電腐
「ああぁぁーーーー助けてくれ助けてくれああぁぁーーーー助けてくれ助けてくれああぁぁーーーー助けてくれ助けてくれ」
狂ったように繰り返し繰り返し同じ言葉を連呼する男。
「まったくなんなんだ?今月始まったばかりで、もう8人目だ」
男を診ていた男は呆れたように言う。
「どんだけヤバい薬やってんだ?」
「しっかし、ホント多いですよね~。原因も不明ですし」
「オレたちゃ医者じゃネーんだぞ」
「いやいや、医者ですよ」
◇◇◇◇◇
裏の社会で極秘に開発された没入型VRマシンがあった。
VRの身体とリアルの身体がリンクしており、VRで傷つけばリアルでも傷がつき、リアルで怪我してもVRで治せばリアルでも怪我が治る。
そのVRマシンの使用者がオカシクなる事態が発生した。
解決のため裏社会の人達は、VRに詳しい腕のたつエリートを集めスペシャルチームを結成した。
そのチームの名は『ヴァリター』
◇◇◇◇◇
「リーダー」
「なんだ?」
「これは明らかにアレじゃないっすかね」
彼等の前には荒れ果てた世界が広がっていた。
「オレが聞いたのは南国のビーチだったんすけど」
「俺もそう聞いている」
今回オカシクなった使用者達は富裕層で、療養兼娯楽目的でVRマシンが使われている。
そのためVR世界は南国のビーチに設定されていたのだが。
「あれ? 今何か動かなかったっすか?」
「マイス。撃ってみろ」
リーダーの命令でマイスは銃を射つ。
「当たったっすね」
「迂闊に撃つな。アレが使用者だったらどうする」
「えっ!」
理不尽に怒られるマイス。
「ここからでは見えないな。彼に見てもらうか」
長距離射程の銃を所持している彼にスコープで見るよう命令する。
「見えたか?」
「………人」
スコープを通して見えたのは人だった。
「マイス……やっちまったな」
「えっ!」
「とりあえず見に行くぞ」
チームは人に近付いていく。
先頭を歩いていたP・リエス・テールはそれにいち早く気付いた。
「ゾンビじゃない?」
プレイヤーの場合は5M以内に近付くと頭の上に青いマーカーが出る。
マイスに頭を撃ち抜かれていたソレは蠢いていた。
頭を撃ち抜かれて生きていられるのはゾンビぐらいだろう。
リアルボディとリンクしているVR空間内で、プレイヤーがゾンビになっている。
つまり、現実でゾンビになった人間がいるということだ。オカシクなった人はゾンビに襲われたのかもしれない。
「でも、リアルでゾンビなんて見ないわよ」
ゾンビを処理しながらP・リエス・テールは疑問を口にした。
「それはゾンビになったら知性がなくなってログアウト出来なくなるからだろう」
「ゾンビになったらログアウト出来ないんすか!」
「とりあえず彼はログアウトして報告に行ってくれ。俺達は引き続き調査する」
彼は頷きログアウトする。
「よし、調査再開だ」
「ん? 誰かいるっすよ」
マイスが指差す方向に何者かがいた。
その者が呟く。
「記録消去」
次の瞬間、VR世界が消えた。
◇◇◇◇◇
「…………………」
ログアウトした彼は起き上がる。
コツ
音がした。
彼がそちらを見るとVRギアがあった。いや、VRギアしかなかった。
彼のチームメンバーが消えたのだ。




