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ある高貴な女の末路(残酷描写注意)

闇市の地下牢。そこは人の皮膚から立ち上る汗と血の生臭さ、そして腐敗した吐瀉物の酸っぱい刺激臭が充満していた。石壁には鎖が打ち込まれ、そこかしこに黒い染みが残っている。泣き声も、喘ぎ声も、すべて反響して絡み合い、呻くような地鳴りに変わっていた。


その隅の小さな檻に、娘は転がされていた。最初の夜は、まだ元気に高慢に泣き叫んでいた。


「離して!こんな汚いところで寝られると思ってるの!私を誰だと思って――!」


反抗的な目をしている女。だが、番人は鼻で笑っただけだった。


「いいから縛れ」


太い腕が掴み、床に押し付けられる。そのあまりに痛みに娘は絶叫した。番人たちは面白がり、その声が小さくなるまで殴り続けていた。


意識を失った彼女が次に目を覚ました時、すでに体の中に薬が入っていた。白濁した液体を無理やり飲まされ、吐いてもまた飲まされ続ける。身体中の血管に針を刺され、青黒い痣が広がった。薬が入ると、途端に頭がぼうっとする。そして、とにかく喉が渇く。


「なに……これ……」


声が震える。頬を伝う涎を自分で拭えなかった。腕は後ろに縛られ、足首を縄で天井から吊られていた。逃げようともがくたびに、荒縄が食い込みズタズタに皮膚が裂けた。痛みに悲鳴をあげ、助けを呼んでも誰も解かない。水をもらえずに泣き喚くと、また薬を打たれた。


「いい感じだな。もうほとんど意識飛んでる」


「客が来るまでに仕上げろ。特注だ」


番人たちの声は笑っていた。


「異国の高慢な女をぶっ壊してくれってよ」


「病気持ちのオヤジが楽しみにしてるんだ」


「どんな声出すか、聞きたいもんだな」


汚い笑い声が檻に響いた。時折クリアになる意識の時、娘は泣いた。泣きじゃくって喉を潰した。けれど声は止められなかった。


「帰して……お願い……お父様……!」


呻き声が石壁に反響したが、いつまで経っても誰も助けてくれなかった。


日に何度も、血管に薬を打たれた。麻痺するような快感と、焼け付くような痛みが交互に襲った。身体が勝手に痙攣し、遠くなる意識の中で笑い声が聞こえた気がした。


「反抗する気力も抜けたな」


「上出来だ」


娘の眼球が乾き、焦点が合わなくなった。一体どのくらいここにいるのか、そんなことすらわからず、起きているのか寝ているのか、自分のことがどんどんわからなくなっていく。誰かが頬を叩いて目を覚まさせた。


「寝るな。客が来るんだ」


ぼんやりする意識の中、娘は尿を漏らした。誰も拭わない。むしろ罵られた。


「みっともねえな」


笑い声が石壁に長く反響していた。


ある夜。ついに買い手が来た。豚のように肥満し、皮膚は其処彼処ただれていた。唇は潰瘍で裂け、黄色い歯が数本まばらにのぞいていた。呼吸がヒューヒューと濁った音を立てていたが、その目がいやらしく光っていた。


「これか?……噂の高慢な女ってのは」


番人が檻を蹴った。


「ほら、挨拶しろ。お前のご主人様だぞ」


娘は反応しなかった。薬で意識が朧だった。それでも怯えきった目を動かし、唇を震わせた。


「や……やめ……」

 

「ハハッ!いい声だ」


男の嗤い声が石壁に響いた。

 

「薬増やせ。壊れるまで抱く」


番人が頷いた。


「そいつ用のがある。痛みも羞恥も、全部快感に変わるやつだ」


「いいな、それでこそ商品だ」


痛みも、快感も、全部が混じり、喉を潰すほど叫んだ。自分の声が他人のもののようだった。意識が飛ぶたびに薬を打たれた。目を開けたら、血と体液に塗れていた。


「もういいだろ、こいつ死ぬぞ」


「まだだ。泣かせろ。声が潰れるまで」


買い手は笑った。喘ぐような呼吸で、「もっと」と娘は呟いた。


日数の感覚は完全消えた。喉が裂け、声は濁音になっていた。ただ薬に塗れて、反射で泣いて、痙攣して、失禁した。名前を呼ぶこともできなくなった。

「お父様」と言いたくても、口が動かなかった。自分の名前すら忘れかけた。ただ、泣いた。泣くことだけは止められなかった。


それを見て、買い手は満足そうに臭い息を吐いた。

「いい壊れ方だ」「最高だな」

そんな声を、遠くで聞いた気がした。もう何も分からなかった。薬を打たれた腕から血が流れても、誰も縛りを解かなかった。


娘の尊厳もプライドも、人格すらも砕け散った。かつて屋敷の奥で高慢に笑っていたその顔は、涙と涎と血と体液にまみれて歪み、薬で虚ろに開かれた目は何も映さなかった。商品としての価値すら、最終的にはただ「壊れた人形」として値がつけられた。


それでも、買い手は飽きもせずに抱いた。

「泣くからいいんだ」「壊れても泣かせられる。なんて素晴らしい」

笑い声がどこまでも続いた。悲鳴も、喘ぎも、最後は泡を吹く音に変わった。そして、声が潰えた。泣き声が聞こえなくなった頃、地下牢の空気はいつもより静かだった。


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