静かなるライバル宣言
「御堂君、おはよう……」
由奈ちゃんと入れ替わるように、柊さんが僕のところへとやってきた。
「柊さん、おはよう」
「ねえ御堂君、さっきの女の子は……?」
「えっと……」
「ああ、あの子は彼方に突然できた妹の由奈ちゃんだよ」
「妹……」
柊さんの問いに僕が言葉を詰まらせていると、代わりに悠人が答えた。
その瞬間、柊さんの眉がピクリと動いた。
「しかもコイツ、同じクラスの風原さんと同居してるんだぜっ!?」
「ちょっと……! 悠人……っ!?」
悠人に知られたのが運の尽きと言わんばかりに、亜希と同居していることをペラペラと話し始める悠人。
ほんっと、亜希になんて言おう……。
「風原さんと……そう。御堂君は風原さんと同居しているのね……」
「えっと……柊さん……?」
それを聞いた柊さんの眉がさらにピクリと動く。
彼女の声は静かだったけど、その静かさが逆に怖かった……。
いや、別に柊さんと付き合ってるわけじゃないんだけど、なぜか柊さんに睨まれている……ような気がする。
「いや~でもさ、由奈ちゃんってマジで可愛かったよな!俺もあんな妹ほしいわ~」
「悠人は黙ってて!」
悠人に苛立ちを感じた僕は、少し強い口調で言い放った。
「……確か御堂君のお父さんが再婚したんだったよね?」
「あれ……?柊さんなんで知ってるの?」
「御堂君、エリシア・オンラインって知ってるよね?」
「え……?うん、知ってるも何も僕それしてるから……」
「わたしもエリシアしてるの。確か御堂君のキャラクターは“カナタ”さんだったよね……?わたしのキャラクターは“ミオリネ”って言えば分かるよね……?」
「え……?は……っ!? ぅえぇぇぇぇえーーーーーっ!?」
柊さんのカミングアウトに、僕は思わず素っ頓狂な声を上げた。
柊さんがエリシアをしているというだけでも驚きなのに、しかもミオリネさんだなんて……!
確かに言ったよ……!
昨日チャットで親が再婚したって言ったよ……!
しかもその後由奈ちゃんが参加して、僕の妹だって公言してたよ……!
「ふむ、どうやら御堂と柊は思わぬつながりがあったみたいだな……」
「彼方……!なんでお前ばっかり女子とこんなに縁があるんだよっ!お前はマンガやゲームの主人公かよっ!」
悠人は僕の肩を掴むと、ガクガクと揺らしてきた。
「ちょ……!悠人やめてよ……!」
それにそんなこと僕に言われても……!
「とにかく御堂君、わたし負けないから……」
柊さんは僕へとそう言うと、先に学園へと向かったのだった。
~サイドストーリー~
──亜希──
一足先に学園へとたどり着いた私は、教室へ向かう途中で担任の
渡辺茉莉先生と偶然出くわした。
渡辺先生は私のクラスの担任にして現代文の担当。
歳は30歳くらいで、既婚だと言っていた。
「先生、おはようございます」
「おはよう、風原さん……じゃなくて御堂さんだったね」
どうやらお母さんから苗字が変わったことが伝わっているらしく、先生は私のことを元の“風原”から“御堂”へと言い換えていた。
「あの……先生、お願いがあるんですけど……」
「お願い……?なんだい?」
「はい、私のことはこれまでどおり風原と呼んでほしいんです」
「ん……?それはまあ構わないけど……どうしたんだい?」
私のお願いに、渡辺先生は腕組みをしながら不思議そうな顔をしていた。
「先生もご存知かと思いますが、私は今御堂君と同居しているんです。それを他の人に知られたら私自身恥ずかしいですし、変に茶化されたくもないし……」
「なるほど……風原さんの言うことも一理あるね。分かった、他の先生方にもその旨を伝えておくよ」
「ありがとうございますっ!」
私は先生へと頭を下げると、先生はこの場を離れていった。
これでよし……と。
確かに彼方と一緒に暮らせるのは嬉しいけど、それを変に茶化されるのはさすがにイヤだ。
こうして先に手を回すことで、ホームルームで私の苗字が御堂に変わったということをみんなに知られずに済むわね。
「風原さん……少しいい?」
私は上機嫌で教室へ向かおうとすると、柊さんに声をかけられた。
「柊さん……? 何かしら?」
「……風原さんって御堂君と一緒に暮らしてるんでしょ?御堂君から聞いたの」
「え……っ!?」
柊さんの言葉に、私は戸惑いを隠せなかった。
彼方のやつ……!
あれだけ他言無用だって言ったのに、柊さんには簡単に喋っちゃうわけ……っ!?
「それと、わたし御堂君がしているエリシア・オンラインというゲームをしてて、御堂君とは同じチームに所属しているの」
「へ……へぇ~、柊さんってゲームするのね……」
「……わたし、風原さんが御堂君と一緒に暮らしていたとしても負ける気ないから。わたし、御堂君のこと諦めないから!」
「え……?」
「わたしの言いたいことはそれだけ。それじゃあ教室で……」
柊さんの言葉を聞いて、私は思わずドキッとした。
それは確かな宣戦布告だった。
私は柊さんの背中を見つめながら、手を握りしめたのだった……。
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