朝日と目覚め
静かな朝。
夏陽は学園の屋上で横たわる玲のそばに腰を下ろしていた。
玲の顔には疲労の色が残り、髪が少し汗で張り付いている。
それでも、夏陽はその顔にどこか穏やかな表情を見て取った。
「……無茶ばっかりする奴だ。」
夏陽は静かに呟き、玲の額にかかった栗色の髪をそっと払いのけた。
そのとき、玲が小さく呻いた。
「……う……。」
瞼がゆっくりと開き、赤みがかった茶色の瞳がぼんやりと夏陽を見上げる。
「君……どうして……?」
「お前が暴走したから、止めただけだ。」
夏陽は冷静な声で答えたが、その目には安堵の色が浮かんでいた。
玲は小さく目を伏せ、小さな声で呟いた。
「……また、迷惑をかけたね……。」
夏陽はしばらく無言だったが、静かに答えた。
「お前が無事なら、それでいい。」
その言葉に、玲の目がわずかに揺れる。
それでも、彼は少しだけ微笑んで、力なく呟いた。
「……本当に、不思議な人だね。」
夏陽は黙ったまま立ち上がり、玲に手を差し出した。
「立てるか。」
玲は差し伸べられた手をそっと掴むと、夏陽の力を借りてゆっくりと立ち上がった。
朝日が昇る中、二人は学園の屋上に並んで立っていた。
玲は遠くを見つめながら静かに呟く。
「君が隣にいてくれるなら……僕もこの力を受け入れられる気がする。」
夏陽は隣の玲を見下ろし、短く言った。
「なら、隣にいる。」
玲はその言葉に驚いたように目を丸くし、すぐに静かに笑みを浮かべた。
朝の柔らかな光が二人を包む中、玲はそっと目を閉じた。
「……ありがとう、夏陽。」
その言葉が静かに空に溶けていく中、朝日が二人を優しく包み込んでいた。
彼らが迎える未来はまだ未知のまま。
それでも、その一歩は確かに始まっていた。