表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サハル・ルンジーエ  作者: 在原白珪
第1章
PR
49/203

12話2 騎士たちの会議

 合流先の騎士団の会議で、私は珍獣のように迎えられた。じろじろ見ながら、あるいは隣の同僚とこそこそ話しながら、でも私に声をかける騎士はいない。猪目さんと蝶二さんだけが、それぞれ似合った笑顔で私を席に案内してくれる。

「気にしなくていい。先生が優しい人だって分かってないだけだから」

 猪目さんは私の耳元でそうささやく。

「言いたいことは全てそのまま言ってください。遠慮して黙っているよりそちらの方がいいでしょう」

 蝶二さんが面と向かってそう言う。二人とも、心強い味方だ。そして二人は座らず、私が座っている左右の後ろに立った。他の騎士たちが不愉快そうな顔をする。

「猪目殿、蝶二殿、用意された席に着きなさい」

 議長らしい初老の騎士がそう言っても、二人は動かない。空いている席は二つ見えるが、私の席からは数歩ほど離れている。

「座っていては、それにあの場所からでは護衛しづらいので」

 蝶二さんが落ち着いた様子で断る。

「ここは安全じゃ。城内で、部屋の外にも衛兵が立っておる。お主らがそう気構える必要は」

「衛兵やここに座っておられる方々では、例の者が来たときに対応できないだろう? 他にも懸念はあるが」

 強気な猪目さんに私はびくびくしながら、今にも血管が切れそうな騎士たちから目を逸らす。あれ?猪目さんも蝶二さんも、騎士団の中で優秀で人望ある人じゃなかったの? もしかして、私がいるせいで二人は孤立してしまっていないだろうか。

「ではもうそのままでよい。始める」

 初老の騎士の諦めで、騎士団の会議が始まる。私が最後に出た会議は人間界の会社で、三か月前だった。そのときはただただ早く終わればいいと思っていたけど、今回はとても緊張して、不安に思っている。家を出たときにはそうでもなかったのに、女王さまと話してから、そしてこの会議室に通されてから、段々と心臓が締め付けられる。

「今回の議題は、二週間前に現れた悪魔とのその眷属について。そして、人間さまの処遇について」

 私が出席しているのに私自身が議題……! 心臓が爆発するくらいに大きく鼓動する。

「まず、悪魔について。彼奴は二週間前のこの場所に、眷属の少女を連れて出没。騎士及び衛兵に傷害し、騎士団と王宮に宣戦布告。その時の状況は報告を受けておろう。今後の対応について、女王さまは『衛兵及び騎士の戦闘訓練を強化、臨戦の際には特別手当を支給』とおっしゃっておられる。何か意見のある者は?」

 言いたいことは全てそのまま――と蝶二さんは勧めていたけど、とてもそんな精神状態ではないし、警備とか軍備みたいなことは全然分からない。私が肩を縮めていると、中年の騎士が挙手した。

「『戦闘訓練を強化』といっても、あの時何とか応戦できたのは蝶二殿のみ――つまり、二等星以上の戦力が求められることになります。非現実的では?」

 私は蝶二さんを振り返って小声で尋ねる。

「二等星というのは……?」

 蝶二さんは私の座高に合わせて腰をかがめてくれて、答えてくれた。

「騎士の階級には二種類あります。私の場合、大臣付きの二等星です。〝付き〟というのは、文官に置き換えたときにどのくらいの地位があるかで、相当する文官の護衛に就いているとは限りません。〝等星〟というのは武力の強さです。魔力検査や模擬戦闘で決まり、数字が小さいほど強いということになります」

 私の質問を待ってか、会議は静かになっていた。けれどいつも通り冷静な蝶二さんと会話できた私は、うっかりリラックスしすぎてしまって、本当に思ったことをそのまま口に出してしまった。

「蝶二さんってものすごく偉いし強くないですか!?」

 猪目さんによると、このときの他の騎士たちは拍子抜けしたり、舌打ちを堪えたりしているような様子だったらしい。私は気づいていなくて、蝶二さんは気づいていながら気にせず、いい紅茶に出会ったときに似た笑顔で答えた。

「当然です。先生をお守りするのですから」

「カッコいい……!」

 私の肩を猪目さんが苦笑交じりに叩く。

「先生、知ってるか? 俺も大臣付きだし二等星なんだが」

「……どうしましょう、私、身の丈に合わないくらいすごいお二人にお世話になっていて……」

 高揚する私に、猪目さんと蝶二さんが微笑みかける。

「卑下することなんかねえよ。あんたの人格は優れているし、妖精界のために頑張ってくれてる」

「私たちがついていることを誇りに思ってください」

 初老の騎士が痰を詰まらせたような咳払いをして、私は気が付いて周囲を見渡した。騎士たちは皆揃って呆れている。

「……すみません」

 私は頭を下げた。

「……構いませぬ。分からないことがあればどうぞすぐに質問なさられよ。そして質問を受けた者はなるべく簡潔に答えるように」

 猪目さんと蝶二さんはそっぽを向いている。何があったのか分からないけど、二人の会議に対する嫌気があからさますぎて不安になる。

「気を取り直して、他に意見のある者は?」

 今度は、坊主頭の騎士が挙手する。

「本人の強化には限界があるにしても、魔力や身体能力を増強する装置、武具等で一定程度の戦力になるでしょう。開発研究を支援するというのは?」

 壮年の騎士が挙手する。

「そう一朝一夕にできるものでもないだろう。装置や武具の研究はあくまで補助として、が良いと思う。加えて、悪魔そのものについての調査も行うべきだ。案外、簡単なところに弱点があるかもしれない」

 巻き毛の騎士が挙手なしに呟く。

「その調査のときも、女王さまがおっしゃってた『臨戦』に当たるの? 手当がつくならうちの隊を出すよ」

 初老の騎士が渋い顔で質問を重ねる。

「戦わずに調査をするつもりか?」

「そう。後をつけてアジトを探ったり、あのベールを外す瞬間を狙って、容姿を記録する。普通に一日をどうやって過ごすかも知っておくと良いんじゃない? 刑事はそうやって容疑者の素性と弱点を暴いていくんだ」

 巻き毛の騎士は得意げに答える。

「危険が伴うことには変わらん。手当てはつくであろう」

「やったね! 手柄ゲット」

「うまくいけば、だがな」

 坊主の騎士が苦言する。

「じゃあさ、後で呼び出すのめんどいからここで聞いていい? 猪目と蝶二、悪魔と至近距離で会ったんでしょ? どんな感じだった?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ