0話 2人の怪盗
世界最大のカジノ《アスター》。広大な土地には様々なゲームが用意されており、世界中から人が集まっている。
女を両手に抱えブランドものの服を身に纏った勝者、その横には全てを失い落胆するもの。
このカジノの推定年商は約1000兆円。全てが、カジノの中心のメインタワーの金庫に保管されている......らしい。
_カジノ内高級ホテルの一室_
「あれがメインタワーか!!!」
レイはそう言いながら、手を望遠鏡のようにして覗いている。
「決行は明日だよ?すごい張り切りようだね〜」
僕はレイの今までにないよ張り切り様に少し驚いてしまう。
僕たち2人はとある怪盗団に所属していて、その中実戦部隊。アジトにいるメンバー達から指示を受けながら任務を遂行する。
もちろん、ただの強盗ではない。このカジノにある潤沢な資金のほんとどが闇に包まれた裏金であることが調査で判明している。
さらには、このカジノでお金を失った人たちを自身売買してる、なんて噂もあるくらい。
「悪には悪を」。それが僕たちが所属する怪盗団のモットーだ。
「明日の祭の開会式に、あのタワーの地下に潜入するんだろ?」
「うん。明日はこのカジノ最大級のお祭り。警備は信じられないくらい限界だろうけど......」
僕は鞄からカードを取り出す。黄金に光るそのカードには「VIP」と刻まれている。
「僕たちはこのカードがあるから、中のVIPエリアにアクセスできるんだよ?」
「そうだったのかー。全然話聞いてなかったわ」
レイはこの通り、基本作戦会議には出席せず、実務ばかりをしている。だからこそ、僕がペアになってるんだけどねぇ〜。
「ま!とりあえず明日になったらなんとかなるだろ!とりあえず夕飯食べようぜ〜」
「ふふ。まぁそうだねぇ〜」
僕たちはホテルの最上階のレストランに行き、そのまま一日を終えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日
カジノ内は朝から騒がしい雰囲氣に包まれていた。本祭は昼から始まるらしく、会場の設営にはたくさんの人が動員されていた。
僕たち2人はスーツ姿に着替え、早めの準備を始める。
「なんだかんだ様になってるじゃん」
僕たち2人がスーツを着たくらいで、果たしてVIPに成りすませるのか、と思ったが案内なんとなるものだった。
「そうか?ミヤビも似合ってるぞ?」
ありがとうと一言述べて、鞄からさらに装飾品を取り出す。これが今回の要になる"仮面"だ。
VIPルームに入れるのは、世界各国の大富豪達。その中には、もちろん身バレをしたくない人達も大勢いる。
そのため、VIPはカジノ敷地内で仮面の仕様が求められている?
そして、装備一式を装着した頃には、祭の開始時間数分前になっていた。
「さ〜て、そろそろ行こうか」
「よっしゃ!いっくぞ〜!!」
_メインタワー玄関前_
祭りの開始の合図とともに、特設ステージが用意されているメインタワー付近もかなりの賑わいをみせている。
そして、メインタワーの裏玄関前にたどり着いた。
「Can I see your card?」
ドアの前に立つガタイのいい黒服にカードを見せる。偽造カードで突破できるのかとヒヤヒヤしたが、意外にもあっさりと突破することができた。
ドアの先には地下へと続く階段があった。その階段を降りると、そこには、黄金に輝いた壁、装飾は全て宝石で飾られている。
「すっげぇ〜なここ」
レイがキョロキョロと辺りを見回しながらうろつく。
「レイ。あんまりうろつかないで、早く金庫の方へ行かないと......」
すると、僕たちの背後から声をかけられる。
「やあ。君たちも金庫を見に来たのかい?」
声をかけてきた主は、鹿の仮面を被った背丈の高い筋肉質の男。身なりからして、VIPの客だろう。
「はい。中々ないですからね、こんか大金を見る機会なんて」
「あ〜そうだろうね。私も同じさ。札束だけじゃなく、金の延べ棒やら宝石やら。まるで巨大な宝箱だ」
このVIPエリア最大の特徴は金庫が見えること。超強化ガラスで囲まれているので、内部が透けて見える様になっている。だからこそ、ここから盗むのは難しい。
「そうだ。よければ私と一緒に見に行かないかね。私もここに入ってきたばかりなんだよ」
正直、計画を遂行するには誰かと一緒に行くのは愚策だ。だが、ここで断ってしまうのも怪しまれるだろう。
「ぜひ。一緒に行きましょう。」
僕はそう言いながら、こっそりとレイにスマホでメッセージを送る。
-----Message--------
ミヤビ『僕が彼の横につくから、金庫前のゲートを越えたら停電させるように連絡してくれ』
レイ『了解!』
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今回はアジトに残ってくれているハッカー班が総指揮をとっている。僕たちの連絡後に施設一体を停電させて混乱を招く。という単純な作戦だ。
メインとなってる僕たち以外にも、裏から警備隊に扮して潜入しているメンバーがいるらしい......が。それらしき人がいないのが気がかりだ。
「君たちは、どんな仕事をしているんだい?すごく若いように見えるけども」
男な僕たちの職種について尋ねてくる。ここにいるのはもちろん世界最高峰の富豪たち。気になるのも当然だろう。
「あ〜まぁ。深くは言えないんですけど、」
僕たちは20代前半、こんな若くにして大富豪だなんて、中々見られないケースだろう。
「僕たちが何かしたというか、親から引き継いでるみたな感じですよ」
大富豪の息子がくるということもあるだろう。仮面を被らさせるくらいにはプライバシーに配慮されている場だ。この一瞬さえ乗り切れれば......
その直後、あたり一体の電飾や照明が消えた。レイが停電を要請してくれたのだろう。
「な、何事だ!?」
困惑するその男を蹴り飛ばし、金庫前へとかける。
「ミヤビ、大丈夫か?」
その後ろからレイも走ってくる。
「もちろん。金庫前のゲートが閉じる前に行かないと」
金庫前のゲートを通り越す。それと同時にダクトから大量の煙が噴射された。
「なっ......」
毒ガスの危険を考慮し、急いで口と鼻を覆う。そして、すぐにレイのそばに駆け寄る。
「ゲホッ、ゲホ。ミヤビ!何か聞いてたか?」
「いいや。何も......」
その直後。混乱に陥り逃げ惑っていたVIP達の足音が止むの同時に、1人の足音がこちらに向かってきた。
「やあ。いい表情をするねぇ」
ニヤリと笑いながら、僕たちの目の前に来たのは、つい先ほどまで行動を共にした鹿面の男性。
その男は、仮面を脱ぎ去り警察手帳を突き出した。
「アストニア警察だ。お前らを、現行犯で逮捕させてもらう。」
潜入捜査官?にしてはうまくいきすぎでいる。入室してすぐの僕らを怪盗と見抜くなんて、そんなことができるとは思えない......
「ど、どういうことだっ!なんでそのゲートを開錠できる!?」
レイが男に向かって声を上げる。
「ん?あー、まだ気づいてないのか......」
そういうと、男はポケットから折り畳まれた2枚の紙を取り出す。
そこには、僕。そしてレイの顔写真とデータが記載されていた。
「な、なんでそんなものを......」
「君たちはねぇ。仲間に売られたんだ......気づかなかったかい?」
「なっ、そんなはずっ......レイ!今すぐ逃げるぞ!」
「あ、ああ」
裏切られたという事実に動揺を隠せないが、今はとにかくこの男を振り切るしかない。男の最後には誰1人としていない。実戦経験もある。なんとか振り切れるはず......
そう思い腰に付けていた拳銃に手をかけると、突如男はガスマスクのようなものを取り出し、顔に装着した。
すぐにレイが飛びつき、男に殴り掛かろうとするも軽く弾き返される。
「くっ......」
「......残念」
そう一言残すと、男は取り出したスイッチを起動させる。
直後、先ほど白煙が噴出されたダクトから、再びガスのようなものが噴出される。
「なっ、お前!」
視界が滲み、一瞬にして暗闇に包まれた。
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その後、裁判はスムーズに終わってしまった。下された判決は死刑。通常の強盗でここまでくだることはない。だが、このカジノは元から悪い噂が立っていた。
非合法な賭けにも警察が関与しなかったり、悪い政治家が関わっているなど。
「さあ。ここがお前らの最後の家だ」
1人の看守が僕たちを含めた囚人達にそう告げる。
目の前に聳え立っているのは、超巨大な戦艦。使い古された歴戦の個体のような古めかしく傷のついたボディ。
そんな艦体にもいくつか増設されたでたろう場所もいくつかあった。
重要囚人輸送監獄艦。通称【獄艦】。死刑囚の中でも特に危険とされる囚人だけが乗船させられる。
死刑が執行される施設があると言われている島まで、海上で収監するため脱獄不可能の監獄と言われている。
『ミヤビ......どうする?』
『どう......しようか』
看守にバレないよう、小声で話しながら入り口へと続く道を歩く。
脱獄不可能。そんな異名のついた監獄で、ぬくぬくと過ごすようなことがあっていいだろうか。
そんなはずはない。誰もできなかったなら、自分が先駆者になればいい。
僕は、艦の入り口を跨いだ瞬間に心に決めた。「絶対に、ここから脱獄してみせる」と。
「ようこそ。獄艦へ」
この看守の言葉が、20日間の監獄生活の始まりだった。
つづく。




