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1話

ググー。

 自分のお腹の音で私はベッドから起き上がった。

 部屋にある掛け時計を見たらちょうど午後12時に針が回っていた。

 私はパジャマのまま、自分の部屋から出た。

 そして、私はキッチンに着くとカップ麺置き場である戸棚を開けた。

 私は戸棚まで手を伸ばしてカップ麺を取ろうとしたが、戸棚には何も入っていなかった。

 そういえば、お母さんが仕事に行く前にカップ麺無いからお昼ご飯はコンビニで何か買ってこいと言ってたな…。

面倒臭いなと思いつつ、私は渋々私服に着替えて部屋に置いてある自分の財布を手に取った。

 そして、そのまま私は外靴を穿いて玄関の扉を開けた。

 その瞬間、眩しい光が私に降り注いだ。

 その眩しい光が鬱陶しくてもう買いに行くの辞めてもう一回ゲームをしようかなと思い、Uターンしようとした。

だが、今日は朝ごはんを抜いたせいか、かなりお腹が減っていた。

 仕方なく私は玄関から一歩踏み出し、歩き始めた。

なんで私のお金からお昼ご飯買わなくちゃいけないの??マジでめんどい…後でお母さんにお金請求しよっと

 そんなことを思いながらコンビニへの道を歩いた。

 横断歩道を渡ろうとした時に横からトラックが通ってきた。

 私はトラックが来る前に横断歩道を渡り切ろうとしたが、ゆっくりな運転で道路を進んでいたトラックが突然速度をあげた。

「え!?」

 私はびっくりして急いで走って横断歩道を渡り切ろうとしたが、トラックが物凄いスピードで向かって来るのを避けられず、私はトラックと衝突した。

 私は何が何だか分からず、倒れたまま動くことが出来なかった。

「熱っ」

 違和感を感じて、自分のお腹を見たら大量の血が出ていた。

「ちょっと!あなた、大丈夫!?」

 スーツを着た女の人が駆け寄ってきた。

大丈夫ですよ!と言いようとした瞬間、私は血を吐いた。

 そのまま意識が遠のいた。

 あっ…これ死んだわ。

 何となくそう思った。





「ミルクの時間ですよ〜」

「!?」

 私は若い女の人の声で目を覚ました。

「はいはい、お口開けてね〜」

 若い女の人が私の口に哺乳瓶を向けてきた。

「ケッ!!(要らんわ!)」

 私はミルクの入った哺乳瓶を手であしらった。

「お嬢様!ミルクしっかり飲みましょうね!」

 そう言って再び、若い女の人は私に哺乳瓶を近づけてきた。

「おぎゃー!!!(辞めろー!!!)」

私はそう言って泣いて暴れた。

「お嬢様!?ごっごめんなさい!よしよーし!」

 私は泣いて訴えるが、若い女の人には伝わっていないみたいだ。

 その時、部屋の扉が開いた。

「あらあら、どうしちゃったのかしら?」

 何やらまた別の女の人の声がした。

「申し訳ございません!ご機嫌ななめなのか、ミルクをあげたら突然泣き出してしまって…」

 若い女の人はそう言って私をあやした。

「ちょっと失礼するわね」

「あっはい!」

 そう言って今部屋に入ってきた女の人はベッドにいた私を抱き上げた。

「おぎゃ!?(なに!?)」

「よしよし、セリーヌちゃん。ミルク嫌だった??」

 セリーヌ…て誰やねん。

「あら、泣き止んだ。良かったね〜」

「おぎゃー((何となくそう言ってみた。))」

 というか、この女見た事あるな…。

 あ!!!

 私はこの瞬間全て思い出した。

 ここは私がやっていたゲームの世界。

 私はその世界に転生したのだ。

 このゲームのシナリオは、魔王を倒すために魔法使いが勇者を召喚し、勇者は特訓したり仲間を集めたりして魔王を倒すという話。

さっき女の人が言っていたセリーヌという人物。

 おそらく、ノヴェル・セリーヌの事だろう。

 ノヴェル・セリーヌは勇者の仲間で治癒魔法が使える魔法使いの公爵家の娘だ。

元々、高い地位の出身でありながら、勇者と共に魔王と戦うと決心した彼女に国民達は偉く感激していた。

私が国民に慕われる治癒魔法使いノヴェル・セリーヌに転生したというのは、悪くないな。

いや、けど待てよ?

セリーヌって確か…

 勇者を庇って死んでなかったか…??

 …(無言)

 え?私死ぬ運命なの??

 死ぬなんて絶対嫌!

 セリーヌは勇者の事が好きで、勇者が瀕死の時に魔物に襲われそうになった時、セリーヌは勇者を庇って死んだのだ。

 勇者のくせに女の子に守られてるとか…ダサッ!

 絶対こんな未来変えてやる!

 私はそう強く決心した。

 後から来た人がおそらくセリーヌのお母さんだ。ミルクを飲ませようとした人、えっーと、

 使用人かな?…誰だか知らんが、若い女の人から差し出されたミルクを私は仕方なく飲んだ。




 

時は経ち、私は3歳になった。

「お母様〜!」

 私は小さな足でトコトコお母様の所まで歩いて駆け寄った。

「セリーヌ、どうしたの?」

「私、綺麗なお花が見たい!!」

「あら、そうなのねぇ♪一緒に庭園に行きましょうか」

「うん!」

 赤ちゃんの時とは違い、歩いたりしっかり喋れるようになった。



「綺麗なコスモスが咲いたわねぇ」

 お母様はコスモスの花をうっとり見つめていた。

 私もお母様が見ていたコスモスの花を見ていた時、

「わ!!あそこに蝶!」

 そう言って花を踏み潰しながら蝶を追いかけるセジョンの姿が見えた。

「何してるのセジョン!!花の上を歩くのは辞めなさい!」

 お母様はセジョンを怒ったが、セジョンは聞いてなかったのかまた何処かへ走っていった。

 その様子に、花を大事にしているお母様は鬼の形相でセジョンを追いかけて走って何処かに行ってしまった。

 私は踏み潰されたコスモスを見た。

 無惨に花弁が散って土に埋もれていた。

 あー、これはもうダメだな…。

 …いや、まだ生けるかな??

 私はダメ元で蘇生魔法を使った。

 すると、見る見るうちにコスモスが綺麗に元に戻った。

 3歳の魔力量は普通少ないが、セリーヌの体は生まれつき魔力量が多いみたいだ。

「途中で見失ったわ…、セジョンったら…!しばらくお菓子は禁止ね!」 

ちなみに、セジョンという人物は私の2つ上の兄だ。

「あら、花が治ってるわ!」

 お母様は私が治したコスモスの花を見て驚いた。

 私はそんな様子にニコッと微笑んだ。

「まだ3歳なのに花を魔法で治すなんて!セリーヌは本当に凄いわね!将来は立派な魔法使いになるのかしら??」

 そう言ってお母様は喜んで私の頭を撫でた。

「代わりと言っては何ですが、お母様、実はお願いがあるんですが、」

「私の可愛いセリーヌ、何でも言ってごらんなさい。」

「実は…」




 数週間後。

トントン。

 扉を叩く音が聞こえた。 

「ちょっといいかしら?セリーヌ」

 そう言ってお母様が私の部屋に入ってきた。

「何??お母様。」

「私が間違ってたわ…」

「何も間違ってないですよ。お母様。」

「貴方にスマスを上げたのが間違だったわ!!」

「いやいや、こんな最高な物を下さって間違いだなんてとんでもない!!むしろお母様には感謝しているんですよ!!」

「何言ってるのよ!!ああ、どうしましょう。まだ3歳の娘が…」

 そう言ってお母様は落ち込んだように肩を落とした。

「え?どうしたんですかお母様〜」

 私は今の自分を振り返ってみた。

 今の格好を言うと、もうお昼なのにパジャマで使用人に頼んだスイーツを口に法張りながらベッドの上でゴロゴロとスマスをしているのだ。

 スマスとは…電話やメールは勿論、ゲームや漫画などがあり、いわば現代で言うスマホみたいな物だ!

 まさか異世界にこんな物があるなんて…、私も初めて知った時はとても驚いた。

 私は前世では、毎日ゲームをしていたニートだった。

 だが、これでもゲームの楽しさを知る前は素直で良い子だったのだ。

 真面目に学校に行って勉強も頑張ってしていた。だが、ゲームを知った日から私は家から出なくなった。

 私は何故かゲームの前だとグータラ人間になってしまうのだ。

「スマスはセリーヌがもう少し大人になるまでお預けね…」

「はぁ!?」

 私はお母様の言葉に納得出来ず反論した。

「スマスは私の物よ!?絶対にお預けなんて嫌!」

「ならベッドから出てスマスを辞めなさい!」

「それも嫌!」

「…駄々をこねても駄目です!」

 お母様はそう言ってスマスを私から取り上げた。

「そんなぁ!!私のスマスがぁぁ!!!」

「セリーヌはまだ3歳よ?スマスなんかよりお母様と一緒にお花見ようね〜」

クソぉぉ!!お花とかどうでも良いんだよ!!スマスを渡せや!!

 「お花、見飽きた。スマスで良い。」

 私は素っ気なくそう言った。

「なら、ピクニックに行きましょう!神秘的な湖の所を…」

「スマスで画像検索すれば花も湖も出てくる。画像で十分なんだよね。ね?お母様?」 

 私はニッコリそう言った。

「ははは、どこで子育て間違えたんだろう私…。」

 そう言ってお母様はホロリと涙を流した。



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