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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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85話 獣魔3

 おもがけない敵襲を受けた俺達だったが、帝国軍は後方に控えて貰っていた為、被害はでなかった。

 そして魔獣の群れを倒した俺達は再度、待ちと思われる塀に囲まれた場所を目指して進む。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その頃、獣魔王こと九大魔将が1人の獅子系獣魔人の七尾(しちび)菜々緒(ななお)の元に配下から報告が上がった。

「菜々緒様、どうやら人族の軍勢が悪魔人族の領地を越えてこちらに向かっているとの事です。」

「なに?人族領に乗り込んだ一村や二宮、三井はどうしたのだ?それにここまで来るには四谷や五木、それに六路がいただろうに。」

 七尾の菜々緒は自慢の鬣をブラッシングしながら配下の虎系獣魔人に問う。

「それが報告によりますと人族領に攻め込んだ方々を始め、六路様までその軍勢に敗れたとか。」

「なんと。人族でありながらあの六路までも倒したと言うのか。」

 七尾の菜々緒はブラッシングの手を止めて配下に問う。

「はい。諜報活動を行わせていた鼠系獣魔人達による報告ですのでまず間違いないかと。」

「飼っているグリフォン共はどうした?」

「はい。そちらも突破された模様です。」

 恐る恐るといった様子で報告を続ける虎系獣魔人。

「そうか。そこまでの者が人族におったか。それならオレサマの出番だな。首都全域に指令を出せ。人族狩りだ。全領民を出撃させろ!」

「はっ!」

 報告を終えた虎系獣魔人が下がる。

「六路までやられたか。これはオレサマも気合い入れていかねーとだな。」

 そう言うと七尾の菜々緒は背後に飾られた両刃の巨大な斧を手にした。

 この斧、縦1,5m横2mのアダマンタイト製の巨大刃を持ち、その重量なんと100kgという巨大さだ。

 その巨大斧を軽々と左腕だけで持ち上げる膂力は圧巻である。

「うんむ。今日もいい重量だぜ。」

 そんな巨大斧を素振りしながら七尾の菜々緒は言う。

 虎系獣魔人が再度報告やって来る。

「菜々緒様、領民全域への通達完了にございます。」

「よぉし。さぁて、出撃だ!」

 こうして獣魔人1000名の出撃となった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 都市前に集結した獣魔人達1000体と帝国軍6000名がその距離1kmまで近付くと七尾の菜々緒は大音声で言う。

「オレサマは獅子獣魔人の七尾の菜々緒だ!九大魔将の1人でもあり、ここ獣魔人の街の支配者だ!オレサマを倒せるようならこの街はくれてやる!てめぇら気合い入れてこいやー!」

 その声を皮切りに両陣営が激突する。


 当初の予定通り、帝国軍の弓兵は三段構えで弓矢を射る。

「第1陣、放て!」

「続いて第2陣、放て!」

「続けて第3陣、放て!」

 バルバドスの号令により絶え間なく飛んでくる矢を物ともせずに獣魔人達は帝国軍兵士に肉迫する。

 中には矢を全身に受け倒れる獣魔人もいたがそれも少数であり、ほとんどの獣魔人は手にした長剣や自身の爪や牙で矢を弾いてしまっている。

 七尾の菜々緒も元にも無数の矢が飛ん出来たが、

「よいせっ!」

 七尾の菜々緒が手にした巨大斧を振りかぶると一気に振り下ろすその風圧だけで矢を弾いてしまった。


 手足や胴体に矢を受けつつも気にするそぶりなく帝国軍兵士に迫った獣魔人は手にした長剣や自身の爪で斬りつける。

 重装兵が楯で防ぐもその連撃はとまらず、後ろに控える歩兵や槍兵が出る隙を与えない。

 やがて楯は弾かれ、重装兵が切り刻まれる。そこに来てようやく重装兵の後ろから歩兵が長剣で槍兵が槍で獣魔人を突き刺そうとする。

 一部の犬系獣魔人や猫系獣魔人はその突きにより動きを止めるが、狼系獣魔人や虎系獣魔人、象系獣魔人などはそれに構わず攻撃を続ける。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その頃俺達は敵戦力の強者がどこにいるか見極めていた。

 弓矢での一斉射撃を受けてなお、帝国軍兵士に突撃する獣魔人がちらほら見受けられた。

「帝国軍兵士では手に負えない相手を潰すぞ!全員王化して臨むめ!銀狼と蒼龍は緑鳥達の護衛を任せた。」

「おう。任された。」

「うむ。任せるが良い。」

 金獅子が言い、銀狼と蒼龍が応える。


「王化!獣王!」

 金獅子が声を上げると、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると獅子を想起させる兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王形態となり駆け出す。

「王化!牙王!」

 銀狼が声を上げると、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狼を象った兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王形態となる。

「王化!龍王!」

 蒼龍が声を上げると、首から下げたネックレスにはまる王玉から蒼色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着けた龍王形態となる。

「王化。不死王。」

 黄豹が声を上げると、右足のアンクレットにはまる王玉から黄色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着けた不死王形態となり駆け出す。

「王化!破王!」

 白狐が声を上げると、右耳のピアスにはまる王玉から真っ白な煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狐を想起させる兜に真っ白な王鎧を身に着けた破王形態となり駆け出す。

「王化!鬼王!剛鬼!」

 紫鬼が声を上げると、右手にしたバングルにはまる王玉から赤紫色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると額に2本の角を持つ鬼を象った兜に赤紫色の王鎧を身に着けた鬼王形態となり駆け出す。

「王化!爪王!!」

 灰虎が声を上げると左腕にしたバングルにはまる王玉から灰色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると虎をイメージさせる兜に灰色の王鎧を身に着けた爪王形態とな利駆け出す。

「王化。聖王!」

 緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると鳥をイメージさせる兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王形態となる。

 最後に俺も王化する。

「行くぞ。相棒!」

『おぅよ。任せておけ相棒。』

「王化!夜王!!」

 ヨルが俺の体の中に入り、左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 俺は体の制御権を手放した。

 ヨルは影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出すと皆に合わせて駆け出す。


 ヨルが目の前にしたのは巨大な槌を振り回す象系獣魔人だった。

 こいつの攻撃により重装兵がすでに3人もやられていた。

「ここは儂に任せるが良い。お前達は別の魔人を相手にせい。」

 ヨルが言うと吹っ飛ばされた重装兵をか抱えながら歩兵と槍兵も下がっていった。

「さて、どう料理してやろうかのぅ。」

 ヨルが言うと、

「料理するのはこっちのほうだで。」

 象系獣魔人も答える。

 次の瞬間、象系獣魔人が振り下ろした槌をヨルは黒刃・右月と黒刃・左月を交差させて受ける。

 あまりの重量に片手では受けきれなかったのだ。

「これを受け止めるか。なかなかやるでねぇか。でも次はもっと重いぞ。」

 続けて象系獣魔人が槌を振るう。

 宣言通りより体重を乗せた重い一撃だ。

 ヨルは若干膝を曲げつつもまたこれを受け止める。

「くっ。確かに重い攻撃よな。しかし次は儂の番よ。」

 ヨルは受け止めた槌を自身の左に受け流し、象系獣魔人の左を抜けつつ首筋に黒刃・左月を突き立てる。

 ヨルの攻撃は象系獣魔人に通ったが、その傷は浅い。

 動脈切断迄には至らなかった。

 ヨルを追って振り向きざまに横に槌を振るう象系獣魔人。

 ヨルはこれを後退して避け、今度は右の首筋に黒刃・右月を突き立てる。

 しかしやはり傷は浅い。

「ちっ。硬いな。」

「はははっオデの肌は鋼鉄より硬いでな。」

 象系獣魔人はそう言うと再び上段から槌を振り下ろしてきた。

 先程同様に左に受け流そうとしたヨルだったが、その攻撃は先程より重く、足が軽く地面にめり込んだ。

 象系獣魔人は槌を振り下ろす際に軽くジャンプして全体重を槌に乗せてきたのだ。

 押し潰されそうになるヨル。

「ぐぎぎぎぎっ。」

 膝を曲げつつも耐えるヨル。

「んがぁー!」

 叫びつつ槌を振り払う事に成功。

 逆に両手に持った槌を跳ね上げられ、喉元ががら空きになる象系獣魔人。

 その隙を見逃すヨルではない。

 一気に敵へと肉迫し、跳躍しつつ、相手の首元に2本のナイフを突き立てる。

 全体重を乗せた突きを喉元に受けた象系獣魔人はそのまま後ろに倒れ込む。

 ヨルの持つ黒刃・右月と黒刃・左月は根元まで象系獣魔人の首元に刺さった。

「ぐぼっ。…オデが。ぐぼっ。…やられる。ぐぼっ。」

 そう言い残し象系獣魔人は動きを止めた。

「よし、次じゃ。」

 ヨルは戦場を駆ける。


 これより帝国軍兵士対獣魔人の戦いは激化を続ける。


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