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変態アニキとブラコン姉妹  作者: 神堂皐月
18/24

始まる生徒会

「坊や、そこの資料を取って頂戴」


「これですか? 璃緒先輩」


 球技大会での願い事騒動があってから1週間、俺は今生徒会室に来ていた。


 球技大会閉会式後、そのまま終業式が行われたわけなんだけど、その時に校長先生から俺の生徒会副会長就任が正式に認められたものとして発表されてしまった。桜蘭高校は生徒会長のみ全校生徒による投票で選ばれるんだけど、その他の役員は生徒会役員での相談で決めることとなる。つまり璃緒先輩しかいなかったわけだから独断で選べたということになるらしい。


 俺の頭の中がぐちゃぐちゃと混乱したまま夏休みとなってしまい、そして今、俺は休日だというのに璃緒先輩に生徒会室に呼び出されてしまい仕事の手伝いをさせられていた。


 いやーすっげぇビックリしたわぁー。結衣に抱き付かれながらギャルゲしてたら、いきなりあや姉経由で璃緒先輩に呼び出されるんだもんなぁ。


 同じクラスということであや姉は璃緒先輩の連絡先を知ってたんだな。もうっ、知ってたんなら紹介して欲しかったわん。


 生徒会室に着くと中では既に璃緒先輩が仕事をしていて、何をしたらいいか解らない俺は取り敢えず指示のままに行動しているわけだけど、やっていることといえばコーヒー出しと過去資料を探して渡してあげることだけ。


 俺いる意味あるのか?


 生徒会室には初めて来たけど、室内は広めの長方形で、奥には校長先生が使うような立派な机が1つあり、その机と扉の中間に長机が1つ。それを挟むように2人掛け用のソファーが2つ配置されている。片側の壁一面は資料用の棚や本棚がびっしりと置かれており、逆側の壁には絵画などが飾られていた。


 なんかまるで校長室みたいな雰囲気だな。というかこのソファーとか校長室の来客用より上質なんじゃないのか? こんなところを今まで1人で使っていたなんていろんな意味ですごいな。


「ありがとう坊や」


 璃緒先輩は俺から資料を受け取りながらコーヒーを口に運びつつ眼を通し出した。


 その様子すら絵になるほどの美少女っぷりに、俺はついつい見蕩れてしまっていた。


「ん? どうしたのかしら、坊や」


 俺の視線に気付いた璃緒先輩が可愛らしく小首を傾げてきた。


 気付いたというか、資料を渡した位置から一歩も動いていないんだから当たり前だよな。やだ恥ずかしっ。


「す、すいませんっ。璃緒先輩のコーヒーを飲む唇がすげープルプルしててほっぺもぷにぷにしてて瞳なんかキラキラしててつつきたくなってました」


 俺は照れ隠しに思ってること思ってないことを口早に伝えた。……全部思ってることだわ。


「ふふっ。坊や、唇や頬ならいいけど瞳をつついたらそれはただの目潰しだから止めてよ?」


「ですよね!?」


 璃緒先輩が微笑みながら優しく言った台詞に俺が慌てると、「それと」と付け足し璃緒先輩が言葉を続けた。


「私のことは会長か璃緒と呼んでと言ったはずよ?」


「うっ――」


 そう、璃緒先輩は俺が生徒会室に来ると役員の仕事内容をいろいろと説明してくれたんだけど、その最後に「坊やはもう副会長なのだから、これからは私のことを会長と呼んで頂戴。もしくは璃緒、と呼んでくれてもいいのよ」と言ってきたのだ。


 璃緒先輩を呼び捨てにする生徒なんて聞いたことがないしなー。3年生たちもさん付けで呼んでるんだもんな。いくら副会長になったとはいえ、急に俺が敬称も付けずに呼び捨てだなんて無理だわ。かといって会長と呼ぶのはなんか堅苦しすぎて嫌なんだよなぁ。


「これまで通り先輩呼びじゃダメですか? やっぱり急に変えるのは無理ッス」


「それだと他の生徒と違いがないじゃない。――ちなみに私のおすすめは『璃緒』よ」


「せめて会長のほうにさせてください!」


「ふふふっ、坊やの慌てる顔は何度見ても飽きないわね」


「……璃緒先輩は俺をおもちゃにでもしたいんですか?」


「なぜわかったの?」


「まさかの正解!? 嬉しくないけどね!?」


「ふふ、冗談よ。おもちゃにじゃなく恋人にしたいのよ」


「実は俺も先輩を恋人にしたかったんですよー」


「あら? 今のは驚かないのね?」


 少し意外そうな顔をする璃緒先輩。


 ははっ、いくら俺だってここまで解りやすい冗談くらい慌てずノッてあげれますよ。舐めないでいただきたい。


「弄ばれるだけの俺じゃないですよ、先輩」


「そう。ならちょうどよかったわ。では今から私と坊やは恋人関係ということでいいかしら?」


「…………」


 あっれー? なんか雰囲気が違うぞ?


 俺はそんな訳ないと思いながらも恐る恐る確認をしてみることにした。


「あ、あの……璃緒先輩? 冗談なんですよね?」


「冗談だなんて一言でも言ったかしら?」


「……――ッ!?」


 言ってないぞ!? 恋人の話題に変わってからは一度も冗談なんて言ってないし、ましてや否定の言葉すらないぞ!


 やばいやばいやばい! 超嬉しいけど、至極嬉しいけど、歓喜の涙を流しそうだけども! だけどダメだ! 仮に璃緒先輩と付き合おうものなら全校生徒の恨みをかって殺されかねないぞ! 今なら校長先生にも狙われそうだ!


 璃緒先輩はみんなのもので、みんなのお姉さんなのである。告白すら暗黙のルールでしてはならない。超絶美少女は時として争いを生むのだ。


「……璃緒先輩、スッゲー嬉しいんですけど、俺まだ死にたくないんで残念ですがお断りします」


 俺は勢いよく頭を下げた。


「そう、それは残念ね。だけど安心していいわよ坊や。ここまでが冗談なのだから」


「へぇッ!?」


「ふふっ。でも断られるということが人生で初めてだったから、お姉さん少しショックよ?」


「なんかすみません」


「この胸の痛みを治してもらうには坊やに本当に恋人になってもらうしかないかしら」


 璃緒先輩はそのご立派な胸を撫でながら言ってきた。


 なんか手つきがイヤらしいッス! そのテクニックを教えてください!


「それも冗談なんですよね?」


「ふふっ」


「どっち!?」


 璃緒先輩はただ優しく、そして楽しそうに笑っただけだった。

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