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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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89話 大剣1

 獣魔人の街で1泊した俺達は翌朝には集まってみんなで食事を取った。

 もちろんメニューは俺特製のカレーだ。

 まだ食事の提供を受けられるほどこの街の住民を信用はしていない。

 今回は出汁を取った鍋に具材を入れ煮込み、スパイスと共に片栗粉でとろみを付けてみた。

 いつもと違う食感に最初こそみんな“?“な感じだったけど、食べ進めるうちにこれもありだと言う話になった。

 特に黄豹などは

「ん。いつもよりとろみが強い。これ美味しい。」

 と結構好評だった。

「米じゃなくて麺類が合いそうだな。」

 と銀狼が言うので今日街に出た際には麺類が売ってないか見てみるつもりだ。

 だが今日のメインは折れてしまった金獅子の大剣の修復だ。

 鍛冶師の村にまで戻らなくてもこの街に鍛冶師がいるかもしれないと言う事で探してみる事にしたのだ。

 そんな俺達の話を聞いていた執事の羊系獣魔人が提案してくれた。

「この邸宅から東に3ブロック行った通りにあるショウリャンの武器屋なら鍛冶場が設けられている為、武具の修理も可能かもしれません。」

 この街は通り毎に取り扱っている物が異なるらしく、この邸宅が街の中心の通りである第1通りにあり、東側が商業区、西側が居住区となっているらしい。

 で東の3ブロック目が武具やら道具類を取り扱う店がならんでいるんだと教えて貰った。

 俺達は朝食を終えると早速そのショウリャンの武器屋を目指したのだった。


 東の3ブロック目はかなり雑多な感じで道具屋やら魔術道具屋やら武器屋、防具屋が立ち並んでいた。

 そんな中ショウリャンの武器屋とやらが見つかるか不安になっていたのだが、

「おい。あれじゃないか?鍛冶場があるって言うくらいだからでかい店だろ?」

 銀狼が指す先には一際大きな店構えの武器屋があった。

 ひとまずは見ていても始まらない。

 入って聞いてみよう。

 カランコローン

 喫茶店に入った時のような音がドアから鳴る。

 店の中には誰もいない。

「すいませーん。誰かいますかぁー?」

 俺が声をあげるも反応がない。

 ドアベルの意味が無い。

「すいませーん。」

 さらに大声で声をかけると、やっと奥から反応があった。

「あいよー。ちょっと待っててねー。」

 そう言って出て来たのは見事な角を生やした牛系獣魔人だった。

「あたいの店になんか用かい?今売れるのは店に並んでる品だけになるけど?」

 よく見れば立派な乳をした女の店主だとわかる。

 よく見なければ胸筋と見間違う。

 獣魔人の性別の見分けは難しいのだ。

「ショウリャンの工房に用があるのだがここで合っているか?」

 金獅子が声をかける。

「あたいがショウリャンだよ。」

「合っているか。実は武器を買いたいのではなくてな。実は折れてしまった大剣の修復を頼みたい。」

 金獅子が言う。

 俺は預かっていた折れた大剣を影収納から出してやる。

「折れた剣の修復だ?これだから素人は。いいかい。折れた剣を直すってのは1から剣を打つよりもハードルが高いんだ。そもそも折れた元の剣と同じ素材じゃないと修復は難しい。」

「折れた先も持ってきてるんだが?」

「それに折れた先があってもそれらをくっつける為の素材も同じじゃないと上手くつかないんだ。だからその元の剣の素材が何かちゃんとわかってないと難しいのさ。」

「元の素材はわかっておる。アダマンタイト製の大剣だ。」

「アダマンタイト製?!それこそ難しいさ。まずアダマンタイトなんて高価な素材が手元にないからね。入手するまでに時間がかかるよ。」

 そこで俺は預かっていた巨大な斧も出してやる。

「それも問題ないと思う。この斧がアダマンタイト製だと思うんだが、これを溶かして素材に出来ないか?」

 そう言うと金獅子は七尾の菜々緒が持っていた巨大な斧を店主に見せた。

「な?!これは獣魔王様に作って差し上げた斧じゃないか!確かにこれはアダマンタイト製だから溶かせば素材に戻せるけど。」

「直せるか!ではお願いしたい。」

 金獅子が頭を下げる。

 牛系獣魔人のショウリャンは頭の角を搔きながら言う。

「ちなみにあんた、この大剣は観賞用じゃないんだろ?」

「あぁ。もちろん実戦用だ。」

「となるとアダマンタイト製の武器を素材に戻すまでには最低でも5日間は熱し続ける必要があるからね。それから大剣をくっつけるのにさらに5日間、最低でも10日間は欲しいね。」

「10日間か。」

 金獅子は悩む。

「俺様だけここに残って大剣の修復が終わってから後を追う方がいいだろうか?」

 俺に聞かれたので俺が答える。

「いや、敵も強くなってるし、数も多いだろう?1人で行動するのは危険じゃないか?」

「しかし10日間も足止めさせるのも悪いしなぁ。」

 金獅子は悩む。

 そこに銀狼が言う。

「敵にはオレ達が侵攻してるのがバレてる節があるからな。もう何日遅れても奇襲にはならないと思うぞ?」

「うむ。神からも期限は言われておらん。急ぐ必要があれば神託がおりるだろうて。」

 蒼龍も後押しする。

「それじゃあ10日間、ここに滞在する方向で良いか?」

「俺はその方がいいと思う。金獅子1人で後追いさせるのは危ないと思うんだ。」

「アタイも賛成さ。敵の巣窟で1人行動は危険だと思うし。」

「私も賛成です。いまさら10日間遅れても問題ないでしょう。」

「そうだな。ワシもそう思う。」

 みんなの意見を纏めて銀狼が言う。

「じゃ大剣の修復は依頼するとして、出来上がるまではここに滞在する事にしよう。」

 俺達の相談する様子を見て牛系獣魔人の店主が言う。

「なにやら急ぐ必要がありそうだね。わかったよ。大剣の修復受けるよ。出来る限り最短で仕上げるから待っててくんな。」

「あぁ。頼む。」

 また金獅子が頭を下げる。

「任せときな。出来上がったら何処に伝えに行けば良いんだい?」

「俺様達は領主邸に滞在している。そこに伝えて貰えるか?」

「なに?じゃああんたが話題の新領主様かい?こりゃ失礼な言葉遣いしちまったねぇ。」

 そう言いながらも言葉遣いを直そうとはしない牛系獣魔人のショウリャン。肝が据わってる。

「ひとまず10日間を目標に早めに仕上げるよ。もちろん手抜きはしないから安心してちょうだい。」

 ショウリャンは言う。

「では任せた。よろしく頼む。」

 金獅子が言って俺達は店を出た。


 さてひとまず10日間、時間が出来た。

 ますはその事を水晶を使ってバルバドスに伝える。

『そうか。10日間か。それなら我が軍も再編が出来るな。助かる。』

 との事だった。

 かなりの人数が脱落している今は兵糧持ちとして参加していた兵士達も戦闘に投入する必要が出てきているはずだ。

 その為の再編だろう。

 俺達はひとまず日用品や食材が並ぶ隣の通りに向かった。

 領主邸から見て4ブロック目だ。

 ひとまずは少なくなってきたスパイス類と今朝話に出た麺類が欲しい。

 この隣の5ブロック目も食材を扱う店が並んでいるとの事だったので、俺達は二手に分かれて食材を探す事にした。

 結構な店数がある為、手分けして探した方が早いと思ったのだ。

 俺と白狐、紫鬼と灰虎に桃犬とワンリンチャンで4ブロック目を進む。

「食材っつっても人族領のと大差ないんだね。もっとグロテスクな何かを食べてるのこと思ったよ。」

 灰虎が言う通り、店に並ぶ品々は人族領で見る物と大差が無い。

 リンゴをリンガと呼んでたりと呼称は変わっても物は一緒のようだ。


 しばらく並ぶ店を見て回った。

 同じく食材を扱う店もある為、出来るだけ安い方で買うべく、まずは見るだけだ。

「私たまにはフルーツが食べたいですぅ。」

 白狐が甘えてきた。

 確かに野菜はそれなりに仕入れて影収納に仕舞ってあるが、果物は仕入れていなかった。

「いいね。フルーツ。アタイも食べたいよ。」

 灰虎も言う。

 そこでまずは八百屋的な店を物色し、価格帯を調べて回る。

 別行動の銀狼達にも欲しい物があったらまずは金額を見て回るようにお願いしている。

 昼近くなったのでひとまずはみんなで合流すべく、領主邸に戻る。

 昼食を皆で食べる為だ。

 メニューは猪肉を使った野菜炒めにご飯。あとは簡単なもやしのスープだ。

 もちろんこれも俺が作ったものだ。

 もう専属シェフみたいなもんだ。

 猪肉の臭みを取る為に生姜を大量にいれたのだが、これが黄豹が苦手だったらしく、

「ん。辛い。ちょっと苦手な辛み。」

 と言われてしまった。

 まだ皆の食の好みを完全には把握出来てない。

 シェフ失格だ。

「次は臭み消しに味噌を使うよ。」

 と俺が言うと、

「ん。味噌好き。」

 と返事が返ってきた。

 黄豹は味噌が好きっと心のメモに書いておく事にする。

 そう言えば肉焼いた時も女性陣には味噌焼きが受けていたな。

 今度は味噌味の野菜炒めにしてみよう。

 10日間もあるんだ。ちょっと凝ったメニューを作ってみるのもいいかもしれない。


 そんなこんなで昼食を終えると、銀狼達と4ブロック目の店で見た食材の値段と5ブロック目の食材の値段のすり合わせを行った。

 どうやら5ブロック目の方が安い店が多い。

 ちょっと気になったので執事の羊系獣魔人に聞いてみる。

「4ブロック目より5ブロック目の方が全体的に休めなんだけど、なんでか分かる?」

「あぁ。4ブロック目の方が見た目的にも揃っていたりと少し高級品が多いのですよ。5ブロック目の方が庶民向けですね。」

 との事だった。

 安く済ませたい気はするが、食事は美味い方が士気もあがる。

 俺達は皆で4ブロック目に買い出しに向かった。

「私はフルーツが欲しいですぅ。」

 また白狐がいうこと、

「ん。フルーツたまには食べたい。」

 と黄豹も言う。

「確かに最近果物は食べてませんね。」

 緑鳥も言ってきたので、やはり女性陣は甘味がお好きと言う事なんだろう。

 と思っていたら

「俺様もリンゴが食べたいな。実は好物なのだ。」

『儂もミカンが食べたいな。』

 と金獅子にヨルまで言ってきた。

 甘味好きに性別は問わずか。

 ひとまず俺達は果物を仕入れるべく八百屋を巡る。

 そこで林檎、ミカン、梨に苺など、簡単に食べられる果物を購入しては影収納に収めていった。


 次は香辛料と麺類だ。

 銀狼が5ブロック目に乾物屋があって、そこで乾麺が売っていたと言うので行ってみる。

 流石に全員でゾロゾロ移動すると目立つ。

 ちらほらと

「ほら、あれが新領主様よ。」

「あの獅子っぽい獣人が新領主様だってさ。」

「確かにお強そうだな。」

 などの声が聞こえる。

 領主になってしまった金獅子だが、あの執事の羊系獣魔人に聞いたらこれまでも領地運営は執事の羊系獣魔人が行っており、領主とは言っても特段やる事はないらしい。

 前領主が領地運営そっちのけで戦闘訓練などに打ち込んでいた為、他の人員で回せるようにしたらしい。

 これを聞いてひとまず安心した金獅子だった。


 その後、乾物屋で乾麺やら乾燥したワカメなどの海の幸を購入して、領主邸に戻り、また皆で食事をした。

 早速食後には林檎を切って出してやったら金獅子が喜んで食べていた。

 あと9日間、どう過ごすか、各々考えるようにって事でそれぞれ割り当てられた部屋に向かう。


 俺は部屋に戻るなりヨルに話しかける。

「なぁ。あと9日間で俺が強くなれる方法ってないかな?」

『何かをいきなり。』

「いやさ。この先の海魔人ってのはどんだけいるかも不明って言ってたじゃんか。そうなると余程の事が無い限り王化は控えておいた方がいいと思うんよ。」

『まぁ、確かに王化には時間制限があるからな。』

「だろ?なんかないかな?」

『んー。そんな短期間で強くなれたら苦労はせんだろう。』

「だよなぁ。」

『まぁお前さんは難しい事考えん方が良かろう。感覚で動くタイプだからな。』

「感覚で、か。じゃこの9日間で王化したヨルの動きをもっと見せてくれよ。白狐と手合わせしたりしてさ。」

『む。あやつと手合わせか。まぁよかろう。明日あやつに声をかけるといい。』

「そうするわ。」

『うむ。儂はもう寝る。』

 そう言ってベッドの枕元で丸くなるヨル。


 そして明日からのやる事も決まったところで、俺も布団に入り眠りにつくのだった。


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