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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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91話 大剣3

 獣魔人の街で5日目となる今日。毎日ヨルと白狐、銀狼と蒼龍は組み手を行いに街の外に出ていたので、今日は休息日とした。

 それにしても今朝から金獅子がソワソワしている。

「おい。金獅子。どうした?さっきからソワソワしてるように見えるが何かあったか?」

 思わず聞いてみた俺。

「む?おぉ。今日あの大斧が解け終わってインゴットになるはずなんだ。そうなればいよいよ大剣の修復作業に入る。今日はその知らせを受ける予定なのだ。」

「知らせを受けてどうするのさ?」

「む?俺様の大剣がどの様に修復されていくのか気になるからな。見に行く約束になっておる。」

「見に行くったって行ってすぐ直るものでもないだろ?」

「うむ。今日から暫くは修復作業を見てくるからな。俺様の飯はいらん。」

「ずっと付きっきりで修復作業見るのか?」

「む?何かおかしいか?」

 わからないと言った風に首を傾げる金獅子。

「いや。だって修復作業に5日間くらいかかるって言ってただろ?その間ずっと見てるのか?」

「うむ。何か俺様にも出来ることがあるかもしれんしな。」

「そうか。まぁ、好きにしてくれ。」

「うむ。何か用事があればショウリャンの工房に来てくれ。」

「わかったよ。手持ちの武器がないんだ。街中とはいえ一応敵地だから気を付けてくれよ。」

「うむ。心得た。」

 そう言ってまたソワソワし出した金獅子。ほっとこう。


 この5日間街に出ていた面々からは追加で金を要求される事もなかった。

 さすがに5日間では全額使いきるほどの買い物はしなかったらしい。

 しかし、思いがけない人物から相談を受けた。

 黄豹が申し訳なさげに言ってきた。

「あのね。欲しい武器があったの。」

「いつもの刃付トンファーとは別にか?」

「ん。トンファーの次に得意な武器。トンファーだと小回り効かないから小さいのが欲しいの。」

「どんな武器なんだ?」

「ん。(さい)って言うの。」

「さい?知らないな。んじゃ今日一緒に見に行くか。」

「ん。お願い。」

 と言う事で今日は黄豹と買い物に行くことになった。


「それにしても黄豹は不思議な武器ばっかり使うのな。」

「ん。師匠が使ってた。暗器使いの凄腕の殺し屋だった。」

「その師匠は今も現役か?」

「ん。半年前に死んじゃった。別の殺し屋に狙われたの。」

「そっか。じゃあ半年前から1人で殺し屋やってるのか?」

「ん。そう。師匠に教えて貰った武器が沢山あったから。」

「そっかぁ。んじゃ殺し屋としての歴も俺のが長いんだな。」

 目的の店まで歩きながら2人で話す。

「ん。黒猫はなんで殺し屋やってたの?」

「俺の場合は親父が師匠でさ。親父っても実の親じゃないんだけど、赤ん坊の時に拾ってくれた人が殺し屋だったんだ。だからそのまま殺し屋としての英才教育を受けたわけよ。」

「ふーん。お父さんが殺し屋か。僕も両親いないんだ。ちっちゃい頃に殺されちゃって。で、フラフラしてたら師匠に拾われたの。」

「そっか。似たような境遇だな。俺達。」

「ん。似てるかも。でも僕が師匠に会ったのは10歳の頃だから赤ちゃんの時から教育受けてる黒猫の方が先輩。」

「だな。今日から先輩って呼んでもいいぞ。」

「それはいや。」

 そんな会話をしていたら目当ての店に到着したらしい。

「ん。あれ。」

 そう言って壁に飾られた武器を指さす黄豹。

 そこには蒼龍が持つ三叉の槍の短い奴と言うか、剣ではなく、針に近いような真ん中の長い棒の左右に真ん中の針の3分の1くらいの長さの針が付いた不思議な武器だった。

「1本金貨4枚か。1本でいいのか?」

「ん。両手に欲しいから2本。」

「金貨8枚か。ちなみに何製なの?」

「お店の人に聞いたらミスリル製だって。ここにはアダマンタイト製はないみたい。」

「ミスリル製なら金貨8枚は妥当だな。よし、買おう。」

「いいの?」

「だって、欲しいんだろ?」

「うん!」

 珍しく「ん」じゃなくて「うん」と返事した黄豹は凄く嬉しそうだ。

 普段あまり感情が表に出ない黄豹に、ここまで喜んで貰えるなら金貨8枚は安いほうだろう。

 俺は店の馬系獣魔人の店主に釵2本を頼むと金貨8枚を手渡した。

「今なら3本で大金貨1枚でいいけど、どうする?」

 おっと。商売上手だ。

 黄豹は2本と言っていたが予備があってもいいだろう。

 持ち運びも影収納に入れておけば邪魔にはならない。

「よし。3本買った!」

 俺はさらに金貨2枚を店主に手渡し、3本の釵を手に入れた。

「はい。一応予備で3本買ったから。」

「ん。ありがと。」

「お客さん。釵用の脚に付ける鞘もあるけどどう?」

 商売上手だ。確かに黄豹が持ち歩くのに何か必要だとは思っていた。

「ちなみにいくら?」

「2つで大銀貨1枚です。」

「買った。」

 即決である。

 買った釵用の鞘は太股に付けられるタイプだった。

「付けてみ。」

「ん。」

 釵を持っててやり、鞘を片方ずつ手渡してやると黄豹は自身の太股に鞘を装着した。

 そこに釵を入れてみる。

「どうだ?動きづらいとかないか?」

「ん。大丈夫。これなら動き回っても大丈夫そう。」

「よし。問題なしだな。おっちゃんありがとう。」

 馬系獣魔人の年齢はわからなかったが、とりあえず武器屋と言えばおっちゃんだろうと言う事でそう言った。

「はいよ、毎度あり。」

 おっちゃんであってたようだ。

 実はお姉さんだったとかだと大変な事になっていた。

 まぁ。声を聞く限りおっちゃんで間違いなさそうだったが。


 帰り道、八百屋の前で立ち止まった黄豹。

 何かと思えば

「今日も林檎食べたい。」

 との事。

 俺はとりあえず10個林檎を買ってやると領主邸に戻った。

 買ってきた釵とその鞘を皆に見せると

「えぇー。黄豹さんだけズルイですぅ。私にも何か買って下さいよぉ。」

 白狐が騒ぎ出した。

 と言う事で昼後は白狐と2人で買い物に出る事になった。


 ちなみに金獅子は昼食中にショウリャンの使いの者がやって来て、インゴットが出来たとのことで昼食途中で急ぎショウリャンの工房に向かって行った。


 昼食後、白狐と2人でいくつかの武具屋を見て回ったが、偶然にも白狐が食いついたのは午前中に釵を買った馬系獣魔人の店だった。

 俺に気付いた店主は、

「お。兄ちゃんも隅に置けないねぇ。」

 とか言ってきたので無視した。

「この店は全てミスリル製の武具ですかね?」

「あぁ。うちで扱ってるのはミスリル製だけだ。流石にこの街じゃミスリル製以上の武具は取り扱ってないからね。」

「アダマンタイト製とかあればよかったんですけど。」

「悪いね。ミスリル製しかないんだ。」

「あ。でもあの短めの刀は脇差しにちょうど良いですね。」

 高い位置に飾ってあった短刀を指差して言う白狐。

「お。お目が高いね。姉さん。あれば俺の自信作でさ。1番目立つ所に飾ってたのにまだ買い手が付かなかったのよ。」

 そう言いつつ、台を持ってきて1番上の方に飾ってあった短刀を降ろしてくれる馬系獣魔人の店主。

「はいよ。握ってみて感触確かめてちょうだい。」

 短刀を白狐に手渡す店主。

「ふむふむ。重さはちょうどいいですね。後は切れ味ですね。」

「お。試し斬りしてみるかい?」

「いいんですか?是非。」

「じゃあちょっと工房の方まで来てくんな。」

 そう言って奥へと入って行く店主。

 俺達も後を追う。

「こいつで試し斬りしてくんな。」

 店主が差し出したのは藁で作った人形だった。

「手で持つタイプですか。じゃあクロさん、持ってて下さい。」

「え。俺が?」

 持ち手の付いた人形を持たされる。

「はい。こう手を伸ばして、もうちょっと上で」

 軽く微調整されながら腕をピンと張った状態で人形を持つ。

「では、いきますね。」

 そう言うと白狐は短刀を振り抜いた。

 人形を持つ手にはなんの振動も感じなかったが、スッパリと人形の首が落ちていた。

「いいですね。これ。引っかかりもなくスムーズに斬れました。」

「だろ?俺の自信作だからな。」

「これ下さい。」

 値段も聞かずに言う白狐。

「いや、値段は確認しようぜ。」

「あ。そうですね。おいくらですか?」

「買い手が付かなかった刀だからな。金貨4枚でどうだ?」

「もちろん鞘付きですよね?」

「ん?あぁ。今なら鞘も付けよう。」

 そう言えば白狐は買い物上手であった。

 前にも追加購入する替わりに値切りしていたのを思い出した。

「じゃあ鞘付で金貨4枚。いいか?」

「分かった。買うよ。」

 俺は金貨4枚を店主に渡す。

「ありがとうございます。クロさん。大切に使いますね。」

「あぁ。すぐに折ったりしないでくれよ。」

 買い物を終えてホクホク顔の白狐である。

 幸せそうな顔を見て俺も気分は悪くない。

 そんなこんなで1日が過ぎていったのであった。

 もちろん夕飯後には林檎を剝いて出してやった。


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