一
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和也は自室の見慣れた天井を無機質な瞳で見つめていた。その目には何も映らない。電灯も、壁紙も、明日も。
(やる気ない……)
ベットの上に仰向けに倒れ込み、そんなことを思う。締め切った窓からは、隠し切れない日光が溢れていた。
真昼間。午後十二時。彼はたった今、眠りから覚めたところだった。今日は久々の休日だから、というような頑張るお父さん状態ではない。今日は火曜日。もろ平日である。
では、自宅で仕事をしているのか。否。彼はれっきとした学生である。大学に受かったと同時に上京し、都心から少し離れた所に住む、大学二年生である。
では、今日は休講なのか。否。本日、通常通り授業は行われている。サークルも活動中。ちなみにバイトも午後に入っていたりする。
だがしかし。多忙なはずの和也は、まったく動く気になれなかった。これが今日始まったことならば、許容範囲にもなるのだろうが、残念ながら一週間目。ヒゲは処理されずに伸びきって、髪は風呂にも入っていないため、ぼさぼさ。極め付けは一週間同じ服を着ているというていたらく。
それもたった一つの事柄が理由にあげられる。
(めんどくせ……)
無気力。アパシーだった。今は五月も終わるとき。少し遅れた五月病と考えられれば、さして違和感を感じることもない。
それでも、一週間ほとんどベットの上から出ない生活を送ってきた和也は異常だった。買い溜めしておいたカップ麺も底をついた。このままいけば、野垂れ死に。
(それも悪くないかもな)
そう思う和也は、ある意味終わっていた。
それでも、小腹が空いてくると、死というものが鎌首をもたげてきた。今となっては死すら脅しにはならない。ただ、この空虚感には堪えられそうにない。何もないで死ぬのは、流石に御免だった。
のそのそとベットから這い出ると、テーブルの上に置いてある財布を取り、外に出た。服装は一週間ぶっ続けに着用しているスウェット。元々は端正の良い顔も、今では薬でもやっているような危ない者にしか見えない。ご近所さんの評判も悪くなること必須。
(ま、どうでもいいけど)
今となっては人からの評価は全く気にしない和也だからこそ、このままの恰好を貫き通す。
アパートを出て、近くのコンビニへ。正午の道路は人通りも少なく、元々田舎なのもあってか、我が物顔で横断することができた。
程なくして着いたコンビニで、カップ麺などの簡易食品を買い占める。その他生活に最低必要なものを買い物カゴに詰めると、レジに持っていく。
和也を見ても店員は何のリアクションも起こさなかった。淡々と業務をこなす。和也も金を払い、店を出た。
まるで無機質な世界。車が一台、眼前を横切った。蝶が一匹、鼻先を掠めた。
(……)
ふとこの世界をぶち壊したくなった。殺人の一つでも犯せば、この世界は色を変えるのだろうか。
ないだろう。自分一人の力で世界が変わるはずもない。不条理なのだ。いつ、どんなときも。不平等なのだ。誰に、なんにしても。
絶望を従えながら部屋に戻ると、和也は思わず玄関先で買い物袋を落としていた。
部屋の中に見ず知らずの女性が一人、立っていた。




