まあるい おはなでも いいよ。
すらりとした整った鼻、私も憧れでしたねぇ。
あとすこしで いもうとが うまれる。
ママは、きのうから びょういんだ。
はをみがきながら、お父さんがいった。
「ももこ。きょうからおばあちゃんが来てくれる。いい子にしていてな」
「は~い」
おばあちゃんがくるのはうれしい。
でも、しょうじきいって、いま、わたしはそれどころじゃなかった。
だって、おさげがうまくゆえない。
きのう にゅういんするまでは、ママがちゃんとゆってくれていた。
いっしょうけんめいママとれんしゅうしたのに、ひとりじゃうまくいかない。
なんどやってもうまくいかない。
わたしは しかたなしに 一つ結びにした。
「おっ、ももこ。一つ結びもかわいいじゃないか」
パパが そういってくれたから、かがみのまえで ほっとして わらった。
わたしは、なんとなく じぶんのかおをみた。
わたしの目。
おおきいけれど わらうと みかづきみたい。
かわいくない。
パパとおんなじ。
まえにみた ふとったおじさんの かみさまも そうだった。
いやだなぁ。
ほっぺには、そばかすがてんてん。
かわいくない。
ママとおんなじ。
「そばかす、かわいいじゃん」なんていってくれるおとこの子はいないもの、いやだなぁ。
じゃぁ、ほかは?
はなは、とってもまるい。
かわいくない。
あれ?
ママともパパともちがう。
「ももこ、おはよう。来たよ」
「おばあちゃん!」
あっ、おばあちゃんとおんなじだ。
わたし、知っている。
このおはな、「だんごっぱな」っていうんでしょう?
もう そのなまえが いやだなぁ。
パパが びょういんへいったあと、目玉焼き(めだまやき)をたべながら、わたしは おばあちゃんに もんくをいった。
「おばあちゃん。どうして、おばあちゃんは、そんなまるいおはななの?」
「おばあちゃんのお母さんが、こんなまるいお鼻だったからよ」
「いやじゃないの?」
「いやだったけれど、もうあきらめた」
「ママのおはなは、まあるくないよね?」
「そうだね。ママは、おじいちゃんのお鼻だからね」
「ふ~ん。そうなんだ。わたしも おじいちゃんか パパのおはなが よかったなぁ」
「そうなの?」
「うん、こんなおだんごみたいなおはな、アンパンマンみたいでいやだよ」
「あっ、電話だわ。ええっ、生まれそう?もう?分かった!すぐ行く!」
「どうしたの?」
「ママに赤ちゃんが生まれそうだって!いそいで病院に行くよ!」
病院につくと、パパがうれしそうに笑っていた。
「ももこ。お姉ちゃんになったぞ」
おばあちゃんがあやまった。
「義明さん、ものすごく道がこんで遅くなってしまって、ごめんなさいね。でも無事生まれてよかったわ」
赤ちゃん、ううん、いもうとは かんごしさんに だっこされていた。
すごくちっちゃい。
「ももこも 生まれた時 あんな風だったんだよ」
わたしは いもうとに くぎづけになった。
かおが まっかっかで、つるっぱげ。
なにもかもしわくちゃで、びっくりした。
でもひとつだけ、わかったことがあった。
いもうとも、まあるいおはな。
わたしとおばあちゃんとおんなじ。
ついでに、アンパンマンともおんなじ。
いまはわからないけれど、そばかすもできて、めも みかづきかもしれない。
そう、わたしとおんなじかもしれない。
でも、なんでだろう?
うん、かわいいよ?。
めちゃくちゃかわいいよ?
わたしが まもってあげる!!
ぜったいに まもってあげる!!
たくさん たくさん れんしゅうして わたしが おさげ ゆってあげる!
わたしは、おばあちゃんにいった。
「わたし、まあるいおはなでも、いいや」
「あら?なんで?」
「おねえちゃんだから」
みんな、わらった。
わたしも うれしくなって わらった。
「お·ね·え·ちゃ·ん·だ·よ」
わたしは いもうとにむかって ゆっくりつぶやいて やっぱり うれしくなって もういちどわらった。
おわり
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
似たテーマで「マリーとリリーのなかよし家族」という童話も書いております。
そちらもよろしければ、ご覧になってください。