ゲームのお時間です4
「出たッ、お兄ちゃんの言ってみたい台詞ベスト10!」
俺の台詞に、腕に抱きついたままの結衣が跳ねるように反応する。
結衣のやつ、わざと押し当ててないか? だとしたら見事お兄ちゃん好みに育ってくれたものだ。おっと、凛も好きだからな? 聞こえてるか?
「よく覚えてるな結衣。そう、これは俺が日常で言いたいけど中々言えないでいる台詞のトップ3だ」
「それ私も知ってますけど、少し足りなくないですか?」
小さな顎に人差し指を当てながらひまりが言う。
あざといな。こんな女性ばかりの場所でもアイドルとしての仕草をいれてくるなんて。
そういえばひまりは秋葉原で人気アイドルらしいから、アニメや漫画に詳しくてもおかしくないのか。確かにこれはアニメの台詞の一部だからな。
「そうなんだけど、まあ大人の事情というやつだ」
「子供のくせに」
「ん? 今なんて言ったんだ?」
「あっ、いえ、なんでもないですよ?」
おかしいな、今確かにひまりがなにかボソっと言ってたはずなんだけど……。
「ちなみに1位は何なんですか?」
「知りたいかるみかちゃん。1位、それは――」
固唾をのむ一同。
「パフパフ、だ!」
「……え?」
「だからっ、パフパフ、だよパフパフ!」
「それって誰の台詞なの?」
「誰って、某漫画に登場する亀で仙人のじいちゃんだよ!」
「あー、ドラゴソボールの!」
「おしい!」
でも今回はある意味それで助かったな。
「でもなんでそんな台詞が1位なの? 言うだけなら簡単そうだけど」
「るみかちゃん、その時のシーンを思い出してみてくれ」
「え? うーん……!?」
「どうやらわかってくれたようだな」
「う、うん……っ。確かにこれは難しいね」
「そうだろうそうだろう」
だって胸を揉んでる最中の台詞だからな。
「お兄ちゃん! 結衣さんよくわからないけど、お兄ちゃんのためなら何でもするよ?」
「え!? ――い、いいんですか?」
「うん、任せてよ!」
どんと胸を叩く結衣。そして揺れる胸。
俺はその弾んだ胸を至近距離で見てしまったことで、より一層それを強く意識してしまった。
やばいっ、顔が緩み切って力が入らん。
「ちょっと、そのわなわなしてる手で何する気なのかわからないけど止めときなさいよね」
「り、凛!?」
「顔がとんでもなく気持ち悪いことになってるわよ」
「なっ!?」
俺は自身の両手がすでに揉みしだくような手付きで動いていたことに気付くと同時に驚いていた。
まさかここまで理性を抑えられていなかったとは。
こんな美人揃いの場所で俺としたことが……。
「なんで顔を押さえて後悔してるのかわからないけど、奏の醜態なんて見飽きてるから今更なんとも思わないわよ?」
「本当か!? 本当に俺大丈夫か!?」
「ええ、もとから今以上に好感度の下がりようがないんだから大丈夫よ」
グッと親指を出す凛。
「それ全然よくないよね!?」
「大丈夫だよお兄ちゃん! 結衣さんの好感度はMAX状態だから嫌いにならないよ!」
「結衣……!」
「はにゃ~……っ」
俺が目元に感じる冷たいものを拭いつつ結衣の頭を優しく撫でると、気持ち良さそうに気の抜けた声を洩らしていた。
「ねえ奏お兄ちゃん。早くやろーよー」
「その前にルール説明をしてくれないかしら? これ自作なのよね?」
俺が結衣を愛でていると、腕を組みイライラしだしているひまりを横目で見ながら焦る様に言うるみかちゃんと、イライラしながら言う西園寺。
なんでみんなそんなに急かすんだよ。時間ならいっぱいあるのに。――あー、結衣とイチャついてるからか。みんなの視線がそれを語ってる。
俺は撫でる手を止め、ボードを指差しながらルール説明を始める。
「わかった、説明するからみんな聞いてくれ」
頷く一同。
「これはよくあるゴールした時に1番金を持っていた人が勝ちってのをベースに作られてるんだけど、これには特別なマスがあってな」
「特別な、マス?」
小首をかしげる結衣。
あらやだ可愛い!
「そ、そう特別マス。このマスに停まると、停まった人と俺限定で王様ゲームをすることになるんだ。しかも俺が停まったときはそのまま俺が王様役だが、他の人の場合はじゃんけんで王様を決める」
「ちょ、ちょっとそれじゃあ圧倒的に奏が……だから俺様ゲームなのね!? 俺様って奏のことなのね!」
「よくわかったじゃん凛。ちなみに6分の1のマスが特別マスだ」
「結構な確率で停まるじゃない!」
「じゃなきゃつまらないだろ?」
「つまるわよ!」
「……うん、まあよくわかんないけどすまん。――はいっ、じゃあ順番決めのじゃんけんするぞー」
「ちょっと! いま可哀相な人を見る目で見たでしょ!」
「じゃーん・けーん――」
俺は隣で怒鳴ってくる凛を無視して進め始めた。




