薄明かり、君の吐息
「薄明り、君の吐息」
リズミカルに靴音と息の音をさせながら走っていく。
「なあ、なんでこんな時間にまたランニングなんてするのさ。」
「あんたが運動しよう~、なんていいだしたからでしょ。」
「そ、そりゃそうだけど。」
確かに言い出したのは僕のほうだ。けどこんな運動望んじゃいなかった。カッコ悪いことに僕のほうは息が切れかけている。
大きな休みにはいって、これでしばらく二人でゆっくりできるねーと話してせっかくだからおとまりしよう、ということで彼女の家に行ったわけで。
そこで夕飯を食べた後、あの棒状のコントローラーを使うゲームで遊ぼうと、「ちょっと運動しない?」なんて言ったら
「じゃあランニングがいいわね!」とそのあとの僕の言葉も聞かずに、何故用意していたのかもわからない二人分のジャージを取り出して
早くはやく、と嬉しそうにいうもんだから何も言えずに従ってしまった。彼女の家ではあの特徴的なフォルムがしょんぼりしてるだろう。
「あたし、こうやって夜に走るの好きなのよ。」
白い息を吐きながら彼女が言う。
「そりゃまたどうしてさ?」
「夜の街ってステキじゃない?あたしがあんまり夜に外に出ないからかもしれないけど、時々みたくなるのよね。」
「確かにキレイだね。特にこんな時間はところどころ電飾が消えてたりで。」
僕もこんな時間には壮大な残業の帰りやコンビニに行くぐらいでしか外に出ない。
「でも実は街のど真ん中よりこっちのほうが好きなの。」
ゆっくりと彼女がブレーキをかける。
「公園じゃないか。結構遠いところまで来たね」
いつの間にか大きめの緑地公園まで来ていた。公園内は電灯も道なりに等間隔に設置されているが街の通りのほうに比べれば明るくない。
「ふうーーー!つかれたー!」っとそんな感じも見せないで彼女はちょっと朽ちかけのテーブルセットに座る。
「はい、お茶。......でなんで夜の公園が好きなの?」
向かいに座ってポーチから水筒をだして彼女に渡す。
「ありがと。そりゃあれよ。この雰囲気よ、ふーんーいーき!」
「雰囲気?」
「今はちょっと枯れてるとこもあるけどさ、常緑樹とかがね、この点々とした電灯と月明かりに照らされてる感じと静かな感じだよ。」
しかもちょっとミステリアスな感じもするし?と付け加えながら、楽しそうに笑うと同時に白い息がでる。
そんな彼女にどきっとさせられながら僕は、
「蛇とか熊なんか出てきたりして。」と冗談を言うと、「この前でたらしいよこの辺」とかえってきて
「うそ!ほんとに!?」なんてびっくりさせられてしまった。
白い息を吐きながら二人でそんな冗談をしばらく言い合っていると。
「うぁ!今の風寒かったね~!」
突然、風が吹く。彼女は立ち上がりながら続けてこう言う。
「汗で冷えてきちゃったみたい。かえってお風呂はいろっか。」
月を見上げながら言う彼女の白い息がなんとも妖艶に見えてしまって
「一緒にか?」なんて冗談をかましてみるとそんなわけないでしょ!っと肩を強めに小突かれてしまった。
しばらくして僕が立ち上がると
「「じゃあ、かえろうか。」」
ハモってしまいふたりで大笑いした。
帰りも同じ、いつもと雰囲気が違う、ステキな街中を見ながらはしる。
でもそんな街よりも、白い息を吐きながらたのしそうに走る彼女のほうがもっと素敵だった。




