番外編:訪れた異世界での生活
「メニルミア」という小さな街。
この不思議な世界にたどり着いて、私が初めて訪れた街。
ここで出会った、私の記憶に残っている友達のミユという女の子と姿形が全く一緒の女の子に出会った私はこの世界がどんなものなのかということに勘づき始めた。
この世界の住民は私の記憶から作られた存在なのではないかということに。
それを証拠に、ミユの両親の姿を知らないからか、この世界のミユは両親が存在していないことになっていた。
私の記憶に残っているミユはまだ小さい頃の話。まだ小さいのに彼女は1人で生活しているということになる。
責任を感じたのか何なのか、私はこの世界の知らないことを教えてもらう代わりにミユの手伝いをすることを決意した。
これは、そんなときのお話。
私がハーツイーターの手によってミユと離れ離れになるその間のお話。
◆
「それじゃあ、カノンお姉ちゃんはこの辺の常識は全くわからないってこと?」
「う、うん。正直、まったく…」
私はこの世界に訪れたきっかけは隠しつつ違和感のないようにミユにこの世界について知らないということを伝えた。
「私はこの街に住む人たちに色々教えてもらったからね〜。
この街に人がたくさんいて良かったよ!」
幾つかミユの話を聞いてわかったこともある。
ミユは一応両親がいたということになっている。
それに、以前からこの世界で暮らしていたかのようなそんな物言いをすることがある。
この世界はこの世界として時間が流れている、ということになるんだろうか。
流石にこれ以上のことは踏み込めなかったが、ある程度情報を得ることはできた。
「……あ」
人は空腹だとお腹の音が鳴る。
それはこの世界でも変わらないみたい。
「…ごめん、まだ今日は一度も食事してなくて」
あはは、と何とかごまかす。
何で誤魔化そうとしたのかは自分でもわからなかった。
「じゃあご飯にしましょ!お姉ちゃん、料理はできる?」
「え、えっと…具材を切るぐらいなら…?」
心を壊してしまってから何もやってなかった私は自分の不甲斐なさに少々嫌気がさした。
…これは少し家事を覚えないと。
◆
「ふぅ、美味しかった。
ミユは料理もできるんだね」
「うん、そうじゃないと生きていけないからね。お姉ちゃんも一緒に頑張ろう!」
うん、と返事をしながらも先ほどまでの出来事の記憶が色濃く残っている私にはそのことは掘り返してほしくなかったなと思ってしまう。
何故なら具材を切ることすらままならなく、すべてミユに任せてしまったからだ。
明らかに年下なのに、どう考えてもミユの方が頼り甲斐があることに幾度となく自分に嫌気がさす。
「…お姉ちゃん、お風呂入ろう!
女の子の嗜み、体は綺麗にしないとね!」
「…うん、そうだね」
お風呂か…。
そういえばここに来てからお風呂には入ってなかった。
というか心が壊れてからまともにお風呂なんて入ってなかっただろう。
食事もまともに摂ってなかった気すらするのだから。
手際よく、既に入れる準備が整っていたミユは私を先にお風呂に入れてくれた。
よくある、小さな風呂場でなんとなく私のイメージと合ってたことから、ここもやはり私の記憶から象られたところなのだろう。
「………ふぅ」
ようやく落ち着けたような感じがする。
いきなりこんな世界にやってきて、変な生き物がいて。
記憶にある姿とそっくりなミユと出会ったり、家事がほとんどできなくなってることを思い知らされたり…。
髪を洗い流してふと下を見ると、明らかに女性らしい体つきになった自分の姿が目に入る。
「…私の身体ってこんな成長してたんだ。
でもあんなことになってたからまともに栄養なんて取れてないはずだけど…」
そんなことを思った。
流石にこれは考えもつかないこと。
完全にただの予想になるけど、これは本能の私が望んでいる姿になるのだろうか。
生きたいと望む本能が、意思が私をこの姿にしているんじゃないか、と。
「…まぁそんなことを考えても仕方ないか。
この世界が私の記憶、イメージから象られた世界かもしれないというのに、私だけそんな都合よく成長できるわけない、よね」
…いや。この予想は案外本当かもしれない。
たった今、記憶、イメージと言った。
この世界が象る条件に優先順位があるとすれば…?
まだいろいろなことがわかってないけど、記憶とイメージ、どちらかに優先順位があれば。
例えばミユは成長した姿ではない、私の記憶から作られた姿であることが推測できる。
私は、今の私の姿をよく知らない。
この風呂場も記憶ではなく風呂場に対する私のイメージから作られてるような気がする。
なら、私の今の姿はイメージからなのかも…。
「…はぁ、わからないことが多すぎるよ…」
私はため息をつきながら、風呂場を後にした。
◆
風呂から出てくると、ミユが洗濯をしていた。
「あ、お姉ちゃん。お姉ちゃんの服どうしよう…。洗ってから気づいちゃったんだけど私の服じゃサイズが…」
「いつもの感覚で洗っちゃったんだね。
大丈夫だよ、乾くまで待ってるから」
「ごめんね、ありがとう!それじゃ、私も入ってくるね」
…とは言え今の姿はとても人には見せられないのは間違いない。
ミユぐらいの、10歳くらいの女の子が使うようなタオルのサイズは私には合わないから巻くことも出来ず、結局裸で過ごすようなものだ。
確かに恥ずかしい気持ちはあるけど、これもミユに「自分が家事をしなくてはいけない」と思わせてしまった私には責任がある。
もし自分で出来るならミユにそう言って服をそのままにしてもらえただろう。
服は今後着れるのを増やすにしても、家事は絶対に覚えよう。今日の出来事で私はそう誓った。
◆
「ごめんね、お姉ちゃん。
本当に…」
「もう、そんなに謝らなくても大丈夫だって」
割と真剣に落ち込んでるように見えるミユは何度も私に謝ってくる。
「でも、ほら、やっぱり女の子同士でも恥ずかしいと思うし…」
「逆に気にしないほうが私も恥ずかしくならないから、ね?」
「うん…」
そのままこの空間に沈黙が流れる。
一応私の服は室内のエアコンで乾かしてはいるが、当分乾きそうにない。
服の件、ミユが買ってくるという提案もあるにはあった。
とは言え、ミユは私の服のサイズが分からないし、実際私も体が成長して自分の服のサイズがよくわかっていない。
そんなわけでミユが一層責任を感じてしまってるわけで…。
「明日、買い物に行こう?
この街のことも教えて欲しいし、頼りになるのはミユだけだから」
そう言って私はミユに少しでも違う話題を振ろうと無理やり話題を変える。
「う、うん。そうだね、お姉ちゃんに教えてあげないと!」
ミユはそう言って何とか自分でも気持ちを変えようと切り替えたのだろう。
10歳前後のこの年齢でそれができるなんて…ミユの大人な精神が羨ましくなった。
「…ん〜」
それから少し時間が経って、眠そうなあくびをミユが出した。
時計を見やると既に時間は夜の10時を過ぎている、子供なら寝るべき時間だろう。
…時間の概念は現実と同じなんだ。
「ミユ、服のことは大丈夫だから寝ていいよ」
「…ううん、ごめん、先に寝るね」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってミユは寝室の方へと足を運んだ。
…こういうところはまだまだ子供なんだね。
「さてと、そろそろ服は…」
少し乾いてきたけど着るにはまだ時間が必要であった。
「あはは…まだ着れないか」
とりあえず、この世界のこと。何もわからない私にミユは教えてくれるって言ってくれた。
私はこの世界のことを知って、どうすればいいのかを考えないといけない。
心を壊してしまって…何も出来なくなってしまった私は家事も含め、この世界のこともたくさんのことを覚えないといけない。
どうするかは決まった。
「明日から、頑張らなきゃ」
それからまた少し時間が流れ、私は服を着て眠りについた。
サービス回、というやつです。
アニメとか漫画にしたら肌色成分満載でしょう。
たまにぐらいならサービスを入れてもいいだろうなという考えからこの展開になりました。
今回は前編で、後編が終わり次第再び本編に戻りますが、少し経った後でまた番外編を挟もうと思います。
混合世界は永遠に、では番外編的なストーリーでも本編に組んだりする予定ですが、幸せを掴むために-拒み続ける本心-では明るい雰囲気のストーリーや設定をまとめるような話をする場合、番外編という形で盛り込もうと考えてます。
サービス回は当分来ない予定ですね。
それではまた、後編で。




