エンディング
（スタジオの照明が柔らかくなり、温かみのある光が4人の対談者を包む。長い議論を終えた彼らの表情には、疲労と同時に、充実感と相互理解の光が宿っている。チャーチルは葉巻を灰皿に置き、ビスマルクは空のビールジョッキを見つめ、スターリンはパイプを膝の上に置き、ルイ14世は扇子を静かに閉じている）
あすか：（中央に立ち、クロノスを胸に抱く。その表情には深い感動が浮かんでいる）「長い夜でした。4時間に及ぶ議論——」
（ゆっくりと4人を見渡す）
あすか：「権力の正統性、自由と秩序、理想の指導者、そして結果。4つのラウンドを通じて、皆さんは激しく対立しました、ですが——最後には、皆さんは理解し合いました。完璧な政治など存在しない。どの体制にも長所があり、短所がある。そして何より——」
（一歩前に出る）
あすか：「すべての指導者が、より良い社会を目指していた、ということ」
チャーチル：（静かに）「方法は違えど...な」
ビスマルク：「目的も違ったが、少なくとも——無関心ではなかった」
スターリン：（低く）「...そうだ」
ルイ14世：（小さく微笑む）「これほど真剣に政治を語り合ったのは...久しぶりですよ」
あすか：「皆さん、視聴者の皆様に——今夜の対談を通じて学んだことを、一言ずつお願いできますか？」
チャーチル：（立ち上がり、カメラに向かって。その目には情熱の炎がまだ燃えている）「諸君」
（葉巻を手に取り、それを見つめる）
チャーチル：「今夜、私は多くを学んだ。ビスマルクの現実主義、スターリンの平等への執念、ルイ14世の秩序への憧憬——どれも間違いではない」
（カメラをまっすぐ見る）
チャーチル：「だが、だからこそ言う——諦めるな。民主主義は完璧ではない。時間がかかる。混乱する。間違える。だが、それでも——人間を人間として扱える唯一の方法だ」
（拳を握る）
チャーチル：「自由のために戦え。議論せよ。投票せよ。そして何より——決して、独裁者に屈するな！」
（席に座り、ウイスキーを一口飲む）
ビスマルク：（立ち上がり、腕組みをする）「私からは簡単に言おう」
（鋭い視線で視聴者を見る）
ビスマルク：「理想論に酔うな。現実を直視しろ。政治はきれいごとではない。時には汚い妥協も、冷酷な決断も必要だ」
（一歩前に出る）
ビスマルク：「だが——それは目的ではない。手段だ。目的は国民の幸福、国家の繁栄だ。手段と目的を取り違えるな。そして何より——」
（チャーチルとスターリンを見る）
ビスマルク：「他者から学べ。自分のイデオロギーに固執するな。民主主義者もな、共産主義者もな。柔軟であれ。それが生き残る道だ」
（座り、ビールジョッキを掲げる）
スターリン：（ゆっくりと立ち上がる。その表情には、今夜初めて見せる複雑な感情が浮かんでいる）「...私は、多くを間違えた」
（全員が驚いてスターリンを見る）
スターリン：「方法は、もっと別のものがあったかもしれん。犠牲は、避けられたかもしれん」
（パイプを見つめる）
スターリン：「だが——」
（カメラを見る。その目には揺るぎない信念がある）
スターリン：「平等という理想は正しい。搾取のない社会、誰もが尊厳を持って生きられる世界——これは諦めてはならない夢だ」
（一歩前に出る）
スターリン：「歴史を学べ。過去の失敗も、成功も、すべてが教訓だ。私の失敗からも学べ。そして——より良い道を見つけろ」
（座る。その背中に、ある種の寂しさが見える）
ルイ14世：（優雅に立ち上がり、扇子を開く。だがその動作には、以前とは違う謙虚さがある）「朕は...今夜、多くのことを学びました」
（ゆっくりと歩く）
ルイ14世：「民主主義の柔軟性、現実主義の効率性、社会主義の理想——朕が知らなかった世界がありました」
（扇子を閉じ、胸に当てる）
ルイ14世：「だが朕は、やはりこう信じます。美しく生きよ、と」
（カメラを見る）
ルイ14世：「混乱の時代だからこそ、品格を保て。秩序が崩れる時だからこそ、優雅であれ。政治は汚れるかもしれない。だが人間まで汚れる必要はない」
（優雅に一礼して座る）
あすか：（深く息を吸い、ゆっくりと語り始める）「4人4様の、しかし全て——真摯なメッセージでした」
（クロノスを操作し、画面に今夜のまとめが表示される）
理想の政治とは——
・完璧ではないが、より良くあろうとし続けること
・一つの答えではなく、対話を続けること
・過去から学び、未来を築くこと
あすか：「民主主義も、権威主義も、全体主義も、絶対王政も——それぞれが、ある時代のある場所で、ある問題への答えでした」
（4人を見渡す）
あすか：「完璧な答えなどない。だからこそ——人類は問い続けます。議論し続けます。そして、少しずつ、前に進んでいくのです。では、最後に——今夜の対談について、率直な感想をお願いします。まず、ルイ14世から」
ルイ14世：（扇子で顔を仰ぎながら）「正直に申し上げれば...最初は不快でした」
（チャーチルたちを見る）
ルイ14世：「成り上がりだの、無作法だのと思っておりました。だが——」
（微笑む）
ルイ14世：「彼らも、朕と同じように、国を思っていた。時代は違えど、その真剣さは...同じでした。素晴らしい夜でした」
あすか：「ビスマルクさんは？」
ビスマルク：（豪快に笑う）「面白かった！久々に頭を使った。チャーチルの雄弁、スターリンの執念、ルイ14世の...まあ、優雅さ」
（ビールジョッキを掲げる）
ビスマルク：「意見は合わん。今後も合わんだろう。だが——対話する価値はあった」
あすか：「スターリンさんは？」
スターリン：（長い沈黙の後）「...チャーチル」
チャーチル：（驚いて）「何だ？」
スターリン：「貴公は敵だった。イデオロギーの敵、政治の敵。だが——」
（わずかに表情を緩める）
スターリン：「今夜、貴公の言葉に...一理あると思った。それだけだ」
チャーチル：（驚きながらも、微笑む）「...貴公の平等への情熱も、認めよう。方法には賛成できんがな」
（二人が短く笑う。歴史的和解の瞬間だ）
あすか：「チャーチルさん、最後に」
チャーチル：（立ち上がり、3人を見る）「今夜は...良い夜だった」
（葉巻を手に取る）
チャーチル：「私は彼らと戦った。歴史の中で、イデオロギーの上で。だが今夜——彼らの言葉を聞いて、理解した」
（一拍置く）
チャーチル：「我々は皆、不完全だ。間違いを犯した。だが——より良い世界を目指していた。その思いだけは、共通していた」
あすか：（小さくうなずき、クロノスを掲げる。スタジオ奥のスターゲートが、再び青白く光り始める）「皆さん、ありがとうございました。それでは、皆さんを時の彼方へお送りします」
（オーケストラが優雅に流れ始める）
あすか：「まず、太陽王ルイ14世——ヴェルサイユの栄光へお戻りください」
ルイ14世：（立ち上がり、優雅に一礼する）「あすか様、そして諸君」
（3人を見る）
ルイ14世：「今夜は...刺激的でした。朕の宮廷では、このような率直な議論はありませんでしたから」
チャーチル：「陛下、一つだけ——貴方の芸術への情熱は、本物でした。それは認めます」
ルイ14世：（嬉しそうに微笑む）「ありがとう、チャーチル殿。貴方の雄弁も...まあ、悪くありませんでしたよ」
（スターゲートへ向かう。振り返って）
ルイ14世：「さらばです、歴史の同志たちよ」
（優雅にスターゲートに消える）
あすか：「続いて、鋼鉄の人スターリン——クレムリンの執務室へ」
スターリン：（無表情に立ち上がる。だが去り際、チャーチルの前で止まる）「ウィンストン」
チャーチル：（立ち上がる）「ヨシフ」
スターリン：「...貴公とまた、戦場で会うことになるだろう。歴史の中で」
チャーチル：「その時は容赦せん」
スターリン：「私もだ」
（二人が短く笑い、握手する。会場に拍手が響く）
スターリン：（あすかに向かって）「良い夜だった」
（スターゲートに消える）
あすか：「鉄血宰相ビスマルク——ベルリンの宰相官邸へ」
ビスマルク：（立ち上がり、ビールジョッキを最後に掲げる）「諸君、楽しかった！」
（チャーチルに向かって）
ビスマルク：「民主主義者よ、まあ...悪くない議論だった。貴公の理想主義も、時には必要かもしれんな」
チャーチル：「卿の現実主義も、認めざるを得ん」
（二人が握手する）
ビスマルク：（あすかに向かって）「司会者殿、見事な進行だった。また呼んでくれ。次は『戦争と平和』でも議論しようじゃないか！」
（豪快に笑いながらスターゲートに消える）
あすか：「そして最後に、ウィンストン・チャーチル——議会の戦場へ」
チャーチル：（立ち上がり、葉巻に火をつける）「あすか殿、素晴らしい夜だった」
（あすかに向かって深く一礼する）
あすか：「光栄です、首相」
チャーチル：「今夜、私は多くを学んだ。敵からも、味方からも。歴史を超えた対話——これこそが人類の希望だ」
（カメラに向かって）
チャーチル：「視聴者諸君！理想を追い求めることを——決してやめるな！たとえ道が険しくとも、たとえ失敗しても——人間であることを、諦めるな！」
（葉巻から煙を吐き出し、Vサインをする）
チャーチル：「We shall never surrender！（我々は決して降伏しない！）」
（スターゲートに消える。拍手が鳴り響く）
（静寂が戻るスタジオ。あすかが一人、中央に立っている）
あすか：（クロノスを見つめて、穏やかに微笑む）「理想の政治とは何か——」
（カメラに向かって）
あすか：「答えは一つではありません。時代が変わり、社会が変わり、人々の価値観が変わる。昨日の正解が、今日の間違いになることもある」
（一歩前に出る）
あすか：「だからこそ、対話は続きます。民主主義者と独裁者が、理想主義者と現実主義者が、保守派と革新派が——永遠に議論し続けます」
（クロノスを掲げる）
あすか：「それが人類です。完璧ではない。間違いだらけ。それでも——より良くあろうとし続ける」
（微笑む）
あすか：「今夜の『歴史バトルロワイヤル：4つの玉座』——いかがでしたか？次回も、時空を超えた魂の対話をお届けします」
（クロノスが光り、画面に次回予告が浮かび上がる）
次回予告：「戦争と平和」
ナポレオン、孫子、マキャヴェリ、ガンジー——4人の巨人が激突！
あすか：「私はあすか、物語の声を聞く案内人。また、歴史の旅でお会いしましょう」
（クロノスが眩い光を放ち、あすかの姿が消える）
（画面が暗転し、エンドクレジットが流れる。BGMは静かで、しかし希望に満ちたオーケストラ）
—完—
