第一話 出会い
それは突然のことだった。
天城 桃華とその両親が車である高台にやってきた。名前はもう覚えていないが、ここで、お父さんはお母さんに告白したらしい。
小学3年生の桃華はお母さんが嬉しそうに笑っていた事
お父さんに肩車をされたことを覚えていた。
凄く、楽しかった。
三人は高台を後にして外食をすると言う話しになった。
桃華、何がいい?
お父さんの声が聞こえる
やっぱりハンバーグかなぁ?
お母さんの優しい声が染み渡る。
今でも耳に響いている。
えっとねぇ、桃華わねぇ、…
続きをお母さん、お父さんに伝えることはできなかった。
近辺からパトカーのサイレン音が聞こえた。
そして、天城家を載せた車が交差点にさしかかった所で
車がぶつかった。
最初にぶつかったのは車の前の部分。車の中はお母さんの悲鳴でいっぱいになる。
車は激しくスピンして私は勢いに乗って扉にぶつかった。そのときに鍵をあけてしまったのだろう。
私の体は車から外に飛ばされた。1、2秒宙に浮き、地面に激突した。
あまりの痛みに私は意識を失った。
意識は失ったのは多分5分くらい…
いや、もっと少なかったかもしれない
意識が戻ると目の前には、天城家の車とパトカーの破片が飛び散り、煙をあげていた。
私には何が起こっているのか全くわからなかった。
天城家の車の上にパトカーがのりあげて天城家の車の後ろは潰れていた。
ガタン!!
車のドアが落ちた。
すると中から血だらけのお母さんがずるっと落ちてきた。
「お母さん…」
私はお母さんに近寄る。
今思えば私の体も血だらけでぼろぼろだったのだがあの時は痛みを感じなかった。
しかし、どこか足元が安定せず、フラフラとおぼつかない足で私はおかあさんのすぐ傍まで歩き
母に叫ぶ。
「お母さん…お母さん!!」
お母さんは少しほんの少し目を開け、震える手で私の頬にゆっくりと添えた
暖かい母の手だ。
「桃華…」
震える声で
いつもの優しい声で
そう呟き、目を再び閉じた。
頬に添えた血だらけの手は力なく崩れ落ちた。
「お母さん…お母さん…」
目を開けてくれない。
いや、開けることができなかった。
「あぁ…!!俺の…俺のせいじゃない…!!俺の…」
後ろに立つ男がそう呟いた。
「お母さんがあ…」
涙が止まらない。
止められない。
「お母さんがあ…!!」
お母さんを助けて欲しかった。また、一緒に遊園地に行きたかった。
また、お母さんのハンバーグがたべたかった。また、笑いかけてほしかった。
「俺のせいじゃないんだー!!!」
男は走りさっていた。
「まってよお!!!お母さんを…」
ドサッ
お母さんの方向に、なにかが落ちてきた。
私はゆっくりと首だけを回し、振り返る。
「お父さん!!」
お父さんが血だらけの状態で母の傍に倒れこんでいた。
「はあ…はぁ…も、桃華…」
「お父さん!!お父さん!」
泣きじゃくる声でお父さんと呼び続けた。
お父さんは目を開いてはいたがすでに反応できる状態でもなく、荒く聞こえた呼吸音もやがて
聞こえなくなっていた。
それでも、桃華はお父さんを呼び続けた。
「ええい!!くそ!!!」
パトカーの扉が飛び、ごつい声が聞こえた。
そこから、短髪で無造作な髪型をした髭だらけの男がでてきた。
「まて!!河岸亮平!!」
男はとびさっき男の人が逃げた方向に走りだした。
「おじちゃぁん!!!まってよお!!」
聞こえなかったのか、男は振り返りもぜず、男の行った方向に走りさっていった。
するとパトカーから
「いてて…どうしたんだい?お嬢ちゃん?」
と言う声が聞こえ、きれいに整えられたであろう七三の固められた髪をした男がでてきた。
「お母さんとお父さんがあ!!!!」
私は詳しく説明できる状態でもなく、ただ泣きながら、お母さんとお父さんな名前を叫び続けた
「なるほど…この車に乗っていた人だな…」
男はパトカーに戻りしばらくしてでていった。
「まってよおお!!!」
男はふりむきもしなかった。状況を知っていたはずなのに…
どうして…
どうしてだれもお父さんとお母さんを助けてくれないの…
どうして…
「わあああぁああぁああぁあああああああぁあああぁあああああぁあああああああぁあああああ
ああぁあああぁあああぁあああああああぁあああああああぁあああぁあああぁあああぁああああ
あぁあああああぁあああああああぁぁあああぁぁあああぁ!!!!!!!」
私は空に向かってなきさけんだ。
その後救急車や野次馬、警察がくるころには私はきをうしなったらしい。
…
…
あれから私、天城桃華は中澤桃華となり、中澤家にひきとられた。天城家からかなり遠い場所で
思い出の何もない場所に引っ越すことになった。
Prrrrrrrrrrr
朝、目覚ましがなる。
私は目をあけ飛び起きた。そこは戸棚の小さなスペースで足も満足に伸ばすことのできない私
の与えられた部屋だった。
またあの時の夢…
事故から五年
私はかなり頻繁にこの夢を見る。まだあの時の情景を、あの時の悲しさを私はまだはっきりと
おぼえていた。
忘れられないよ…
目覚まし時計の時間は四時半。桃華の朝はまず家族全員分の食事と弁当をつくることから始まる。
家族全員分と言っても、そこに桃華は含まれていない…
桃華は昨日冷凍しておいたご飯を三人分取り出し、レンジにかけた。そして、卵を取り出し卵焼
きを作る。
その調子でウインナー、肉団子、レタスの千切りを用意する。そして中澤家の父と桃華と同級生
の中澤比武の弁当を用意する。
中澤比武は髪をきれいに立たせた少し大人びた顔付きの少年である。
私の学校は給食がでてるので、早弁用なのだろう。
そこに比武がおりてきた。時間は五時。いつもより全然早かった。
「飯まだ?今日サッカー部朝練なんだけど!!」
朝から不機嫌そうな口調だった。
「あ…ごめん…なさい、今日朝練だったよね、忘れてた、朝ご飯、今用意するから…」
かなりびくびくした怯えた声で私は言った。
「あぁ!!?ふざけんなよ!?このブス!!」
「ご…ごめんなさい」
「お仕置きがひつよーだなぁ!!」
そう言って、比武は火を消して、桃華を思いっきり蹴飛ばした。
「きゃ!!」
蹴りは脇腹辺りにあたり桃華の体は比武の右側に吹き飛ぶ。
倒れた桃華の上に乗り…
「へへ…」
桃華の胸に手を出してきた。
「きゃあ!!!」
桃華は必死に抵抗するが、比武の力は強く抵抗は無駄に等しかった。
「こら!!なにやってるの!!?」
中澤美佳
この家の母のポジションにいる天城家の母の妹の義理のお母さんの息子の嫁というとんでもない
くらい遠縁の人である。髪はショートでむすんでもおらずしわが目立つ体の線が太い人だ。
「えっと、これはこいつが!!」
比武は桃華の上をどき、美佳に言い訳をしようとした。そんな言い訳をさえぎるように美佳は煙
草に火をつけ桃華の前に歩みよった。そして煙草を二の腕あたりに強く押し付けた。
「あああぁあああああぁ!!!!!」
「うちの息子をたぶらかしてんじゃないよ!!こんクソガキ!!!」
そして美佳は桃華の腹や二の腕、太ももを蹴りまくる。
それが終わったのは三十分後だった。
「二度と変な気をおこすんじゃないよ!!わかったかい!!!」
「は……は…い、すみ…ませんでした」
終わったころには私は体中に新しい打撲ややけど、痣を無数につくっていた。
「早く朝ご飯をつくりなさい…よ!!!」
美佳は髪を引っ張り私をたたせようとする。
「痛い!!痛い!!」
私はふらつく足に力を入れ、立った。
「ふん、はやくしな…!」
美佳は髪から手を離し、食卓の椅子に座る。
比武はそれにつづき座る。
私はいそいで、目玉焼き、味噌汁、ご飯を出し、自分の部屋に戻った。
…途中、煙草を押しつけられたり、蹴られながら…
私は部屋でパンをたべ、急いで制服にきがえた。
…また…あざと煙草の後が増えたなぁ…
寝間着を脱いだときに思った。
体には特に制服で隠れるところを中心に青痰、タバコによる火傷の傷、切り傷など沢山の傷がそこ
にはあった。
桃華は制服を着こみ、私は物置のようなスペースの端に私が荷物入れとして服や教科書をいれてい
るダンボールから死んだ母と父の写真を取り出す。二人の荷物を片付ける時に出てきた写真でそこ
には桃華と母と父が写っている。桃華は一年生で、高台に遊びに来たときにとったものだ。
お母さん…
目頭が熱くなる。
お父さん…
今の生活は正直、つらかった。美佳には暴力をふられ、比武にはセクハラまがいなことばかりされ
る。比武の父は出張中で、家にはいないが、いれば家族がいることを自慢されるような感覚をうけ
る。私がもう手に入れることができない暖かい感覚を見せ付けられているようで無下に扱われない
が、心がキツい。
写真を見てると、いきなり美佳が扉をあけてきた。
「あんた、まだいたのかい!!さっさと学校にいきな!!!」
「は、はい!!」
桃華は急いで玄関へと向かい靴をはき学校に向かった。
この時、私は写真を物置のなかに出しっぱなしにしていた。
学校についても、あまり心は救われなかった
比武が学校の皆に、桃華をいじめろ、相手にするなという指示がだしているからだ。
机の上の落書き、給食に虫入り、教科書やノートを捨てられる、触ると汚いと言って菌の回し合い…
数えあげるときりがない。私は悪夢のような学校が終わると逃げるように、学校から去った。
私は橋の上で橋の下の川をみていた。そこは私のお気に入りの場所というわけでもなく子供達が楽し
げにあそんでいる声をきいてふと立ち止まって子供たちの様子をながめていた。
私にはあの時代は、記憶は曖昧だ。幼かったし、ここの生活が強烈すぎた。
それほど短く、そして、壊れるのも一瞬だった。だから、桃華はあの子供が羨ましかった。
まだこの先も幸せに笑っていられるだろう子供たちをみていると激しく嫉妬してしまい、そしてそん
なことを考えてしまう自分が情けなくて、涙が出そうだった。
いっそ…
このまましんじゃおかな…
今日みた夢が反芻される。お母さんとお父さんの苦しそうで…だけど、私を心配している表情や声が…
桃華…
桃華…
気がつくと私は手すりの上に立っていた。スカートがかぜで揺れる。前髪が流される。
今にも落ちそうな不安定な感じを私は心地よく感じていた。
お母さんと…お父さんに…会いたいな…
どうすればいいんだろう…
「死ねばいいのかな…」
私は自然と言葉を漏らした。そして私は笑っていたと思う。
死のう…
死のう…
死のう…
死のう…
手すりからに何もない空間へと足が進む。
「はい、ストップね」
肩に何かが乗ったような感触があった。そのまま後ろにひかれ、片足を宙にだしていた私の体は耐え
ることもできず、倒される。
「キャ!!」
後ろに倒された私の体は後ろの人間にお姫様抱っこのように支えられる。
「だめだよ、自殺なんかしたら」
支えられている人は若い男の人だった。シャツの上に七分丈の上着に、ダメージジーンズで、軽く茶
髪の入った人で短髪だが前髪の真ん中の部分だけが長とい。その中でも一際ながい髪は根元からが逆
立っていた。筋肉質で支えられている手の筋肉もすごかった。
「ん?大丈夫?支え方がセクハラってる?」
軽く笑いながらはなしていた。その話し方、雰囲気は明るく、ここちのよいものだった。
私がもう何年も感じることのなかった、いや、欲しかったものだった。
ふと、涙がこみあげてきた。
「グス…ひっく…うわあぁぁあああああああぁぁああ!!あぁあああああああぁああ!!!」
泣き出してしまった。
知らない男の人の前で
知らない男の人の胸の中で
知らない男の人に抱き抱えてもらいながら
私は泣いた。
「え!!う、嘘!?自殺を止めるって良いことだよね!!??なんで泣いちゃったの!!??え!!ん!!っと!!ど、ど
、どうすりゃいいの!!??えっと…ほ、ほら、よしよ~し…」
…
…
…何分泣いていただろう
我に返ると、男の人はしゃがみこみ、桃華に楽な体制にし、頭をずっとなでてくれた。
「落ち着いた?」
男の人はきいてきた。
「あ、えっとはい…すいません」
私は距離をあけ、頭を下げた。胸を借りて泣いてた時点でもう警戒しても無意味なのだか、人を前にす
ると体が自然と硬直してしまういわゆる人見知りな私は体が自然と距離をあけ警戒してしまう。
男の人はしばらく観察するように桃華をみていた。
タバコやアザの跡は服で綺麗に隠れているから、見える心配はない。
だが、いきなり自殺しているところをみて、何かあるとは思ってるだろう。
だが私としては見られているのはあまり心地よくはなかった。
照れくさい。しかし泣いてる間、胸を貸してくれた人だけに目に見えて拒絶する訳にもいかず対応に困
った。そんな事を考えていると男は笑顔で言った。
「名前なんていうの?」
「あ、えっと…その…」
自然と声が小さくなる。まったく知らない人に名前を教えていいものだろうか…?
「あ、いやなら答えなくていいから、なんて呼べばいいかわからなくてさ、じゃあ自殺少女で…」
「あ…いや…中澤です中澤桃華…」
自殺少女なんて不名誉すぎる…
「桃華ちゃんね。俺、雨宮七雲。それでさ、桃華ちゃん、動ける?」
「え、あ、はい…」
「よし、じゃ、今から遊び行くよ」
「は!?」
思わず、大声を出してしまった。えっと…ナンパ……なの?
「ほら、いこ」
雨宮さんはそんな困惑している私に構わず、手を握ってきた。
「ひゃ!!」
「?どうかした??」
どうやら手を握ることに雨宮さんは何も感じないようだ。私はとりあえずそのことは諦めた。
って…なにを諦めたの私…?
「え、あ、その…」
桃華はワンテンポおいて
「…親が…」
あの中澤家の人は私が遊びに行くのを許してくれない。かえったらまずは家事をやるのが日課な
ため私が放課後外出すると家事をやる人がいなくなるからだ。
そんな微妙に暗くなった私に雨宮さんは言った。
「家番何番?」
「あ、えっと…」
桃華が電話番号を伝えると、雨宮さんは携帯をとりだして電話をした。
まさか…
(もしもし、中澤ですけど)
「もしもし、桃華ちゃんの友達ですけど、今から桃華ちゃんと遊びにいくので、帰り遅くなりま
すね」
嘘ーーーーーーーーーーーーーー!!
そういうと七雲は返事も待たず、電話を切った。
私は呆気にとられながらも、どこかほほえましい気持ちになっていた。
強引だなぁ…
私は思った。
「よし、じゃ、桃華ちゃん行くよ。」
雨宮は再度桃華の手を握り、ひっぱった。
やっぱり…
桃華は知らず知らずのうちに笑っていた。自殺するときの苦痛に歪んだ笑みではなく、子供っぽ
くやわらかに…
それはきっと雨宮さんの放つ雰囲気に当てられてしまったんだろう。
暖かい…
私は雨宮さんつれられるままに歩き出した。
中澤家
「なによ、あのクソガキ…」
電話にでたのは中澤美佳であった。
美佳は、通話の切れた電話を握り、そうつぶやいた。美佳は桃華がクラスで居場所がないことに
気づいていた。気付いていたというより・・・・・・・。
とにかく美佳は桃華がクラスでいじめられていることを知っていた。
多人数の行為にたいし少人数の人間が違う意見を持っていたとしても、多人数の行為を正義とと
ってしまうというのが美佳の見解だ。ましてや、桃華達はまだ中学生だ。中学生の子供達がいじ
めと戦う勇気などあるわけがない。
と、すると
「まさか、あのガキ…誰かに助けを求めたのか…!!」
その声は怒りに震えていた。電話の声は男のものだった。桃華たちの通う学校の担任は女だった
のを美佳は覚えていた。よって担任ではない。しかし、それ以外に桃華が助けを求めそうな男を
美佳は知らなかった。もし美佳が冷静なら、友達を名乗った時点でいじめを専門とする人たちや
学校の先生でないことは想像できただろうが、怒りが心を支配している状態では冷静な考えは生
まれてこなかった。
「…そうだ、部屋に何か残っているかも…」
美佳は桃華の部屋(←部屋ともよべないちいさな物置だが)に足を向ける。美佳は部屋の扉を開
けると、部屋にはきれいにたたまれた布団と小さな台が端にまとめてあり、反対の端にダンボー
ルがおかれてた。美佳は部屋に入るなり、ダンボールをひっくり返した。
ドサッ
中から落書きだらけの教科書や櫛や服、チラシの束が出てきた。
「なんだい?このチラシ…」
チラシの内容はスーパーの特売でところどころに印があった。美佳は心になにかひっかかったが
特に気にせずチラシを一通り目を通した。
「ないじゃないか!あのクソガキ…!!」
誰もそこになにかあるとは言ってなかったのだが、美佳はそんなことを気にしている余裕がなく
荒れていた。と、チラシを見ていた美佳がふと台の上に小さな紙が乗っているのが見えた。
美佳は乱暴な手つきでそれを手に取る。
それは写真だった。桃華と今は亡き桃華の母と父が笑顔でたっていた。美佳の顔から一瞬怒りが
消える。その顔はどこか悲しげで疲れたような顔をしていた。しかし次の瞬間、美佳の顔には先
ほどまでの怒りとは別種類の怒りが浮かんだ。
「あのクソガキ、いまだにこんな写真を…!!!!!」
美佳はその写真をもってリビングに戻っていった。
もはや、美佳の頭のなかから電話のことは消えていた。
はじめまして。
初投稿、初連載です
最後まで読んでくれた方ありがとうございます
良かったら続きも書いていくんで見てください^^
誤字脱字が多いと思いますが、よろしくお願いします




