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変態アニキとブラコン姉妹  作者: 神堂皐月
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20/24

ゲームのお時間です2

 すると、ブブブッとテーブルの上に置いてある俺の携帯電話――この夏やっとスマートフォンに機種変更をした新機種だ――がメール受信を知らせてきた。


 俺はそれを手に取りメールをチェックすると、


「お兄ちゃん、なんだったの?」


 隣に座る結衣が小首を傾げて訊いてくる。


「ああ……んー、まぁ……もうすぐわかるさ」


「ん……?」


 ――ピンポーン。


 結衣が頷いてすぐ、本日3度目の呼び鈴が鳴り響いた。


「はぁ~……ちょっと行ってくる」


「結衣さんも行く!」


「いいよ、すぐ戻る」


 俺は結衣の頭をひと撫でしてからリビングを出ると、訪問者でありメールの送信者でもある人物が許可したわけでもないのに勝手に玄関の扉を開け仁王立ちで待っていた。


「遅いっ! チャイムを鳴らしてから何秒経ってると思ってるの!」


「それより俺は我が家への立ち入りを許可した覚えがないんだが?」


「下僕の物はわたくし様の物! つまりこの家だってわたくし様の物なんだから勝手もなにもいいに決まってるじゃない!」


「お前はどこのガキ大将だよっ!」


「わたくし様は音痴じゃないわよ!」


 忘れてるようだけどアイドルなんだから、ふんっ、と付け足すご主人様。おっと、ひまりだった。やばいやばい。下僕がいたについてきていて危ないな。気を付けなければ。


「で? メールにも書いてなかったけど、いったい何しに来たんだよ?」


「わたくし様の宿題をやりなさい!」


「はあぁっ!?」


「わたくし様はアイドル、つまり忙しいの、下僕と違ってね。だからわたくし様の代わりに下僕のあんたがやりなさい!」


「お前はバカなんだから自分でやらなきゃダメだろ」


「んなっ!? 今わたくし様をバカって言った!? 言ったわよね!? ちょっとありえないんですけど! このわたくし様を侮辱するとかありえないんですけど! 踏み付けるわよ!」


「えっ、いいの!? お願いします!」


 俺はひまりに背を向け尻をつき出し、踏み易いようにその場にしゃがんだ。


「ひぃっ!? ま、まさか本当に踏んでほしいなんて、あんたって本当に変態ね……!」


「フッ、なにを今さら……。俺はひまりんに踏んでもらえるならなんだってするぜ?」


 俺は尻をプリプリと振りながら言う。


「うぇっ……。あっ! ならそれこそわたくし様の宿題をしなさいよ! そしたらご褒美に踏んであげてもいいわよ?」


「くっ……わかった。だが1つだけ条件がある! その時は素足で踏んでくれ! 靴下やニーソ越しの感触では対価として釣り合ってないからな!」


「その違いで釣り合うとか意味がわからないけど……いいわ、そのくらいで宿題をやらなくて済むのなら安いものよ」


「オーケー、交渉成立だ。終わったらそのノートを渡す、これでいいだろ? 今回はノートもこっちで用意してやる」


「下僕にしては気が利くじゃない」


「まあな。じゃ、これで用は済んだろ? とっとと帰ってくれ。客が来てるんだ」


「何よその言い方、下僕のくせにわたくし様に向かって! ――ふーん……客、ねぇー……」


 ひまりは玄関に綺麗に揃えて置かれている靴を視線だけ下げる様にして見つめていた。


 ただ靴が置いてあるだけなら何もおかしくないのだろうが、ここにあるのはすべてサイズも系統も違うものばかり。それも俺の一足分以外すべてが女性ものなのだ。


 くっ、ひまりのやつ、靴を見て客が女だって気付いたな?


「わたくし様もおじゃますることにするわ。今日はオフだしね。いいわよね? げ・ぼ・く?」


「!? は、はい……」


 眼が怖ぇよ眼が!


 俺は背筋にゾクゾクとした悪寒のようなものを感じ、仕方なくひまりもみんなのいるリビングへ案内することにした。


「ごめん遅くなった」


「もぉー遅いよお兄ちゃんっ。結衣さんもう少しで泣いちゃうところだったよ?」


「ごめんごめん」


 俺は結衣の頭を撫でながら謝ると、結衣は勢いよく腰に抱きついてきた。


 俺は結衣の頬をプニプニとつまんでいると、目元にうっすらと涙が浮かんでいることに気が付いた。


 結衣のやつ、もしかして泣いちゃうところだったんじゃなくて本当に少し泣いていたんじゃないのか?


 えへへと微笑む結衣の両頬で俺が遊んでいると、突然背後から殺気のようなものを感じた。


 びくりと肩を上下させると、俺はゆっくりと振り向く。


「で、ですよねぇー……」


 振り向くと、そこには早く座らせろと顔に書いたひまりが腕を組んで待っていた。


「ちょっとちょっと、奏お兄ちゃん! なんでここにひまりちゃんがいるの!?」


 ひまりを俺が座っていた席に座らせた途端、もう我慢出来ないという勢いでるみかちゃんが立ち上がって訊いてきた。


 ちなみに俺はあや姉とるみかちゃんが座っているソファーのテーブルを挟んだ対面側に腰を下ろした。俺だけカーペットに直座りだ。


 俺はどうどうという風にるみかちゃんを宥めてから説明する。


「ひまりとはちょっといろいろあって知り合いなんだよ。それで仕事終わりでこの近くに来てたってさっきメールがあったから、なら来るか? って俺が誘ったんだ。な? な? そうだよな?」


 俺はひまりに合わせろよぉという風に目配せをすると、ひまりは仕方なさそうに軽く息を吐くと、俺の後に続いた。


「はい、藤森くんには転校してきてからいろいろお世話になってまして。それでみんなが遊びに来てると伺ったので遊びに来ちゃいました」


 ニコッと微笑むひまり。


 やっぱり俺以外の前だとそのキャラなのか。まあ俺にはそっちの方が安全で安心なんだけどな。でもなんか物足りないんだよなぁ……。


「なあ、なんでわたくし様って言わな――なんでもないですごめんなさい……!」


 俺が物足りなさからキャラチャンジしている理由を訊こうとすると、ひまりが目付きで黙りなさいと命じてきた。それも俺以外に気付かれないほどの一瞬だけだ。


 俺はそんなひまりの目付きでゾクゾクと背中を走る感覚を、悪寒のような気持ちの悪いものではなくだんだんと心地よくさえ感じ始めている自分に気が付いた。


 ……やばいな、М属性取得可能条件をクリアしそうだ。


「まさか奏お兄ちゃんがひまりちゃんと友達だなんて思わなかったよ。いいなぁすごいなぁ羨ましいなぁー!」


「よ、よかったら仲良くしてくださいね?」


「是非!」


 るみかちゃんが瞳を輝かせ前のめりでひまりに近づくものだから、さすがのひまりもその勢いに圧倒されていた。


 ひまりが友好の印に握手をしようと差し伸ばした手をるみかちゃんは両手で握り上下にブンブンと振る。


「ひまりさんっていうの? 私は奏くんの姉であやめっていいます。宜しくね?」


「あっ、はい。咲神ひまりです、宜しくお願いしますね」


 るみかちゃんを超えるアイドルスマイルで返すひまり。


 もしかしてるみかちゃんはひまりを手本にしてるんじゃないのか?


「私は妹の結衣です。宜しくお願いします、ひまりさん。ちなみにお兄ちゃんは結衣のお兄ちゃんだから手を出したら許しませんからね」


「ちょ結衣っ!?」


「大丈夫よ結衣さん。結衣さんが知ってるかわからないけど、私お仕事でアイドルをしてるの。だから恋愛は禁止だし、そうじゃなくっても藤森くんとは絶対にそんな関係にはならないわ」


「そうだぞ結衣。俺とひまりが恋人関係になることは結衣と俺が付き合うくらいありえないことだ」


「え!? じゃあお兄ちゃんとひまりさんはすでに付き合ってるってことなの!?」


「なんでだよ!」


「藤森くん、まさかあなた、実の妹さんとそんなことになっているなんて……。近親相姦だなんてさすがの私も引くわよ?」


「やめてくれ西園寺! 間違ってもそんなことはありえないから!」


「結衣さんはいつでもウェルカムだよ?」


 結衣の発言で一斉に冷ややかな視線を向けてくる一同。


 あーこれ、あれだな。ダメなやつだ。もう何を言っても信じてくれない人の眼をしてる。


 俺は諦め溜め息を吐くと、話題を変えるべく両手を叩いてから、


「で、このメンバーで何する?」


「……さすがに手を叩くだけで空気を変えられると思っていないわよね? 藤森くん」


「やっぱダメか……?」


「当たり前じゃない。けれど今はその流れに従ってあげるわ」


「西園寺……俺は今日初めてお前が良いやつに思えたよ」


「やっぱり止めようかしら」


「すいませんごめんなさいいつも感謝しています!」


「わかればいいのよ、わかれば」


 ふふっと笑う西園寺。


 今日も楽しそうだなー。


 俺が西園寺に弄ばれかけていると、またしても携帯が震えてメール受信を知らせる。


 俺は誰からだと確認をすると、あれ? ひまりからだ。


 俺が視線をひまりに向けえると、顎で指すように早く携帯を見る様に促してきた。


 慌てて内容を確認すると――


 『なにわたくし様以外にしっぽ振ってるのよ!』


 こんな内容が送られてきていた。


 うはっ、なんだよこれ。つまりこれって嫉妬だろ? 思わず吹いて笑うところだったぜ。


「まったく、可愛いところもあるじゃん」


 吹くかわりに思わず口にしていた俺の台詞に、一同は首を傾げ、ひまりはボンと一瞬で顔を赤くしていた。


 そんな俺とひまりを交互に見ながら結衣がむむむーと怪しむように唸りだす。


「と、とにかく何をしようか早く決めようぜ」


「そ、そうですね。せっかくこうして集まっているのですから遊びましょうよ」


 俺とひまりが誤魔化すように話し出す。


「なら凛も呼んでくるね。そろそろ起きてくるだろうし」


 するとあや姉が立ち上がりそんなことを言ってきた。


 ナイスあや姉! 流れに乗ってくれるあたりさすが頼りになる姉ちゃんだぜ!


「ああ、頼んだ」


 俺は内心で親指を立てながらあや姉の後ろ姿を見送る。


「じゃあ何して遊ぶ? やっぱりゲームとかか?」


「るみかはお話でもいいよ? ひまりさんもいることだし、いろいろお話訊きたいかも」


「そ、それはまたの機会に。男の子の藤森くんもいることですし、ここはゲームでいいと思いますよ?」


「そっかー。うん、そうだよね。女の子だけのお話とか出来ないもんね」


「そ、そういうことです」


 ひまりのやつ、本性のボロが出ないように俺に合わせたな? まあそれでも俺にはありがたいけどな。ガールズトークに男1人で立ち向かうとか経験値不足にも程があるってもんだ。


「藤森くん、決まったところ悪いのだけれど、私ゲームなんてほとんどしたことがないの。出来れば簡単なものにしてくれないかしら?」


「簡単なやつねー……。西園寺でも簡単に攻略できるやつってなるとやっぱりあれか?」


「ちょっと待ちなさい藤森くん。今攻略とか言ったかしら?」


「え? ああ、言ったけど。やっぱりゲームといったらギャルゲだろ? いや西園寺は女の子だし乙女ゲーのほうがよかったか?」


「そういうことじゃないわ。なんで私が藤森くんの好きな変態ゲームをしないといけないのかしら。それも、それってみんなでやるようなゲームじゃないはずよね? やはりあなたはバカなのかしら」


「テストじゃ俺の勝ちだけどな」


「あなた死にたいのかしら?」


「…………」


 あ、俺死んだかも。


 俺が殺されるのを覚悟しだした時、リビングの扉が開かれた。


「救世主!!」


「え、えっ? ど、どうしたの奏くん、そんなに慌てた顔して」


 凛を連れて戻ってきたあや姉が女神のように思え、俺は両手を広げ仰ぎ見るような姿勢で叫んでいた。そんな俺をあや姉は驚きながら見つめ返してくる。


 もうあや姉はリアルに女神なのではと思えてきたぞ。女神といってもいいくらい綺麗で美人だし、結婚するならこんな優しい人がいいな。


「あや姉、あや姉は俺の理想の奥さんだわ」


「えっ、ちょっと奏くんいきなりどうしたの!? しかもみんなの前で! う、嬉しいけど、でもでも私たち姉弟だし……!」


 あや姉が朱に染まった頬に両手を当てていやんいやんと顔を左右に振りだす。


 めずらしいな、あや姉があんなに照れるなんて。


「ちょっとお兄ちゃん! お兄ちゃんの奥さんは結衣さんでしょ! なんでお姉ちゃんにプロポーズしてるのかな!」


「そうよ! 結衣が奥さんとかどうでもいいけど、起こされたから何事かと思えばいきなりプロポーズだなんてどういうことよ!」


 あや姉とは別な理由で顔を赤くした結衣と凛が叫んでくる。


 なんで理想の結婚相手像を伝えただけでこんなに怒られないといけないんだ。理不尽だ。


「あや姉と結婚とかありえないだろ! 俺たち姉弟なんだぞ! なんで理想像を言っただけでプロポーズ扱いなんだ! って……え? プロポーズ?」


 俺は自分で口にしたことで過去の台詞を思い返した。


 結衣と凛がプロポーズだなんていうから俺もつられて口にしたけど、なんでそんな言葉が出てくるんだ? そんな台詞を言った覚えは……。


「あ……っ」


「やっとわかったようね、藤森くん」


「さ、西園寺。客観的に訊いていて、やっぱり俺のさっきの台詞ってプロポーズになるのかな?」


「ええ、それはもう熱烈な、とまでは言わないけれど、普通に考えれば十分そう思ってしまう内容だったわね」


「マジか……。すまんあや姉、なんか勘違いさせてしまったみたいで」


「……!?」


 俺が片手を顔の前に出し謝ると、あや姉は無言で露骨にショックな表情を浮かべた。それとは対極になぜか結衣と凛、それからるみかちゃんとひまり、そして西園寺まで安堵の表情となった。つか全員じゃねーか。


「どういう状況だよ、これ……」


 俺はそんな女子たちを見廻しながら呟いた。


 と、そこに本日何度目だよという呼び鈴が鳴り響く。まあ4度目なんだけど。


「あっ、私が出るね」


 すると沈んでいたあや姉が反応し、パタパタとスリッパを鳴らしながら小走りに向かっていった。


 今度はあや姉の友達か?


 誰だろう。俺はあまりあや姉や結衣と凛たちの交友関係に詳しくないからな。


「おまたせー」


「あや姉、誰だったんだ?」


「あなたの未来の恋人よ」


「璃緒先輩!?」


「こんにちは、坊や。お誘いの声が掛かったから来てみたわ」


「こんにちは璃緒先輩。ってそうじゃないでしょ!? なんで先輩が未来の恋人なんですか!?」


「あら、この前の話を忘れたのかしら? ちゃんと言ったはずよ。恋人になってもらうと」


「たしかに言ってましたけど……」


 あれって冗談だったんじゃないのか?


「私は言ったことを失敗したことがないの。あなたならどういう意味か解るわよね?」


「たぶんこれに関しては誰でもわかると思いますけど……。前も言いましたけど俺はまだ死にたくないんです。だから璃緒先輩とは付き合えません」


「今はそれでもいいわ。けど覚えておきなさい、坊やはお姉さんの物よ」


 パチンとウインクをしてきた璃緒先輩。


 その姿もやはり超絶美少女で、死がかかってなければすぐにOKするのになぁ。


 そんな璃緒先輩の姿よりも、俺は1つ気になる点があった。


「どうしてみんな呆けてるんだ?」


 西園寺まで口を半開きにしているなんて初めてのことだ。


「どうやら私の発言に驚いているようね。――ほら、あやめー、しっかりしなさい」


 おお、あや姉がほっぺ引っ張られてるところなんて初めて見たな。


 あや姉と璃緒先輩は俺が思っていた以上に仲が良いんだな。


「いひゃいいひゃい、痛いよー璃緒ちゃん」


「あやめがボォーとしてるからよ」


 あや姉の復活を機に他のメンバーも我にかえる。


 俺は璃緒先輩の恋人発言を追及される前に話を進めることにした。


「ほらほら、早く座りなよ。結衣と凛はこっちにおいで。あや姉も。璃緒先輩はそこに座ってくださいね」


 俺の指示でソファーに座っていた結衣と凛が俺の両隣りに移動し、あや姉は凛の隣。つまりひまりと西園寺が座っているソファーの対面側だ。そして璃緒先輩がるみかちゃんの隣のスペースに座る。


 つまり左右反転したL字型のソファーの並びに、ひまりと西園寺、璃緒先輩とるみかちゃんが座っている。ひまりたちと向き合う様にあや姉が座り、璃緒先輩たちと向き合う様に俺と結衣と凛が座っているわけだ。もっといえば、俺から時計回りで凛・あや姉・璃緒先輩・るみかちゃん・ひまり・西園寺・結衣の順番だ。


 テーブルを囲む形で座ることになったから、これではテレビゲームは難しいな。となると……。


「ボードゲームをしよう!」

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