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himo  作者: ぱた
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himo 2

人ごみをすり抜けるようにして田中は進んで行く。大半が異星人達で、地球人達の姿も少しは確認できる。地球人達は田中と同様にヘルメットと宇宙服姿で歩いている。

 二人組みの異星人とすれ違った時、肩がぶつかり田中は尻餅をついた。ぶつかった方の異星人が「どこ見てんだ、コラ」と吐き捨てるように言い、もう一人の異星人はニタニタと笑いながら田中を見下ろしている。

田中はお尻を払いながら起き上がり、異星人を睨みつける。

田中はなぐりかかったが、あっけなく押さえつけられる。異星人が田中に殴りかかろうとしたとき、銃声が鳴り響いた。異星人がうめき声をあげ田中のほうに倒れ込む。驚いて音の聞こえるほうを見ると、五メートル程後ろに銃をかまえている人物が立っている。ヘルメット越しにうっすら見える顔はどうやら人間の男らしかった。男は田中に向かって「逃げるぞ!」と叫ぶ。慌てながら訳も分からず男の後を追う田中。

 しばらく走った後、彼に導かれるように街はずれにあるちいさなバーに入った。薄暗い店内には異星人や地球人が入り混り混雑していた。至る所から笑い声や怒号のような声が上がっていた。二人はカウンターに座り、ヘルメットを脱ぐ。田中は息を切らせながら男に軽く会釈をし、「助かりました。ありがとうございます」男は、ああ、と軽く頷いた。

「あの撃たれた奴は大丈夫でしょうか」

「心配ないよ。あれはショックガンさ。五分もすれば目が覚める」

田中はホッとした表情を浮かべ、そうですか、と安心する。

緑色の顔をした異星人のバーテンダーが二人に注文を聞いてきたので男はビールを二人分頼んだ。ビールが運ばれてきて一口飲むまで二人は無言だった。男が二口めのビールを咽喉に流し込んでから田中に向かい「なんでまたあんな奴らとトラブった?、勝ち目なんてないぜ。あんな奴らあいてじゃ」

「まあ、そうなんですけど・・・。ちょっとイライラしてたというか・・・」

「イライラって、なにがあったよ」男は怪訝そうな表情で問うた。

「まあ、仕事関係で」

「人間関係とか?」と男。

「いや、そこまでもいってなくて・・・その」

男はまたビールを一口飲み「ああ、見つからないのか」

「はい」と恥ずかしそうに小声でつぶやきビールを飲む田中。

「ここじゃよくある話さ。特に俺らみたいに後からやってきた開拓組はキツイよ」

二人は黙ったまま暫くビールを飲み続けていたが、おもむろに男が切り出す。

「なあ、気が向いたらでいいんだけど、俺たちがやってる仕事手伝ってみないか?」

「えっ」

「実はもう少し人手が欲しいと思ってたとこなんだ」

田中は少し逡巡したが、このまま無職でいたところでどうにもならないし、助けてもらって恩もある。

「どんなお仕事なんですか」

「まあ、肉体労働なんだけどね。そんなに難しい仕事じゃないよ」

「そ、そうですね。では、お願いします」

「すごい偶然だけど、これも何かの縁ってやつだな。これ、俺の名刺」

男から渡された名刺には ”有限会社 ロープ 代表取締役社長 内田 隆” と書いてあった。

「社長なんですか?」とすこし驚いて聞く田中に「いやぁ、社長ったってたいしたもんじゃないよ。ちっぽけな会社だし、雑用係みたいなもんだよ」

「はぁ」と田中。

「早速だけど、仕事は基本、夜勤なんだ。いつ空いてるかな」

「えと、あの、突然だったので今晩はまだちょっと。明日のよるでよければ」

「よし、そうしよう。連絡するよ」

田中は内田に電話番号を教え、その夜は二人でバーで飲み明かした。



 カーテンから差し込む日の光にベッドの中の田中は起こされた。かなり飲みすぎてしまったらしい。頭はガンガンするし、吐き気もすごい。なんと起き上がると迷わずトイレへ向かった。ふらふらになりながら居間のソファに座り、壁に掛けてある時計を見た。午後四時二十五分を指している。電話の留守電をチェックしてみたが、まだ連絡はきていないようだった。田中は一旦シャワーを浴び、簡単なサンドイッチを作り、一人で食べた。そして読書をしながら連絡を待つことにした。



 電話が鳴ったのは午後八時を少し回った頃だった。緊張気味に電話にでる田中。

「はい、田中です」

「あー、俺。内田ですけど、この前の」

「は、はい」

「仕事なんだけど、今から大丈夫かな?」

「あ、はい。大丈夫です」

「えーと、それじゃあどうしよっか・・・。この前行ったバーの場所憶えてる?」

「はい、憶えてます」

「じゃあ、そこに仕事仲間と車で迎えに行くから中でまっててもらえる?」

「わかりました」

「だいたい九時半頃につくと思うから」

「はい」

「じゃあね。宜しく」そして電話は切れた。田中はよそ行きの服に着替えて、鏡に自分の姿を映し、その姿を眺めながら軽く深呼吸をした。玄関に行き、靴箱の上に置いてあるヘルメットを被り家をでた。



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