彼が彼女で彼女が彼で
輪廻転生。
言葉としては知っているが、実体験として知っている人ってなると、あまりいないんじゃないかな。
というか、ボロボロいたら怖いけど。
私は転生者だ。
魂は常に同じ気質を持つ人間に転生し続けているので、もはや回数に意味はない。
まさに転生ベテラン。
ただし記憶はほとんど持ち越せないので、転生が続いているという実感はあまりない。
いや、なかったと言うべきか。
今は、なぜか前世の記憶がバッチリある。
そしてものすごーく不便な思いをしている。
なぜなら。
私こと、天宮 春生は《日本人男子》で。
前世は《異世界の女勇者》だった。
……ちなみに、美少女勇者じゃアリマセン。
そこ、露骨にガッカリしない。
まぁなんだ。
体格のとてもいい、ナイスバディの美女勇者だったわけだ。
ステータスが化け物レベル。
それこそ素手で魔物倒せます、つーか倒してた。
一応、格式の高い騎士の家の出身だったんで、粗野ではなかったけどね。
間違っても女ゴリラ言うな。
歴代最強の勇者だったらしく、魔王も邪龍もサクサクッと退治して、悪の秘密結社をぶっつぶし、獣人奴隷解放に尽力し、ついでに悪い王様も退治しようとしたのがいけなかったのか。
救国の英雄として、革命のシンボルに祭り上げられたところまでしか記憶がない。
勇者の力とは、魂に宿るモノ。
つまりは、今の私にもその最強の《力》があるということ。
この平和な日本で、どうしろと?