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悪女が騙りて神を裂く  作者: たかはし?
第零章 Ep2 Normal End ~聖女じゃないなら悪役令嬢になれば良いじゃない。~
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003 一つの卓を家族で囲めば、昔話に花が咲く






「やっと会えましたわね…」




 学園内には授業や行事で使う施設が幾つもあり、その全てに国内最高峰の技術や費用が惜しげもなく使われている。

 劇場・闘技修練場・屋内運動場・セレモニー兼ダンス用のスイッチングホール。これら四つが一つにまとまった巨大集合施設、カルテットホール。

 多岐に渡る魔法の訓練・測定、魔法戦闘用の修練場と闘技場、加えて危険魔法研究用スペースも設けられ、いざとなれば避難所にもなる。あらゆる魔法対策が施された複合魔法堂、通称漆黒殿。

 研究・実験・保管部屋等が完備された文理系と、器具備品だけでなく更衣室・仮眠室・浴室まで完備された運動系の二つに分かれ、併設された双子部室館。

 しかし。それらよりも規模こそ劣るものの、ほぼ全生徒が毎日のように通う重要設備がこの学園にはある。


 学園内食堂。

 学園本堂の最端、本堂の一部でありながら内壁や床のタイル材まで異なっており、その3階まで吹き抜け構造となっている異彩を放つ大食堂。

 普段は閉鎖され、利用には許可申請が必要となる3階のVIPエリア。

 高位貴族用を意識し、5つの大テーブルのみが余裕をもって設置された2階。

 調理場がはめ込まれ、席が無数に並べられた1階。

 屋外に出て座れる二階建てのテラススペース、その周りにはジャンクフードのみにとどまらず、甘味や飲物の店が幾つか並べられていた。

 特殊な事情で食堂を利用できない生徒を除けば、原則飲食物の持ち込みは禁止。

 代わりに、食堂の基本利用は無料になっている。


 つまり。

 昼の休憩時間。ここ学園内食堂には、全校生徒の実に9割超が一斉に傾れ込む。

 携帯食を手に入れ、その場を直ぐに離れる者。黙々と食事をこなし、淡々と出て行く者。食事を手早く済ませ、テラスでお茶を飲みながら話し込む者。

 濃淡あれど、人数に比例した喧騒が絶えない食堂内。

 しかし、同じ空間にありながら2階エリアは驚く程に声が少ない。


 高位貴族用と囁かれる2階エリアに関して、実は一切の使用ルールが設けられていない。

 その為全校生徒が利用できる事になってはいるが、やはり殆どの生徒は立ち入らない。

 明確なルールが無いにも関わらず、新入生にまで教員が推奨してしまう為、もはやそういう物として扱われている。


 では、実際には誰が使うのか?

 高位貴族と一括りに言っても、ウィルオール学園の生徒数はその半数以上、と言うより現在も8割以上を貴族が占めているし、その割合や内訳は当然毎年変動する。


 自分より爵位が高い家の人間は在学しているのか?

 同じ爵位の中でも、影響力の高い家の者は居ないか?


 2階席は、5つ。

 ならば格の高い家から順に…と、そう単純な話でもない。

 自家はあの家と先々代で縁のあったから仲が良い。あの家とあの家は分家にあたるから優先されるだろう…

 それら、所謂『派閥』と呼ばれる情報が大いに関係してくる。

 勿論、格の上下がはっきりとしない家同士も多い。

 そんな時は、よく決闘騒ぎにまで発展すると言う。

 故にその年2階を誰が、何家が使うのか。貴族界の情報に疎い者でもその目に入る指標となるし、すんなり決まるのか諍いが起きるのか…学生達の興味の的でもあった。…らしい。


 しかし今、そんな生徒間の娯楽であった食堂二階席争奪戦は起こらない。

 王太子…王族が入学した一年前。この国に4つしかない公爵家の令嬢・令息が学園内に揃った。

 王族を前にして、明確な敵対の姿勢を取る貴族家など無い。故に、派閥がどうのと言う話が入り込む余地もない。

 5つの席が全て、誰かが何かを言うまでもなく、埋まってしまった。

 その内の一人が他でもない、公爵令嬢アリ゜ス・アルシファイア。


 そう、アリ゜ス。アリ゜ス・アルシファイア。

 アルシファイア家の疫病神。

 ゴミ以下の女。

 血縁上、実姉。




「お姉様。」




 これは、この学園で一年かけて築きあげたテメェの砂の城を完膚なきまでに叩き壊す、ゴミクズが見た甘い夢を終わらせて地獄へ堕とす、死神の声だ!



 痩身。吊り目。

 逆巻く炎のような赤髪でありながら、毛先だけが光を通して橙か仄かな金色にも見える。

 アルシファイア公爵家第二子。次女。

 スカーレット・コンスタンス・アルシファイア。

 公爵令嬢であるその身を誇るように。

 己が権利を誇示するように、階段を伝い堂々と踏み入った、食堂2階。





「…………は?」




 が。

 そこに、姉は居なかった。






************






 人にはそれぞれの基準がある。

 例えばそれは行動の理念だったり。

 例えばそれは味の好みだったり。


 学園の食堂は総生徒数を受け入れられるだけの広さと席数がある。

 一部生徒以外の者も利用する。が、携帯食だけを受け取り、食堂内の席を利用しない生徒数がそれを大きく上回る。

 結論、席は余る。

 ならばいつ何時でも余裕を持って使える環境かと言えばそう言うわけではない。

 昼の休憩時間が始まってから30分弱、厨房に面している注文用と受け取り用のカウンターは混雑する。

 選べるメニューを6種。休憩時間開始時に各30食前後、つまりは200食近くが調理済みの状態となっており、その即時受け取りができる。

 勿論その後も随時調理・提供されていくが、時間がかかってしまうのは当然だし、一斉に並ぶ生徒の数を捌き切るにはそこそこの時間を費やしてしまう事になる。


 だが、この状況は今に始まった事ではなく、この学園内食堂では毎日の光景である。

 毎日繰り替えされる環境の中に、人は自分の最適を見出して順応する。

 並びが解消された頃を狙って食堂に遅参、もしくは食前をテラスで優雅に過ごす。

 列が一定の長さになるまで、近くで様子を見る。

 長蛇の列でも構わず並び、効率よりも早さを重視する。

 勿論、授業の終了時間やその日の気分でそれらを使い分ける者も多い。


 だが、しかし。

 他の選択肢を一切排除し、頑なに一つの手段のみを選び続ける者達が居る。

 いかなる手段を用いてでも、作り置かれる先着のそれにありつく。

 …これだけでも、十分異常だ。

 日によって、講師によって、終了時間が若干伸びる事もある授業。他の者達よりもスタートが遅れる時もざらにある。それらを物ともせず、時に学園内を全力で駆け抜ける迷惑行為すら駆使して、なりふり構わず。

 そんな生徒が、学年に必ず数人、10にも満たない数存在する。


 が。

 それすらも、いや人智をも超え、頂点とも言える人物達が数名存在した。

 先着組の中でも必ず、執拗に、己が狙う一種類の定食しか指定しない。

 30食前後しかないそれを必ず手に入れる。…一般生徒の理解を越えた所業。


 その中の一人に、学園の暴君と呼ばれる痩身中背の少女アリ゜スの姿があった。

 授業時間が終わると同時に教室から姿を消し、経路不明で何処からともなく食堂に現れオススメ定食を一番最初に持っていく。

 物理的に不可能な時間で食堂に姿を現したと言う目撃証言も多く、その様子は影武者の存在を隠す気すらない。

 クラスメイト達の興味の的は、授業を受けている方が影武者なのか、はたまた食堂に現れている方がそうなのかと言う点に集中していた。

 その到着はあまりに早く、二着の生徒が食堂に入る頃には既に食事を始めていると言う事も多いと言われている。

 ただ、広く静かな食堂で一人黙々と食事をする様は、その横暴ぶりからは想像もできないほどの優雅さを持つ。その犯しがたい風景は、一般人には近寄りがたくもあり、アリ゜スが席を立つまで彼女が座る窓際席近辺に座る者は居ない。


 本日もアリ゜ス・アルシファイアは食堂一階窓近く、日差しの強い通路際の席で黙々と、オススメランチを優雅に食べ進めていた。

 すると食堂内に、騒がしい一団が入って来る。




「はい、去年一年ずっとそうだったと兄から聞きました。きっと今日も…」


「良いわ、行きましょう。あの偽聖女オンナが慌てふためく姿をアンタ達にも見せてあげるわ!」




 見間違うはずもない。赤い髪。

 自分が持っていない、アルシファイア公爵家の血筋に多い髪色。

 一年ぶりに目にした妹、スカーレットの姿。

 彼女を先頭に5人、全員が新入生の女子。

 食堂入り口の一つから真っ直ぐ、大きな通路を厨房も見ず速度も落とさないで直進する。

 目こそ合わないものの、足取りは一直線にこちらへと向かっている。

 その目的は、明白だ。


 『偽聖女』か…。

 面倒だ。

 だが、避けられないか。


 妹に付き従うように動いていた集団は、私の席の前までたどり着く。

 最後の抵抗のつもりか、話しかけられるその瞬間まで気付かないふりで食事を続ける。

 …と思っていた。

 五つの足音が通り過ぎる。




「………」




 スプーンが空中で止まる。

 口を閉じるのも忘れたまま。




「あれが2階に上がる階段だったわね!」




 私の横を通り抜け、その先。二階へ上がる階段へと、一目散に速足で駆けてゆく5人。

 そうです。間違いありません。侯爵家の令嬢であるスカーレット様にはその権利があります!もしかしたら王子も上に…。王太子殿下が!?あ、挨拶しなきゃ!私まだ見た事無くて…!

 …と。4つの声が代わる代わる、キャーキャー甲高い声で。


 そこに目的の姉は居ないというのに。




『なんで居ないのよ!!』




 アリ゜スは徐に食事を再開した。






---------------------






「居た!」




 翌日。

 今日もアリ゜ス・アルシファイアは食堂一階窓近く、日差しの強い通路際の席で黙々と、オススメランチを優雅に食べ進めていた。

 すると食堂内に、騒がしい一団が入って来る。

 

 見間違うはずもない。赤い髪。

 一日ぶりに目にした妹、スカーレットの姿。

 彼女の後ろに、代わり映えの無い4人の新入生女子。

 食堂入り口の一つから真っ直ぐ、大きな通路を厨房も見ず速度を上げて、指さし確認しながら直進してくる。

 足取りは一直線にこちらへと向かっている。

 その目的は、明白だ。




「やっと見つけたわ!」




 その足は、アリ゜スの席の前で止まる。

 1日越しで、全く同じ席に座っていたアリ゜スにようやく声がかかった。




「スカーレット…」


「一年ぶりね?」


「……昨日もこの席から見ていたわよ?」


「ぐっ、ンン!!なんで、こんな所に居るのよ!」


「……私の自由じゃなくって?」


「公爵家の誇りも無いわけ!?…フン、まあアンタはそうでしょうね、オネエサマ。」


「ソレとコレとは関係が無いように思うのだけれど。」


「関係あるわよ!!」




 バンッ!


 大きな音が響く。

 テーブルを叩くその勢いは、アリ゜スの前に並ぶ食器を揺らした。

 固唾を呑んで見守る野次馬達は、その音に驚き身を震わせる。

 …目の前のアリ゜スは驚いた様子も見せず、揺れたスープを見つめていた。




「スカーレット。」


「…何よ。」


「食事中よ。」


「見ればわかるわよ!!」


「あとにしてくれるかしら?食事の後なら、話くらい聞いてあげるわ。」


「アンタの都合で話進めてんじゃないわよ!」


「スカーレット。」


「何よ!!」




 スプーンを置く音。

 二人のやりとりに気づいていない遠席の談笑、食堂に入って来たばかりの生徒が放つ雑音、厨房の調理音、注文の声。

 静寂とは言い難い空間。それでも静かさを感じるその場所で、カチリという音は確かに響いた。




「…私は、食事の邪魔をされるのが、とっても嫌いよ。とっても、ね。忘れてしまったかしら?」


「…っ!!」


「最近は快適だったのだけれど…まあ、新しく入学してきた子も居るものね。改めて言っておくわ。」




 妹に対して、ではない。

 目は眼前の少女へと向けられているが、その声は周囲で聞き耳を立てている全生徒へ子細に聞こえるよう、力が込められていた。




「人生に大切な事は幾つかあるけれど、食事は睡眠と並ぶ最も重要な物よ?それに。私は、ここでの食事がとても気に入っているの。用があるなら時間を改めて欲しい所だけれど。どうしても昼休憩の内に、と言う事であれば…なるべく急ぐわ。だから、場所を移しましょう?終わるまで大人しく待っていて頂戴。」


「……………はぁん?ああ成程、そういう事。そりゃ困るわよねえ?こんなに人が大勢居る場所じゃあ…。自分が築き上げて来た地位が、嘘で塗り固めて作った自分の砂のお城が壊れちゃうかもしれないんだもの、ねえ?でもそんな態度で良いのかしら?…今直ぐ謝って許しを請うなら、すこーーーーし位は手加減してあげても良いわよ?」


「……邪魔をするな。三度目は、言わない。」


「ッ…。」




 もう、興味は失せた。

 そんな言葉を含んだ溜息を一つして。

 アリ゜スは、食事を再開する。




「ああそう、そういう態度!…でもね、お姉さま?ここは生徒誰もが利用できる食堂よ?ここで私が、ちょーっと周りに聞こえるくらいの大きな声で身内の笑える世間話をして、それがたまたま近くに居た生徒の耳に入ってしまう事も……フフッ、勿論あるわよねぇ?それを止める権利、お姉さまには無いわよねぇ?」


「……」


「チッ!」




 わざとらしい程の大仰な舌打ち。

 付き従っていた4人の内、一番近くに居た女生徒を射貫くように睨む。




「トゥーリ!!」


「ひゃっ!?ははい!」


「聞いて下さる!?私のお姉さまの話なんだけど!」


「え、っと…あ、あの…」


「……聞いて下さる?」


「あ!?はい、勿論、です…」




 俯いたまま黙々と食事を続ける自らの姉を見やる。

 抵抗の素振りはない。


 クヒヒッ。


 赤髪の下にある整った顔の美少女からは、想像もできない程下卑た笑いが滲み出る。




「ご存知?私のお姉さま、アリ゜ス・アルシファイアって名前なのだけど!」


「……あ!はい!存じ上げております…。」


「なんでも、『学園の暴君』なんて呼ばれてるらしいじゃない?」


「そう、ですね…?」


「なんでも、圧力をかけて教師を辞めさせたとか?ああ、もっと有名なのがあったわ!イルサークア公爵家のご令嬢、クラリス様!あの方を退学に追いやったのがお姉さまだって話!……それもこれも、ぜーんぶ、アルシファイア公爵家の権力を使って!ね?」


「……えと、私も、そう聞きました…」


「でしょ!?それ聞いて私、笑っちゃったのよ!!」


「………?わ、らう、ですか?」


「………」




 笑み。

 だがその笑顔は、トゥーリと呼んだ少女に向けられているはずなのに、何処か空々しい。

 それもそのはずだ。

 言葉を止めた赤髪の少女、スカーレットの興味は、自分と同じ姓を持つ少女にしか向けられていない。

 待っているのだ、反応を。


 叫んで止めるだろうか?泣き喚く?まさか、やめてくれと懇願する姿が見れたりするだろうか?楽しみだ楽しみだ楽しみだ楽しみだ!!!


 …だが。

 幾ら待っても、望んだ声は聞こえない。

 違う。そんな程度の話ではない。

 微かな音。

 変わらずに。黙々と、食事を続ける音。

 それはマナーを完璧に守りながら食事をする、動揺も、少しの乱れも無い、流麗な動作から漏れる微かな音だった。


 その美しい光景に、一瞬で顔が、髪色と同じ赤に染まる。

 奥歯が軋む音がした。




「この女は!!!聖女を自称したこのゴミ屑アビス・アルシファイアはね!!我がアルシファイア公爵家からとっっっっっくの昔に見限られてんのよ!!!」




 肺一杯の空気を使って叫んだ声は、先程までの大声の比ではない。学園食堂内を、余す事無く震わせる。

 後に残る静寂。少女の荒くなった息と、変わらない食事の音だけが残る。

 そして少女スカーレットの息が整う頃。浸透した衝撃がゆっくり、ゆっくりと波及した。

 ざわめく声の中、疑いよりも興味の視線が増えていく。

 今度こそ、少女は笑う。

 鼻で。口で。声で。高らかに。




「ねえお姉さま、今度はいったいどうやって騙してたの?どんな手を使ってこれだけの大人数を騙して来たわけえ??笑えるわよね!公爵家のちからぁ?誰が、アンタなんかの為に力を振るってくれるってえ!?」




 先程見せた不機嫌さなど、もはや跡形も無い。

 堪え切れない笑いが、話す言葉とせめぎ合いながら溢れ出る。

 観衆の動揺は更に広がっていく。




「学園の、ボウクーン??ねえ、公爵家でこの女がどう扱われてたと思うぅ?家の名を汚したこの女を!誰がこんな女に、家の力なんか使ってやるかっての!家畜よ!飼ってやってたの!アルシファイアの家を不幸にした、疫病神よコイツは!?こんなゴミムシ、生かしてやってるだけでありがたく思いなさいって!そうでしょ!?召使い以下の扱いされてるこの女が?いったいどんな魔法を使ったら公爵家の権力なんて話になるのか、私にも教えて欲しいもんだわ!」


「………。」


「わかってるわ、入学してからずっと!私を避けてたのは、怖かったんでしょう?バラされるのが!お偉い恐怖のボウクン様が、家でゴミ同然に扱われてるってバレれば、もう元の生活には戻れないもんねぇ?一年間せこせこ、狡い手使って悪知恵絞って虚勢張って積み上げて来たんでしょう?ご苦労様!どんなトリック使ってたか知らないけどねえ?妹である私が来たからには、アンタの儚い夢も今日で終わりなのよ!!ザマアミロ!!!???」




 ガチャリ。

 姉は、音を立てて立ち上がる。




「な、何よ!!」


「………ごちそうさまでした。」


「………………は?」




 トレーを持ち、返却口に向かって歩き出す。

 その後ろ姿を、茫然と眺める妹。

 だが、たった数歩で立ち止まる。

 




「…これは独り言なのだけれど。」


「………?」


「別に、私が話しかけられていたわけではないし………ここで席を立っても、失礼にはあたらないわよね?」




 歩き出す金髪の少女。

 少女が目的地に近づいていく。

 ようやく騒めき出す生徒達。

 テーブルを、勢いよく叩く音。声にならない奇声を上げた、赤髪の少女。




「淑女たるもの」


「!?」




 興奮した少女の横には、いつの間にか手ぶらの姉が立って居た。

 頭に血が昇っていた少女の体が、ビクリと跳ねる。




「…公共の場では大声を出さない。これ、お姉様からのアドバイス。」




 優雅に歩き去る姉。

 無遠慮の視線飛び交う食堂に残された妹。

 物が倒れる音が響いた。



※22.09.25 名前表記・呼び方等一部表記を修正。


次回更新予定:9月30日

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