない。
今の私の名前は『エリザベート・フォン・カージェスなのだから。
色々あったけれど、イージェ村についた。そこで思った。こんなにもみすぼらしく発展していない村だったのだと。
アネモネの時はもう少しだけ開拓をされていた。ということは、これからの数年でこのイージェ村を発展させないといけないのだ。
ただ、代官がかなり癖のある男だったのだ。頭が痛い。




