伝説の始まり
基本喋っているのは勇者の幼馴染です
言うなれば独壇場!!
勇者にだって止められない!
「あっ?なんだって。もう一度言ってくれ。」
夜、突然電話がかかってきた。付き合いはもう十年になる幼馴染からだ。ガキだった頃はよくふたりで悪戯をしたもんだ・・・もちろん親たちにしこたま怒られたが。
しかしめずらしいな。毎日のように会ってるから電話なんてしてこないのにと思いながら通話ボタンをタッチする。電話の内容は予想の斜め上どころか四次元に突入していた。
「異世界・・・?。なんだそりゃ?どこの漫画だよ、お前。
・・・違う?現実だって?・・・頭、わいてるぅ?」
「違うよ。あんなコンビ名よりパスタ巻いてる印象が濃い芸人じゃないよ。
・・・つっこみしてる場合じゃない?世界を救う勇者に選ばれた?
おめでとう。入院祝いに赤飯を炊いてやるよ。まず黄色い救急車か!待ってろすぐ呼んでやる!!」
「救急車が来たほうがうれしいってどんな状況だよ。その魔王とやらを倒さないと帰ってこれないとかテンプレだな。じゃあなんで電話は繋がってんだ?
・・・確かに。ただの高校生のうちらが考えてもわかるわけないな。じゃあとりあえず話せ。最初から最後まで余すことなく全部!エビフライのしっぽまできれいに食べるお前ならできるはずだ!」
「まとめるとこうか。学校帰りに意識を失って気づいたら大理石でできた部屋にいて、そばにいた巫女さんに連れられて神殿の祭壇ような場所に連れられて、お偉いさんに『お待ちしておりました、勇者』と言われて事の顛末を聞かされる・・・。
ホントにお決まりだな。どうせ二つ返事でオーケーしたんだろ?お前はそういうやつだから。
・・・こっちが言えることはひとつだ。寝ろ。まだ夢オチの可能性がある。じゃっおやすみ。」
「もしもし。
・・・だろうな。そもそもこっちに電話が繋がってる時点で夢オチなわけないだろう。
『お前はひどいやつだ』か。最高の褒め言葉だ、ありがたく受け取っとこう。
で、今日は何があったんだ?」
「へぇー、修行か。チート能力がないのか、残念。
最初に目覚めた建物の中に修行場があるとかどんだけでかいんだ。剣の師匠が厳しい?いいじゃねぇか、どうせ巫女さんが優しく介抱してくれるんだろ。う、ら、や、ま、し、ね。もう一度言おうか。死ね!」
「よっ、二日ぶり。お前いなくて母親が心配してたぞ。ご飯も喉に通んない様子でげっそりしてたよ。
心配すんな。ウチにいるって言っといた。ウチの両親いま海外にいるからばれる心配なし。まったく結婚20周年の新婚旅行だなんて馬鹿げた理由でイギリスに行きやがって。
・・・ははっ照れるじゃないか。感謝するなら早く帰って来て甘党屋の特大いちごパフェをおごれよ。甘いもの好きなのは知ってるだろ、だからそれでチャラだ。」
「まだ修行やってんのか。大丈夫だろ、お前なんだかんだ飲み込み速いしな。前にだって2、3度見ただけで肉じゃがの作り方マスターしてたじゃん。そんな落ち込んだ声出すなって。
・・・剣と肉じゃがじゃ比較にならない?いやいや同じだろ?両方とも切って相手を料理してんじゃないか。
・・・幻覚か?お前の呆れた顔が見えるぞ。」
「そういえば充電は大丈夫なのか?だいぶ話してるしそっちにはコンセントないし。
・・・フル充電してある充電器10個、ソーラー式充電器5個、手回し式充電器5個って。
もしかして携帯依存症?もしくは充電器フェチ?・・・人類には早すぎる。
ははっ焦んなくていいよ。どんなに変わった性癖でもお前を受け入れるから、同性愛以外なら。
ああ言い忘れてたけどお前の母親絶食ダイエットにはまってるよ。いま5日目だって。」
「異世界生活一週間目…か。こんなに長い間会わないのはさすがに違和感あるな。
そっちの生活には慣れた?」
「まだ修行してんのか。さっさとモンスター倒してゴールドせしめようぜ。勇者だから堂々と民家に泥棒しようぜ。きっと何しても罪になんないよ。
・・・馬鹿言うな?そんなことより大変なことが起きた?巫女さんの両親は魔王に殺されていた?
いきなりヘヴィー過ぎやしないか?というか、いつの間に巫女さんの好感度あげたんだよ。それもうクライマックス直前だよ!」
「最終的に泣いてる彼女を慰めより努力しなくては、と再び決意を固める勇者であった。
なんというか……さすがと言うべきか…な?
…勇者してるね。泣いてる女子に話しかけるとか勇気溢れてるわー。『温泉の勇者』の二つ名は伊達じゃないね。
・・・なんで知ってんのか?別のクラスだろうと地域が違う学校だろうと自分の情報網から逃れられるのはないからね。
勇気を振り絞って覗いた女湯にはサルしかいなかったことまで調査済みさっ。
・・・ドンマイ。」
「・・・えっ?白飯が食べたい?
主食がパンか。さしずめ中世ヨーロッパ風と称賛すべき料理なんだろうな。いいじゃないか、どうせ貴族が食べるような豪勢な食生活してんだから。こっちはコンビニの豚の生姜焼きだってのに。
・・・どんだけ日本食に飢えてんだ。……よしっ。わかった簡単な解決策を教えよう!」
「これは某節約生活番組の手なんだけどな。
まず、小麦粉と水を用意する。
それらを混ぜて練って米のサイズまで細かく分けていく。
最後に火を通すとあら不思議、米の出来上がりだ。
後は出来た米を煮るなり焼くなり好きに調理すればいい。」
「はっはっはっ、もちろん冗談だよ。小麦粉から米ができるわけないだろう。
・・・もしもし、もしもし。あれ?通話が切れてる。
はっ!まさかあいつ実行する気か?!
……帰ってきたらおにぎりでも作ってやるか。」
「腹治ったか?もう馬鹿なことすんなよ。
・・・えっ?細かいことは気にすんなよな。全てはお前のせいだ。」
「まだ神殿から出てないのかよ。いい加減外出てこいよっ、このひきこもりが!
・・・剣の他に徒手空拳を習い始めた?修行し過ぎだろ!七つの龍玉でも集めるつもりか!
戦う技術を学ぶくらいだったら魔王とかについての情報集めろよ。」
「・・・町に出してもらえないとか怪しいな。その神殿は何かお前に隠してる、間違いない。
とりあえず巫女さんに話を……一番最初に会った巫女さんが一番怪しいか。
よし、神殿のなかでもっとも軽そうなやつに探りをいれろ。
・・・そうだ、前に言ってた仕事をさぼって酒を飲んでた門番。念のため、お偉いさんの悪口を愚痴ってた侍女にも話を聞こう。
……なんか、神殿なのにやたら俗っぽいな。」
「・・・そうか。話してはくれなかったがなにかしら秘密にしていることがあるのか。
口が堅いところはさすがだな。もしかしたらお偉いさんに強制的に秘密を洩らさないようにさせられてんのかもな。閉鎖された空間なら何しても問題ないから。
・・・うん。気をつけろ。異世界では常識なんて通用しないから自分の身は自分で守らないと。」
「ようやく剣の修行が終わったのか。おめでとう。
・・・師匠が泣いてた?弟子が師匠を超えたんだ。うれし泣きぐらいするだろ。
じゃあついにRPGのようなモンスターが跋扈する世界に踏み・・・出してない?」
「旅の準備に時間がかかるのか。まあ魔王城まで一泊二日で行けるわけないか。
・・・違う?転移魔法の準備?
神殿から魔王城まで直通かよ!
うわー、今までのわくわくはなんだったんだろう…。」
「2週間もかかるのか。その間に情報収集しようぜ。
魔王について。勇者について。そしてうさんくさい神殿について。
最初は勇者についてかな。今までにも召喚された勇者はいるんだろ?
勇者のことなら情報集めやすいだろう、伝説にもなってんだから。
安心しろ!この町一番の情報通が情報収集のイロハを手取り足取り教えてしんぜよう!」
「・・・なるほど。100年前の勇者は世界の悪意の塊である魔王を倒して元の世界に帰ったと。この伝説は神殿の全員が知ってたと。
あとわかんないのは神殿についてだけか。勇者は確かに重役で大切にしなきゃいけないのはわかるが一歩も外に出ないのはちょっとな。
初戦がいきなり魔王ってのも違和感があるな。魔王は魔物を世界に解き放ったんだろう?なら魔物で実践を積むのがセオリーだと思うんだけど……。」
「・・・そうだな。わかんないことは後回しにしよう。
こっちは梅雨前線がやってきて大変だよ。ふとんはかび臭いし。
・・・お前がそっち行って2週間も経てばいろいろ変わるさ。橘の彼女も変わったんだ。
・・・まったくだ。半月ごとに彼女を変えるなんて、不純だ!爆発四散して宇宙の四隅に飛び散れ!あいつの今までの彼女もきっと全員賛同してくれるはずだ。
うん、いい考えだ。ちょっと行って協力取り付けてくる。次回をこうご期待!!」
「もしもし?・・・怯えた声出すなよ。さすがに宇宙は無理だってば。
橘?今頃新世界にいるんじゃないかな?麦わら帽子の海賊さんがいない新世界だけどね。」
「・・・巫女さんとの好感度は上がっているわけね。その巫女さん二次元の人?
だってそうとしか思えないじゃん。クッキー作ろうとしてダークマターを生成して、『失敗しちゃった、てへっ。』と舌出して微笑むなんて!
世界じゃなくて次元渡っちゃったのかい!この虹充めっ!」
「徒手空拳もマスターしたのか。化け物になってきてんじゃないか?
・・・神殿内でトーナメントをしたら優勝した?みんな『さすが勇者』と褒めたたえたけど表情に恐れが隠れていた?」
「……安心しろ。お前が素手で地面を割ろうが、剣でビルを真っ二つにしようが、誰も理解してくれなかろうが、
自分がそばにいる。
電話越しだろうがちゃんとそばにいてやる。だから安心しろ、お前はひとりじゃない。
もう十年になる付き合いだ。あと何十年でも何百年でも一緒に馬鹿やってやる。
だからさっさと魔王ぶちのめして帰ってこい。約束だ。
・・・・・・なんだ?泣きやがって。自分ひとりじゃ不満か?」
「あれから二日経ったけどもう大丈夫か?
・・・いきなり泣いたことは黙っとこう。その代わりきちんと約束果たしてこい。待ってるからな?
・・・待て待て?!泣くな!涙腺もろすぎだろ?!」
「・・・ようやく落ち着いたか。はあぁ。
お前は昔から妙なところで涙もろいな。小3のとき映画見て泣きじゃくってたもんな。あのときは鼻水も流れてて顔がグチャグチャで、ついでにもらしてズボンが……。
あっ!これはホラー映画見たときの話だね。ごめんごめん、うっかり…ね。プッ!
あぁ、あのときは可愛かったなぁ。ププッ!フハハハッ!フフッ!ハハハハッ!!」
「ごほっごほっ、あー笑った笑った。じゃっ本題入ろうか。
・・・神殿に侵入者か。門番に拘束されながらその少女が叫んだ内容が忘れられないと。
『ここはおかしいっ!!ねじれてる!外は……っ。』
少女は最後まで喋れず手刀をいれられて気絶。そのままどこかに連れて行かれた。
……本格的に危ないな。
いいか?絶対気を抜くな。お前がそこで一番強くても隙を突かれたらお終いだ。
出来るならすぐにそっちに行きたい。そうすればもっと解決策あるのに!
・・・ああわかってる。でも、どうしようもないなんて!
絶対生き残れよ、ぜったいだぞ!」
「・・・そうか。告白か。驚かないのかって?今までの話を聞けば誰でもわかるさ。
巫女さんは何て告白してきたんだ?今後の参考のためにもその愛の言葉を教えてくれよ。
メモ取ってくるからちょっと待ってな。こんな面白いことを記録しないなんて町一番の情報通の名が泣くぜっ!」
「・・・ふむふむ。うぇっ。甘党の胃をこんなにするとは恐るべき巫女さん。
将来がかわいそう……。どうせ返事はまだなんだろう?
お前は実際巫女さんのことどう思ってんだ?」
右も左もわからない場所で唯一仲良くしてくれた。
トーナメント後はみんなよそよそしくなったときも優しくしてくれた。
泣いているのを見て胸が痛くなった。
「・・・それに味方でいてくれた、と。」
夜中気づかれないようお偉いさんの部屋を覗き込んだとき、お偉いさんと巫女さんが口論をしていた。
お偉いさんは勇者なんて、勇者は処分すべきとヒステリックに批判したが巫女さんがかばってくれた。
『あんなに優しくて私をちゃんと見てくれた人はいないかった!!』
「・・・彼女のことは嫌いか?」
そんなわけない。彼女は良いひとだ。とてもとても言葉で表せないほど感謝してる。
報いるためにも魔王を倒そうと一生懸命になれた。
「・・・愛しているか?巫女さんのことを。」
・・・・・・・・・・。
好意はある。たった三週間だけど一緒に過ごした時間は大切なものだ。出来ることなら彼女の気持ちに応えたいと思う。
でも、
「・・・『お前との約束は破れない』、か。
……巫女さんには悪いけど、とても嬉しいよ。
三週間は人生のなかではとても短くて全体からすれば誤差みたいなもんだ。
でも、人生観を変えるには十分過ぎてあくびが出るぐらいの時間だ。
魔王を倒すという使命を持って生きたその時間はただの高校生が送る生活よりもよっぽど密度の高いものだったろう。
けど、
それでも、そんな特異な経験をした後でも
元の世界を忘れてくれなかったのは本当に、
ほんとうに
ほんとうにほんとうに
ほんとうにほんとうにほんとうに
ほんとうにほんとうにほんとうにほんとうに
ほんとうにほんとうにほんとうにほんとうにほんとうに、
嬉しい。だからっ!!
帰ろう!!」
バキィィィィィーン!!!!!
部屋の窓が壁ごと粉々に飛び散り、けむりが視界を隠す。
衝撃が過ぎ、目を開けると、
「ハロー!久しぶり!」
まだ飛んでいる破片はきらきらと月光を反射し、外の闇夜と
最近は声しか聴いていなかった幼馴染を照らし出していた。
「イタタッ。
さすがに飛び込むのは辛いな。なんだ?そんな死人にでも会ったような顔して。
できればじっくり話をしたいところだけど、人が集まってきちゃったね。
んっ。巫女さんとお偉いさんもいるみたいだ。じゃあ、」
「解決編といこうか!!」
「こんばんは、お偉いさん。突然の訪問、失礼いたします。
あなたは蔵之内豪さんですね。いや、アドバンステクノコーポレーション代表取締役社長さんのほうがいいですかね?
そんな顔しかめないで下さい。私はそこにいる勇者の幼馴染です。ただの高校生ですよ。」
「素晴らしい会社ですね、アドバンステクノは。
工業だけではなく農業、娯楽、サービス業と手広く事業を展開する行動力。
日本ではその影響力が届かないところはないと噂されるほどの規模。
ほとんどの事業はあなたの決断で始められたと聞きます。だけど、誰も代表取締役の姿を見たことがなくマスコミは躍起になって正体を突き止めようとしたそうですね。
いち情報通としてはそんな都市伝説のような存在に会えるなんて光栄です、豪さん。」
「そんなあなたが誘拐なんて!
まあ会社を大きくするために後ろ暗いことのひとつやふたつありますよね。
ははっ、護衛さんも殺気出さないで下さいよ。ここにいる勇者にかかればあなたたちは簡単にひねりつぶせるのを忘れてないですか?
護衛と称するにはいささか凶悪な顔つきですね、さしずめ傭兵ってとこですか?
それに私はともかく、勇者に危害を加えたらそこの巫女さんが黙ってないですよ。」
「ですよね、蔵之内静香さん。
あなたがこいつに好意を寄せていたことは知ってます、三か月も前からね。
あなたが私たちと同じ学校の1年生で初めは学校内でこっそり様子を窺ってたことも。
しばらくしないうちに家まで着いてくるようなストーカーになったこともね!
・・・えっ?知らなかった?だろうね。教えても無駄だと思ったから言ってないし。
ついでに教えとくけどストーカーはふたりいたんだよ。」
「恋心が溜まりに溜まった結果がこの誘拐事件だ!
しっかし、計画の内容が、こん、な、プッ、プフフフッ。
フハハハハハハッ!!!
すばらしいよ!静香さん。
メルヘン大好きをこじらせた少女の極みだよ!」
「あえて名づけるなら『協力して魔王を倒して勇者と巫女さんが永遠の愛で結ばれるハッピーエンド計画』かな?
いやー豪さんもよく協力しましたね。愛する娘のためですか?親バカですか?このこのぉ。
でも、『姿なき先導者』であるあなたが関わっているのにこんな欠陥だらけなのがとても残念です。」
「ひとつは建物から一歩も外に出さなかったこと。
この計画のためにわざわざ神殿ひとつ建てたのになんで町を作らないかな?
どんな馬鹿でも怪しいと勘ぐりますよ。こいつらは何か隠してるな、と。
もうひとつはリアルを追及し過ぎたこと。
勇者に指導した師匠はあれ、実践剣術の使い手でしょう?それも腹心の部下のなかで最も強いやつ。徒手空拳のほうも似たようなもんでしょう?
まさか勇者がそんなやつよりも強くなるなんて想像外ですよね?こいつ飲み込みが異常に速いですから。あなたたちは勇者に下手に手を出せなくなった。
そりゃ処分したくもなりますよね、納得です。
もうひとつ付け加えるならストーカー対策しなかったこと。
侵入者ってもうひとりのストーカーですよね?あの子も静香さんと同じころからストーキングを始めてたんです。
愛の力は偉大ですね!この山奥まで後をつけてきたんですから。想い人が目の前で拉致られるとは夢にも思わなかったでしょう。
そして最後に、
最大にして最悪の欠陥を教えてあげましょう、豪さん、静香さん。
それは、」
「勇者の幼馴染が私だったことです。」
「はっはっはっ、危ないですね。いきなり銃撃たないで下さい。
びっくりして殺しちゃいますよ?
大丈夫ですよ、豪さん。致命傷じゃないですから。
それよりあなたが気にしなきゃいけないことは別にあります。
誘拐に銃刀法違反、いま殺人未遂もはいりましたね。さすが大企業の代表取締役、犯罪もコンプリートするつもりですか?
証拠はこのボイスレコーダー、カメラ、ちょっと拝借してきた書類ですね。」
「とりあげても無駄ですよ。情報はすでに世界中のサーバーにあります。私がここで死んだら誰かが見つけてしまうかもしれません。どうにかできるのは私だけですよ?
ついでに私は勇者より強いですから殺すことはできませんよ。
・・・はい、よくわかりました。じゃあ交渉といきましょう!
私が欲しいのは3つです。
まず、金輪際私たちに関わらないこと。お願いしても関わりたくないでしょうからこれについては心配してません。
次に、50万円ほど下さい。…ポカンとした顔してますね。国家予算ぐらい請求すると思いましたか?これは今回かかった必要経費分です。ただの学生にはこれでも大金なんです。あなたなら小指動かすだけで稼げるでしょう?
最後に、娘さんを私に下さい。
ほんの十分でいいですから。ちょっと教育してやります。
……エロいことなんてしませんよ。私にそんな趣味はありません。だって私は、」
「ノンケですから。」
「・・・意味がわからない?それでも日本の影の権力者ですか!
ノンケは異性愛者。
つまり、私は女性ですから男性が好きなんですよ。娘さん相手に手を出したりしません。
じゃあちょっと借りますね。暴れないで下さい。痛くしませんから。」
「・・・おかしくなってないか?心外だね。むしろ更生させたよ。
108の煩悩のうち、104個ほど消したから。
あの残念な妄想女子が匠の手により慈悲深い笑みをたたえる純朴な少女に。
彼女はいずれ世界に『聖女』の名で有名になるでしょう。
良かったですね。もうわがままを言わない素直で良い子ですよ、豪さん。
・・・察しがいいね。その通りだよ。橘もああなってる。今頃町の清掃でもしてんじゃないかな?」
「じゃあ、わたしたち帰りますね。んっ?なっなんだい、ゆっ勇者?プッ!
・・・ひとつ聞きたいことがある?なんだ?
・・・いい加減喋らせてくれ?最初に電話かけたあの日から三週間、一言もしゃべってないぞ、か。
確かに電話をかけてはきてたがずっと無言だったな。
だって電話越しの声っていつもと違うし、
幼馴染のお前の言いたいことなんて言葉にしなくてもわかるよ。
・・・だからこそ怖い?
気にすんな。さっさと帰ってお前の母親安心させるぞ!
明日は甘党屋の特大いちごパフェな。
約束通りお前のおごりな!!」
満面の笑みを向ける幼馴染に僕は苦笑しながら両手を挙げた。
敵わないや、と。
この小説はファンタジーではなくコメディーです
ついでにフィクションなので企業名、個人名、都市伝説、芸人、7つの龍玉は現実のものとは一切関わりがありません。




