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変態アニキとブラコン姉妹  作者: 神堂皐月
1/24

入学式

挿絵(By みてみん)

「お兄ちゃん早くー。遅れちゃうよぉ」


「ちょっと待って、今行くから」


 今日から俺、藤森奏ふじもりそうは2年生になります。


 そして、妹たちは晴れて高校生デビューだ。


「待たせてごめんな結衣」


「全然大丈夫だよー、お兄ちゃん」


 ショートカットが肩より少し伸びた淡いピンク色の髪に赤眼、小柄な体躯の女の子。俺の妹の結衣ゆいと、


「待っててくれたのか、凛」


 自宅の玄関で待っていてくれたこの娘が俺のもう1人の妹のりん


 腰まで伸ばした金色の髪をツインテールにし、碧眼でややつり目なのが特徴的、これまた結衣と同じで小柄な体躯な女の子。


「か、勘違いしないでよッ。別に奏を待ってたわけじゃないんだから!」


「はいはい」


 凛の頭をぽんぽんと軽く撫でてやる。


「じゃ、行くか」


 俺と凛が歩き出すと、


「お兄ちゃんの隣は結衣なんだから!」


 結衣が俺の隣にいた凛を押しのけて、俺の手を握ってきた。


「あたしがどこを歩こうが勝手でしょッ!」


 今度は凛が結衣を押しのけようとしてくる。


「おいおい、俺を取り合うなよ。手はもう片方あるんだからさ」


「はあ? なに言ってんの」


 照れてるな、可愛い妹め。


「結衣は右手、凛は左手な。これでいいだろ?」


 俺は2人の手を握った。


「きもっ、触らないでよ」


 手を振りほどかれてしまった……。


「お兄ちゃん、結衣はお兄ちゃん大好きだからね!」


「ありがとう結衣」


 振りほどかれてしまった手で結衣の頭を撫でてやると、結衣は気持ち良さそうに眼を細めて、はにゃー、と気の抜けた声を出している。


 ――俺たちが通う私立桜蘭高校は、去年校舎を改装したばかりの学校で桜並木を通った先にある。


 この桜並木と、女子制服の茶色を基調としたブレザーにチェックのスカートが目当てで入学する生徒が多い。


 もちろん、その制服を目当てにしているのは女子だけではなく男子もだ。が、俺は決して制服目当てじゃないんだからなッ!


 桜並木を通り抜け、昇降口に入ると2人と別れる。


「じゃ、入学式2人のこと見てるからな」


 俺は2人の頭を撫でながら言うと――あれ? 凛のやつ顔が赤いぞ。


「どうした凛。顔が赤いけど」


「か、勘違いしないでよッ。別に照れてるわけじゃないんだから!」


「いや、俺は赤いぞとしか言ってないんだけど」


「――!?」


 ますます赤くなったぞ。大丈夫なのか凛。


「バカッ!」


「うご――!?」


 なんてことしやがる。いきなり腹を殴るなんて。危うくお兄ちゃんはそういうことをされて喜んじゃう性癖に目覚めるところだったぞ。


 しかも、そのまま先に行っちゃうのか。


 ふっ。凛のやつ、ツンデレたな。


「お兄ちゃん大丈夫?」


「ああ、なんとか。結衣はあんなことしないよね」


「当たり前だよ。結衣はお兄ちゃんが大好きだもん」


 満面の笑みをむける結衣。


 やっぱり、持つべきものは可愛い妹だな。


「でも、浮気したらいくら結衣さんでも許さないんだからね!」


「付き合ってましたっけ!?」


 結衣は両手の人差し指で、頭の上に2本の角の様なものを作っていた。


「なにそれ、鬼のつもりか? 結衣は可愛いなぁ」


 俺は思わず頭を撫でていた。


「えへへっ」


 まだまだ子供だなぁ。


「じゃあね、お兄ちゃん。少しの間別れちゃうけど浮気はダメだからね」


 そう言って俺の腕に抱き付いてくる結衣。


 ば、馬鹿な! あんなにロリなくせに確かに感じる柔らかな双山。


 前言撤回だ! 結衣はお兄ちゃんの知らないうちに立派な女の子になっていました!


 ──う、マズイ。俺のジョニーが。


 俺は思わず前のめりになった。


「どうしたのお兄ちゃん?」


「な、なんでもないよ。ほら、早く行かないと遅刻するぞ」


「あ、本当だ。それじゃお兄ちゃん、また後でね」


「ああ、またな」


  結衣は手を振りながら走っていった。


「やっと行ったか」


 それにしても危ないところだった。もう少しで俺のジョニーが男に目覚めるところだったぜ。


 俺は2階にある自分の教室へと足早に向かった。


 扉を開けると――


「待ってたぜぇ、かなでー」


 アホがいた。


 俺が扉を閉めようとするとアホは手で制してきた。


「ま、待てって悪かった」


「かなでって言うなって何度も言ってるだろ」


 このアホは1年生の時にクラスが同じだった七瀬蓮ななせれん


 そうだった、2年生になってもクラスが同じということは来年も同じなんだ。


「そんなことはどうでもいいんだよ」


「そんなことって、お前人の名前をなんだと──」


 ガシッ。


 む、馴れ馴れしく肩なんか組みやがって。


「そんなことより見たぞかなでー。今朝の可愛い子たちは誰なんだよ? お前にはパーフェクトなお姉様がいるのに」


 お姉様? ああ、あや姉のことか。


 藤森あやめ──透き通った綺麗な黒眼に、傷み1つない黒髪をストレートに腰まで伸ばし、モデル顔負けのスタイルの持ち主。


 あや姉は俺の1つ年上の姉で、この学校の3年生だ。


 確かに美人だしスポーツ万能で、成績だって良い。


 だけどみんなはあや姉のせいで死にかけたことがないから、そんなことを言えるんだ。


「あや姉は関係ないだろ。可愛い子ってのは結衣と凛のことか? あれは俺の1つ下の双子の妹だ」


「へぇ、結衣ちゃんと凛ちゃんっていうのか。後で紹介してくれよな!」


「嫌に決まってるだろ。お前なんかに誰が紹介するもんか」


「あやめさんだけでは飽き足らず、結衣ちゃんと凛ちゃんも独り占めするつもりか、このシスコン野郎!」


「誰がシスコンだ!」


 そんなことを話していると、チャイムの音と同時にみっちゃんが教室に入ってきた。


 みっちゃんというのは、俺が1年生の時からの担任教師で、親しみやすい女性だ。


 ちなみに、現在彼氏募集中。


「みなさん、おはようございます」


「みっちゃんおはよう。あれ? いつもと化粧違うね」  


「はよー。つーか、みっちゃん気合い入り過ぎ!」


「え、えっ!? そ、そんなことないよぉ」


 クラスの誰かがそんなことを言うと、みっちゃんは両頬を抑えながらもじもじとし始めた。


「と、とにかく、これから入学式が始まるからみんな体育館に移動してください」


「「「はーい」」」







『平成◯◯年度、入学式を始めます。新入生、入場』


 教頭先生が告げると、ぞろぞろと新入生が入場してきた。


 お、結衣と凛も入場してきたな。あいつら同じクラスになったのか。


 ──あ、凛と眼が合った。


 俺は小さく手を振った。


(おーい)


 あれ、今眼を逸らしたよな?


 照れてるんだな、可愛い奴だ。


「なあなあ、今のって今朝の子だよな? どっちなんだ?」


「……今のは凛だよ」


「あれが凛ちゃんかぁ。モテるんだろうなー」


「……」


 蓮のやつ顔がニヤPけててキモイぞ。


 やっぱりこんな野郎に大切な妹を紹介できねー。


「なあなあ」


 俺がジト目で蓮を見ていると肘で突いてきた。


「……なんだよ」


「あれは結衣ちゃんだよな!」


 ん、結衣──ホントだ。


 結衣のやつキョロキョロしていて落ち着きがないな。


 あ、眼が合った。


(お兄ちゃーん!)


 バカっ、あんなに大きく手を振っちゃって。


「かなで! 今の絶対オレに手を振ってたよな!?」


「いや、結衣はお前のこと知らないし……」


「い~や、絶っ対にオレだね。決めた。オレ、結衣ちゃんを彼女にするわ!」


「決定事項!?」


 なんてこった。よりによって蓮に狙われるとは。


「ということで今日かなでの家に行くからな」


「勝手に決めんな!」


「あやめさんは元気かなー」


「聞けよっ!」


 ――新入生の入場も終わり、校長先生の話になる。


 ちなみに、俺は校長先生の長たらしい話が嫌いだ。みんなもそうだろ?







『一同、ご起立ください。平成22年度、入学式を終わります。一同、礼』


 新入生は退場し、しばらくした後俺達も教室に戻りホームルームも終わる。


「みんな、明日から普通に授業がありますからね。お弁当を忘れないように」


「みっちゃんじゃないんだから誰も忘れないよ」


「「「あはははっ」」」


 朝の時の1人がそう言うと、クラスは爆笑だった。が、俺1人は違う。


 俺は萌えたね。だってみっちゃんは眼鏡をかけているんだけど、その眼鏡が少し下にズレ落ちて、涙目でうぅぅ~、って唸ってるんだぜ?


「私はお弁当も作れるし忘れもしません」


 うぅぅ~、と唸った。


 やばい、萌える。


 いかんいかん。相手は仮にも先生だ。──でも、ギャルゲなら攻略対象でもおかしくないから萌えてもいいよね?


「それじゃあ、みなさんさようなら」


 今日もやっと終わったか。


 さて、これからどうするかな。


 とその時、ポケットの中で携帯が震えた。


 メール? 誰からだろ。


 From 結衣

 お兄ちゃん! 放課後、部活の見学に行きたいから結衣のクラスまで迎えに来てね(^O^)/


 部活か。だったら凛も誘ってみるか。


 メールより電話の方が早いよな。


『……なに?』


 ――!? 出るの早ッ。


「凛はもう部活決めたのか?」


『まだだけど……それがなに?』


「あー、これから結衣と部活見学行くんだけど、凛もどうだ?」


『……行かない』


 なんか凛のやつ元気ないな。


「もしかして、まだ誰ともまともに話しできてないだろ?」


『っ!? いきなり何よ!』


「で、結衣は人気者なわけか」


『────ッ!?』


 図星だな。まあ無理もないか。凛はあんな性格だしな。


 結衣は誰とでもすぐ仲良くなれるのになー。双子なのにどうしてこうも性格が違うんだろうか。


 仕方ない。結衣には悪いけど今日は凛を優先するか。


「凛、やっぱり今日は俺と凛の2人な」


『えっ!?』


「決まりな。玄関で待っててくれ」


『なっ、ちょ、ちょっと、勝手に決め──』


 ブツ、ツーツーツー。


 勝手に電話を切る俺。


 最後になんか言ってたけど、まあ大丈夫だろ。


 結衣にこのことを連絡しないとな。


 ──ブーブーブー。再び震える俺の携帯。

 

 おっ、ちょうど結衣からじゃん。


「結衣か。どうし──」


『遅ぉぉぉおおぉぉいっ!!』


「――――!?」


 耳があぁぁッ!? 


 結衣のメールからまだ10分くらいしか経ってないのに遅いだと!? 結衣の時間間隔がわからん。


『お兄ちゃん、結衣すっごくずーっといい子にして待ってたのに今どこでなにしてるのっ!?』


「そのことなんだけど結衣、ごめん。今日は一緒には行けないんだ」


『――…………!?』


 何かが今崩れ落ちる音がしたような気がする。


「……結衣?」


『お兄ちゃん……それ、本当?』


「あ、ああ」


 結衣が虫の息のようだ。


『……もういい。結衣帰る』


 やばい。結衣を泣かせたか?


 何か他の話題を振らなければ。


「そういえば今日、友達の蓮ってやつが家に遊びに来るかもしれないんだけど、そいつ結衣に惚れたみたいでさ、彼女にするとか言い出すんだよ」


『……お兄ちゃん以外どうだっていい』


「え? よく聞こえなかった」


『お兄ちゃんのバカァァァー』


 ――電話を切られてしまった。


 怒らせたのかな。普通自分を好きだっていう人がいたら悪い気はしないと思うんだけどな。


 んー、ギャルゲと違ってリアルの気持ちは分からない。


 それより凛の所に行かないと。


 俺は足早に昇降口に向かうと、まだ幼さが残る金髪の美少女がそこにはいた。……というより、俺の妹だけど。


 凛は俺の足音が聞こえたのか、こっちへ振り向いた。


 その姿があまりにも可愛くてつい見蕩れていると、


「遅い! あたしを呼び出しておいて遅刻なんて何様のつもり!?」


 俺の前まで怒りながら凛が来た。


「え? 何様って凛のお兄ちゃんのつもりだけど?」


「な──っ! そんな真顔で言われたら言い返せないじゃん……」


 凛は隣まで来ると、俺の制服の袖を掴んで、


「言われた通り来てあげたんだから、ちゃんと案内してよね……!」


 頬を紅潮させながら少し俯きがちに言ってきた。


 なんだかんだ言って凛のやつ、やっぱり見学に行きたかったんだな。


 うんうん。素直なのはいいことだ。


「そんなに楽しみだったのか」


「か、勘違いしないでッ、別に奏と一緒に行くのが楽しみだったわけじゃないんだから」


 さらに顔を赤らめて怒ってきた。


「俺は見学に行くのが楽しみだったのかって訊いただけで、俺と一緒に行くのが楽しみなのかなんて訊いてないぞ」


「────!?」


 凛は茹でタコの様に真っ赤な顔をして俯いてしまった。







 それから俺達は運動系、文化系と一通り部活を見て廻った。


 その間、凛はずっと俺の袖を掴んだままであまり話し掛けてこなかった。


「一通り見たことだし、帰るか」


「……うん」


「ほら」


 俺は凛に手を差し伸ばした。


「な、なに」


「いいからいくぞ」


 俺は凛の手を引っ張り歩き出す。


「────っ!?」


 凛は顔を赤らめたまま下を向いてしまった。


 ……。


 …………。


 ………………。


 なんだこの見事なまでの沈黙は。


 さすがにこのままずっと家まで沈黙はとてもじゃないけど辛いぞ。


 いくら兄妹だからって手を繋いで下校なんて普通はしないだろうし、客観的に見ればカップルに見えなくはないはずだ。


 と、俺が悩んでいると、


「……今日は……ありがとう」


 凛から話し掛けてきた。


 バカな! あの凛が人に言われずに自分からお礼を言うだと!?


「今日……本当は結衣と行くはずだったんでしょ?」


「なんで知って──」


 しまった、口が滑っちまった。


「……放課後になってすぐに結衣が携帯を使ってるの見て、あー奏に連絡してるんだぁってすぐにわかったの」


 たしかに、あのメールの早さには驚いたな。


「あたしには結衣みたいに友達はいないし、奏は結衣に取られちゃうし……1人で帰ろうと思った時に電話がきて……。それで奏から誘われた時はすごく嬉しくて……でも、結衣もいるんだって知ってたからあまり乗り気じゃなかった……」


 いつも感情をあまり表に出さない凛がここまで自分から話すなんて……。


「それでも奏を待ってて……1人で奏が来た時、あたし混乱しちゃってすごい偉そうなことを言っちゃったけど……すごく嬉しかった。結衣よりあたしを選んでくれたんだって」


 こんな展開俺がやったギャルゲにはなかったぞ。


 下手なことを言ってまた凛を怒らせたくないしな……。


 どうする俺。どうする! ……どうしようみんな!?


 ここはストレートに――


「そりゃあ凛も大事な俺の可愛い妹だからな」


「────ッ!?」


 凛の顔が真っ赤になった。


 やべっ、怒らせたかな。


「か、勘違いしないでよねッ! 別に今日のお礼を言ってるだけで、奏のことを好きとかそんなんじゃないんだから……」


 最後の方はまるで自分自身に言い聞かせているみたいに声が小さかった。


 そんな凛を見ていたら俺はつい――


「な、なに――!?」


 凛の頭にポンッと手を乗せていた。


 そして、


「俺は凛のこと好きだからな」


 笑顔でそう言っていた。


 もちろん、妹としてだけど。


「ば、 ばばば、バッカじゃないの!? い、妹のあたしに、す、好きって……!?」


 凛は顔を真っ赤にして口をぱくぱくと開閉し、両手は突き出して何かを否定するかの様にばたばたと振りだした。


 凛のヤツなんでそんなに驚いてるんだ? 兄なら可愛い妹を好きで当たり前じゃないか。ねぇー?


「あ、あたしだって、奏のこと嫌いじゃないけど……でも」


「凛ッ」


「はいッ!」


 なんで敬語?


 そんなことより――


「あれって……結衣、だよな?」


 結衣が誰かと俺達の前を歩いているのだ。


 しかも、俺以外の男と。


「へ? 結衣? ──たしかに結衣だけど」


「行くぞ!」


「え? ちょ、ちょっと」


 俺は凛の手を掴んでぐいぐいと引っ張り歩く。


 許せん! 俺の可愛い妹と仲良く帰っているなんで現実、お兄ちゃんは許せません!


「結衣っ!」


「お兄ちゃん!? ……と、凛。どうしてこんなところにお兄ちゃん達が?」


「そんなことはどうでもいいんです! お兄ちゃんはこんな男は認め……ま……せん?」


「よぉー、かなで」


「蓮!? どうしてお前が結衣と一緒なんだよ!」


 結衣と一緒にいたヤツは俺の親友でした。


「かなでの家に向かってる途中に結衣ちゃんと会ってさ。だから口説いてたとこ」


「口説くなよ! よれより結衣、なんでまだこんなところにいるんだ? すぐ帰ったんじゃなかったのか?」


「…………」


 なっ、結衣が無視だと!?


 無視されたことなんて無かったのに……。


「結衣、今日のことはお兄ちゃんが悪かったから、そんな変態のところじゃなくてお兄ちゃんのところへ戻っておいで!」


「おいかなで。その変態ってまさかオレじゃないよな?」


「…………」


「オレかよっ!」


 俺は変態を無視し続けた。


 ……変態って俺じゃないよ?


「お兄ちゃんはずるいよ……。じゃあ……今度の日曜日、結衣とデートしてくれる?」


「え──っ!?」


 日曜日だと!? 日曜日はエロゲの発売日だというのに。


 1・デートをする。

 2・デートをしない。

 3・この場を逃げる。


 どうする俺、どうする!


「……イヤ?」


 くっ、そんな涙目で見つめられると……。


「わ、わかった、日曜日な。ただし、場所はお兄ちゃんが決めるからな!」


「お兄ちゃんと一緒なら結衣はどこだっていいよ」


 目尻に涙を溜めたまま微笑む結衣。


 くそっ、なんて可愛いんだ。


 まあ、取り合えずこれでゲームは買えるな。


 あとは──


「奏のバカっ!」


「いだっ!?」


 凛のヤツいきなり脛を蹴るだけ蹴って帰るだと!?


「お兄ちゃん大丈夫?」


「な、なんとか……」


 俺が涙目で答えると、結衣が隣にしゃがみ込み脛を擦ってくれた。


 な、なんていい子なんだ。


 なんだかお兄ちゃん泣けてきたよ。


 脛を擦りながら「痛いの痛いの飛んでいけー」なんて言っているし。


 結衣……そんなことをしても痛いものは痛いんだよ?


 俺が温かい眼で結衣を見ていると――


「かなで、結衣ちゃんとイチャついてないで凛ちゃんを追ったらどうだ?」


 たしかに凛をなぜか怒らせてしまったみたいだしな。ここで凛を追わないと後で何をされることか……。


「ありがとう結衣。お兄ちゃんはもう大丈夫だから」


 俺が結衣の頭を撫でてあげると結衣は気持ち良さそう眼を細めた。


「蓮、結衣のこと後は任せてもいいか?」


「任せろ!」


 蓮が親指をグッと立てた。


 連の返事を確認した俺は、2人をあとにして凛の下へと走り出す。


 全力で走り続ける俺。


 でもなんで凛は急に機嫌が悪くなったんだ?


 結衣に会うまでは機嫌良かったと思うんだけどな。


 いや、そういえば今日は1日中様子が変だったぞ。


 顔もずっと赤かったし。


 もしかして──風邪か!


 それにしても凛のヤツいったいどこまで行ったんだよ。


 インドア派の俺には全力疾走はキツいぞ。


 ──あれは!?


「凛ッ!」


「奏!? ──なんでいるのよ」


 凛のヤツまた顔が赤くなったぞ。


 やっぱり風邪か。


 もっと早く俺が気付いていれば……。


「ごめん凛! 俺が悪かった。何も知らずに」


 風邪なのに連れ回して。


「謝ったって許してあげないんだから」


「本当にごめんっ!」


「…………本当にそう思ってる?」


「ああ思ってる。なんでもしてやるから」


 看病なら任せとけ!


「……じ、じゃあ……土曜日、あたしに1日付き合って」


「え?」


 付き合う? 看病じゃなくて?


「だ、だから……あたしともデートしなさいって言ってるの! ──か、勘違いしないでね!? ただの暇潰しなんだから!」


 「そうよ、これはただの暇潰しなんだから……」と、小さく付け足す凛。


 よくわからないけど、それで凛が元気になるんなら、


「分かったよ。土曜日な」


 なんでもするって言った手前断るわけにもいかないしな、仕方がない。


 それにしても、結衣と凛が同じ学校に通うことになっただけでこんなに疲れるなんて。


 やっていけるのかな、俺……。

登場キャラクター紹介


家族

・藤森奏(主人公)


・藤森凛(双子の妹)

 148cm B75(Aカップ) W56 H78

 

・藤森結衣(双子の姉)

 148cm B87(Eカップ) W56 H78


クラスメイト

・七瀬蓮(親友)



次話6日23時更新予定

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