3 かなり、しんどそうだ
●「地球人になろう!」キャラクターデータ:No.3 キスギ=タカフミ
「遊んでる場合じゃないでしょう! この間の外部模試、あの女の子供より偏差値が0.3も下だったわ」
「それ……」
「いい? タカフミ。学校で1番を取るだけじゃ、駄目なのよ。あの女の子供を上回らなくちゃ……」
ほら見ろ……。
やっぱり、聞く耳なんて持ってないじゃないかよ。
このヒステリックに喚く女は、俺の母親で――名門高校の英語教師だ。
教え子に――「あの女の子供」がいる。
「あの女」……それは、父が再婚した相手の女のこと。
父と母は、もう五年も前に離婚している。
父の再婚は、二年前のことだ。世間的に考えても、別におかしいことじゃない。
ただ――母と離婚する前から……始まっていたようだが。
これが痛く、母のプライドを傷つけた。
* * *
「あら……こんなくたびれたオジサンがいいの? あなた」
「……私にとっては……大事な、人です」
「あなたも……この冴えない女のどこがいいんです? 何でも、あなたの勤め先の食堂の方ですって?」
「お前の……その人を見下す物言いには、もう耐えられないよ」
「不倫なんていう反社会的な行動をする人間を見下すのは、当たり前じゃないですか?」
「つまりお前は、俺も見下してるんだな」
「…………ええ!」
* * *
五年前、母は、後に引けなくなった。
父を愛していたのに……自分のロジックに嵌まって、素直に「返してくれ」とは言えなくなった。
それは誰のせいでもない。
母自らのせいなのに、母の憎悪の矛先は、すべてこの再婚相手の女に向けられた。
そして俺には「あの女の子供よりイイ成績を取れ」と……
◆ ◆ ◆
……おいコラ、テーヘン。
――おや? もう読み終わりましたか?
ある程度はな。でもこれ……本気でキャンペーンする気、あんのか?
――何か問題でも?
大アリだろ! 誰が好き好んでこんなしんどそうなキャラクターになりたがるんだよ!
――はぁ……。
あのなあ、ゲームってのはな、「こんなキャラになってみたい!」とか「これからどんな冒険が始まるんだろう」とか、そういうワクワク感ってのが大事なんだよ。
お前、最初にこれを読んでもらって……って言ってたけどな。これ読んで「じゃあやります」なんて言う奴、地球上に誰一人いないぞ!
――そうですかねぇ……。最終的な彼のベストエンドは総理大臣になって日本を牛耳る、というものなんですが。
一日体験じゃその旨味も味わえないだろうが!
……あとな、設定資料とやらが長いし、重苦しい。
――シナリオ担当の力作なんですが。
書いた奴が力を入れようがテキトーだろうが、駄目なもんは駄目。
シナリオ担当って(一匹……はおかしいか)一人なのか?
――これは「シリアス系」担当の作ですね。他に「成り上がり系」「胸キュン系」「サスペンス系」、えーと後は……。
いや、詳しくはいいや。
とにかく、このシナリオ書いた奴はキャンペーンからは外した方がいいぞ。キャンペーンにしちゃ設定を作りこみ過ぎなんだよ。
人を引き寄せたいんなら、もうちょっと軽くふわっと、楽しそうなやつ。
入り口がもっとラクなやつじゃないと……。
――ふうむ……。なるほど、参考になりますねぇ。
はぁ……。本当にズレてんだな……。
ところでコレ、俺はもう拒否できないのかな。この「タカフミ」でプレイするしかないのか?
――そうですねぇ。もう始まってしまったのでねぇ。
お前が勝手に始めたんだろうが!
……まぁ、いいや。
どうせなら普段できないようなことして暴れてやろう。
――おお、さすがです。本来の性質が現れ始めたようですね。
あ? 何がだ?
――いえいえ……。それでは……どうぞ。




