番外編:訪れた異世界での生活・後編
私がメニルミアでミユと過ごすようになって、一週間が経った。
「お姉ちゃん、あれ取って」
「うん、わかった」
ミユは今、全神経をある作業に熱中させている。
この世界のお金の名称は輝晶-こうしょう-と呼ばれると聞いた。
洞窟で採取したり、輝晶を好むハーツイーターを倒すことで手に入るらしいけど、私たちにそんなことは到底できない。
そこでミユは外で拾えるような綺麗な結晶を用いてアクセサリーを作ってそれを売りに出しているらしい。
評判はいいらしく、生活費くらいは稼げるんだとか。
あとはミユの幼さに反してのしっかりとした性格からか、近所の人が食料を分けてくれるらしく、それなりにしっかりとした生活を暮らしていたらしい。
ちなみに私もミユにアクセサリーの作り方を教わり始めたけど、その出来はとてもではないが良いものではない。
本当は今の所生活費は十分にあったのだけど、私の服を買うためと言ってミユはまたアクセサリーを作り出した。
この世界では服は比較的高価なもので、なかなか買うことができないらしい。
服の素材がなかなか手に入らず貴重なんだとかで。
一応ミユが使わなくなった古い布などを用いてちょっとした服を作ってくれたのだけれど。
ミユに頼りっきりなのは悪いし、自分の服ぐらい自分で買えるようにしなくちゃと思ったのはいいけれど、一週間程度では売り物にできるレベルには至らなかった。
「ミユ、夕ご飯の支度してくるね」
「うん、お願い」
一週間で簡単な料理だけなら一応作れるようになった私は、昨日から夕食の準備を任されている。
家事までミユに任せていたらいつか倒れてしまう。それはダメだと思って家事は一生懸命覚えてる途中だ。
今日はみそ汁に焼いたお魚、そしてご飯という献立、なんか和風だ。
食事に関しては私の記憶から形成されているのか、現実とは変わらないものだった。
多分、小さい頃の私が設定しなかった部分に記憶やイメージといったものが左右されてるのかもしれない。
◆
ミユが寝て、少し経った頃。
体を洗いたい思った私は風呂場へと向かおうとした。
衣服を脱ごうとすると、ポケットの中に物を入れていたことを思い出す。
「…あ、忘れちゃいけない」
私はポケットから綺麗な結晶を取り出す。
この世界の結晶というものは基本的に透明だ。
価値は現実で言えばその辺の石と変わらないらしい。…こんな綺麗なのに。
でも私が拾ったのは、どこにでもある透明の結晶とは異なり、翡翠色に輝くエメラルドのようなものだった。
この街で私たちがアクセサリーを売りに出してる店の人に話を聞くと、見ただけではなんとも言えないけど、本物の宝石ならとても高く売れるということを聞いた。
服も買えるし、ミユに相談したら間違いなく売ったほうが私のためって言うと思ったけど、私はこれをアクセサリーにしてミユにお礼としてプレゼントしたいと考えている。
「…そのためには早くアクセサリーを作れるようにならないとね」
風呂から出た後、私はこっそりとアクセサリー作りの練習をした。
◆
「お姉ちゃん!次これ着て!」
「え?うん、いいけど、そろそろ決めない?」
「お姉ちゃん、スタイルいいんだからちゃんと考えて買わないとダメだよ?」
ミユの献身的な行動の結果、輝晶が溜まった私たちは衣服の店へと向かった。
この世界の服は現実のものより少し違っていて、この世界のものなんだなと思わせるような、なんというかファンタジーが基調となっているように思わせるデザインだった。
おそらくこれは私がイメージしていたこの世界の衣服なんだろう。多少現実感が漂うのは記憶の方からも形成されているからだろうか。
適当に服を探していると、ミユは次々といろんな服を勧めていた。
可愛らしいフリルのついた服とか、少し大人っぽい服とか。
何着も勧めてきたあたりで私は止め始めたけど、なかなか止まらない。
…早く決めないと色々まずい。
そこで私が手に取ったのは、一番最初から目をつけていた薄緑のシャツとスカートだった。
「ミユ、たくさん持ってきてくれるのは嬉しいけど、私生活のことも考えてこの服にするよ」
「そっかー、もっといろいろ着せたかった…」
本気で残念そうな顔をすると良心が痛むけど、これも自分のためとなんとか言い聞かせた。
◆
「カノンお姉ちゃんならもっと大胆なのでも良かったと思うんだけど…」
「ミユ…さすがにそれはちょっと恥ずかしいよ」
本音で言っているようなミユに圧倒される。
これほどミユが積極的なのは初めてなように感じた。
「だってカノンお姉ちゃん可愛いしスタイルいいし何着ても似合うんだもん、すっごく羨ましいよ」
「そ、そういうミユだって可愛いじゃない、私よりもずっと髪の毛とか可愛く結わえてるし…」
そんな会話を外でも家でもしているうちに、気がつけばもう夜になっていた。
時間が経つというのは早いものだ。
この世界に来て、一週間が経って。
まだわからないことが多いけどこうして楽しい日々を過ごしてる。
それもこれもミユのおかげ。
「ミユには感謝しないと…」
何もわからない私を導いてくれている、そのことは私にとって精神的にとても救われている部分だった。
「感謝の気持ちをしっかりと表すためにも、早くアクセサリーを作れるようにならなくちゃいけないよね」
そうしてまたアクセサリーを作る練習を始めた。ここ数日は毎日のように練習をしている。その甲斐もあってか、1日1日少しずつだけど見栄えもよくなってる気がする。
この調子で頑張らないと。
そんな生活がもう少し続いて、ここで暮らし始めてから二週間が経った。
◆
「うんうん、お姉ちゃんすごく上手くなってるよ!これなら売り出せる!」
「本当?それなら嬉しい!」
ついにミユに認められるくらいにまで上達したようだ。
あんなに上手に作れるミユに認められたんだから、自分を褒めていいだろう。
「ミユのおかげ。私もここでの生活に慣れてきたことだし、今後は私もたくさん手伝うよ」
「そんな、努力したのはお姉ちゃん。
私はただそのお手伝いをしただけだもん。
…でもそう言ってくれるのはすごく嬉しい!
ありがとう」
…もしかして渡すならこの時かな?
実は例のアクセサリーは先日完成している。
個人的には申し分ない出来栄えだ。
このタイミングを逃すと返って渡す時に恥ずかしくなりそうだと思ったので、私はアクセサリーを渡すことにした。
「ミユ、これ。感謝の気持ち…受け取ってほしいの」
「…!これ凄くいい宝石…。これ、お姉ちゃんが?」
「うん、拾ったの。売ったらもちろんたくさんお金もらえるのかもだけど、私はミユにこの宝石を使ってアクセサリーを作ってあげたくて」
何とか渡せた、流石に少し緊張したみたいだ。
胸に手を当てなくてもわかるくらい、ドキドキしているのがわかる。
「ありがとう、カノンお姉ちゃん。
大切にするね!」
ミユの笑顔を見ると私もなんだか嬉しくなる。
…私は昔のことを少し思い出した。
あまり思い出したくなかったけど。
ミユは今幸せなのかな。だとするなら、私はすごく嬉しい。
だって私は…。
そうして、昔のことを思い出そうとしていると、ミユが私の顔を覗き込んできた。
「お姉ちゃん、今日一緒にお風呂入ろうよ!」
「え、お風呂?」
「こういう楽しい時は一緒に入ったほうが楽しいよ?」
ミユが元気そうにしているのを見ると、何だか気持ちが晴れやかになってきた。
この世界に来て、私はミユと出会うことができてよかったと思う。
よくわからないことだらけでも、一緒にいるだけでこんなにも支えてくれる。
これから先、どんなことがあるかわからないけどここでの想い出は私は忘れることはないだろう。
例えこの先、どんな辛いことが待ち受けていても。
後編でした。
本当はもっと入れるつもりでした。
例えばアクセサリーを作るために必要な材料集めだとかハーツイーターの出現によるピンチだとかそういった描写を。
ただ上手く表現ができなかったことと、今後の展開を考えた結果、あまり本編に当たり障りのない明るいストーリーのままで終わらせようとした結果、かなり短縮することになりましたがこういった形で終わることにしました。
次回からは本編に戻ります。
悲哀、カノンと同じ姿をした悲しみの感情がカノンの前に現れました。彼女の目的は。そしてカノンと同じ姿をしているその訳とは。
個人的にもかなりすっきりとした気持ちでストーリーが作れない作品だと思っています。
混合世界以上にややこしい設定やキャラの少なさなどの制限がどうしてもストーリー選択の幅を狭めてしまっているからです。
とは言え目的ははっきりしていますし、そこに至るまでのストーリーはなんとなく完成はしています。
個人的には難しく、好みのストーリーに仕上げきれないという実力不足に悩みながらも書いていますが、ぜひこれからも読んでくださると励みになります。
それではまた本編で。




