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結局は、許しちゃうんだよね(真珠side)

……あの時は、本当に何でもない会話だった。


文官の子はまだ若くて、きちんとしてて、一生懸命で。ただ、神前婚約式の誓詞の修正を持ってきてくれただけ。「ありがとう」って言ったのも、礼儀だった。相手が安心したように顔を赤くしたのを見て、「ああ、頑張ったんだな」って思っただけ。


ほんの少し、肩の力が抜けた瞬間だったのに。


後宮に戻る途中、空気が変わった。


影から現れたウルは、何も言わずに私を連れて行った。その目があんなに冷たくて、暗くて、熱を孕んでるなんて。


最初は、ああ……嫉妬させちゃったかな、くらいに思ってた。


ウルはいつも私に厳しい。他の男に愛想を振り撒くなって、何度も言われた。でも、それも愛されてる証拠だって、少しだけ、くすぐったく思ってた。


だから、部屋に連れ込まれたときも、最初は拗ねた子供みたいに文句を言うくらいだと思ってた。「楽しそうだったな」って、低い声で言われても、怖がるより呆れたくらい。ほんと、仕方ないなって。


でも。


……すぐに空気が変わった。


「礼なんか言うな」

「他の男に笑うな」


低くて冷たい声が、私の皮膚に突き刺さった。目が、青いのに深い底なしの暗さを湛えていた。


押し倒されて、唇を塞がれて、声も奪われた。頭を振って逃げようとしても、顎を掴まれて正面を向かされて、何度も何度も口を塞がれた。まるで「二度と他の名前を呼べないようにする」みたいに。


次に、身体中を噛まれた。


首筋、鎖骨、胸、腹、脚。どこもかしこも咬み痕だらけ。血が滲んで、内出血が青黒く広がっていくのを感じた。


爪が食い込んで、皮膚が裂けた。掻き毟られるように、意図的に傷を刻まれるたび、息が詰まった。手首を握られて、爪が食い込んだ。肩を掴まれて、青黒い痣が浮かんだ。乳首を噛まれ、抓られ、引っ張られて、痛みが鋭く走った。


身体に青痣が広がるたびに「俺の色」と呟く様は、さすがの私でもドン引きしたわ。


そして極め付けに、穴という穴を執拗に犯された。


何度も、何度も。拡げられて、突っ込まれて、かき回されて、泣き叫ぶ声すら掠れていった。


もう、散々だった。


身体の感覚が痛みで麻痺して、なのに刺すように熱くて。涙も涎も垂れ流して、喉が痛くて声が出なくなった。自分の汗と血と体液にまみれて、もう人間じゃないみたいだった。


でも。


その間、ずっとウルの顔が見えた。無理やり睨むように、顎を押さえられて、顔を背けられなかった。


ウルの目が。私を睨んでるのに、泣きそうだった。私を痛めつけるたびに、自分も痛いみたいに。噛みつくたび、吐き捨てるように「俺だけだ」って言いながら、喉が詰まってた。呼吸が荒くて、唇が震えてた。「お前が悪い」って言いながら、目が泣きそうだった。


私を犯し尽くしながら、壊しながら、壊れていったのはウルの方だった。


痛いのは私だけじゃなかった。私を壊しながら、ウルも一緒に壊れてた。血が滲む私の身体を抱きしめながら、泣きそうな声で名前を呼んでた。


……もう、本当に仕方がない人だわ。


私も馬鹿だなって思う。あんなことされて、もう二度と触られたくないはずなのに。怖いはずなのに。


でも、その顔を見たら、泣きそうな声を聞いたら、結局、私の方が折れちゃう。ウルを置いて逃げられない。……突き放せない。


私をこんなにしたのもウル。でも、ウルをこうさせてるのも私。


仕方ないな。だって、私が惚れたのがこの人だから。


結局私は、許しちゃうんだよね。


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