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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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62話 死人7

 長髪の女ヴァンパイアと戦っている勇者パーティーだが、一進一退の攻防が続いていた。

 バッシュとライオネルは同じ個所を攻撃し続ける事で運よく、その片腕を切断することが出来たが、女ヴァンパイアが目からの怪光線を放ち、ライオネルの下腹部に穴を空ける。

 その穴はサーファの癒やしの聖術で回復するが、その頃には女ヴァンパイアの腕も元通りになっている。

 ドリストルは2人と女ヴァンパイアの戦闘に邪魔になりそうなスケルトンやゾンビに向けて魔術を放っていた。

 そこに降り立ったのが破王だった。

 破王はその場に着くや否や抜刀術で女ヴァンパイアの首を刎ねた。

「抜刀術・飛光一閃!」

 光の速さで抜刀した剣閃は、それまでバッシュとライオネルが十数回斬りつける事でやっと切断出来ていた女ヴァンパイアの皮膚を簡単に切断した。

 が、首を失ってなお動き続ける女ヴァンパイア。

 その体が繰り出した廻し蹴りを破王は刀の鞘で受け止めた。

「首を斬り落としても死なない?」

 破王は次々と繰り出される女ヴァンパイアの蹴りを刀の鞘で防御しながら考える。

 頭部を破壊しても動き続けるのであればあとは心臓部の破壊だと。


 強烈な前蹴りを受けて後ろへと飛ばされる破王。

 その頃になってようやくバッシュとライオネルが今起きている事を理解し始めた。

「お前あの傭兵団のうちの一人か?助けに来るならもっと早く来やがれ。」

 ライオネルがそんな事を言う。

 それに少しムっとしながら破王は言う。

「こいつの相手は私に任せてください。貴方達は周りのスケルトンやゾンビの対処をお願いします。」

「なに?ヴァンパイアなんて大物相手をお前に譲れってのか?」

 ライオネルが食い下がる。

「相手もなにも腕を切り落とすので精一杯じゃなかったですか。しかもその腕もまた生えてきてるし。」

 破王に言われてライオネルが激高する。

「なんだと貴様!俺達がヴァンパイア相手に戦えていないような事言いやがって!」

 これにはバッシュが抑え込む。

「まぁいいじゃないかライオネル。我々の獲物はまだ沢山いるんだ。ここはそいつに任せようじゃないか。」

「でも勇者様。」

「ライオネル。僕の言う事が聞けないのかい?」

「わ、わかりました。貴様、後で覚えておけよ!」

 となんだかんだ言いつつもその場から離れていく勇者パーティー。

 これで長髪女ヴァンパイアと破王のサシの勝負となった。

 その頃には女ヴァンパイアの頭部も生えてきていた。

 首から徐々に顔面がボコボコと音を立てながら生えてくるのはなかなかにグロテスクだった。


 破王は愛刀である白刃・白百合を鞘に戻した。

「なかなか倒れないと言う事は私の白刃・白百合に存分に血を吸わせられますね。」

 そんな事を言う破王。

 とここで初めて長髪女ヴァンパイアが声を出す。

「ふふふっ。その刀の切れ味は素晴らしいものがあるけれど、それだけじゃわたしは倒せないわよ。」

「ふんっ。言いたい事はそれだけですか?じゃあ行きますよ。」

 そう言い放ち白刃・白百合を右上方向に抜刀する。

 その一撃をガードしようとした女ヴァンパイアの右腕が切断されて宙を舞う。

 破王は抜刀した刀をそのままに刃の向きを下に帰ると袈裟斬りを放つ。

 女ヴァンパイアは左肩から胸部にかけて刃を通されながらも目から怪光線を放つ。

 破王は顔面を狙って照射された怪光線を首を傾ける事で回避しつつ、胸の途中で止まった刀を力任せに無理やり下方へ振り抜く。

 左肩から入った剣閃は右腰辺りに抜けたが、完全に切断には至らず。

 女ヴァンパイア体は大きく刀傷を作りながらもまだくっついていた。

 ドレスのような衣服だけが切り裂かれだらりと垂れ下がる。

 そのまま女ヴァンパイアは廻し蹴りを繰り出し破王を数m吹き飛ばす。


「ふふふっ。なかなかやりますわね。」

 女ヴァンパイアは笑いながら言う。

「貴方もなかなかしぶといですね。やっぱり弱点は心臓部ですか?」

 破王はさらりと聞く。

「ふふふっ。どうかしら。やってごらんなさいな!」

 そんな会話を繰り広げているうちに女ヴァンパイアの胸の切傷は塞がっていた。

 破王に向けて走り出す女ヴァンパイア。

 跳躍して廻し蹴りを繰り出してくる。

 その蹴りを鞘で受ける破王。

「貴方、足癖が悪いですね。まずはその脚から切り落としましょうか?」

 鞘で蹴り脚を押し返しながら右手に持った白刃・白百合を振るう。

 すると女ヴァンパイアの左足首が切断されて宙を舞う。

 足を斬られてバランスを崩した女ヴァンパイア。

 その隙を見逃す破王ではない。

 一気に女ヴァンパイアの懐に入り込むと手にした白刃・白百合を左下から右上へと斬り上げる。

 斬られながらも目から怪光線を射出し破王の左肩を貫通させる女ヴァンパイアであったが、先ほどの傷をトレースするように右腰から入った剣戟は左肩まで抜ける。

 今度は完全に切断された。

 ゆっくりと切断された上半身が後ろへと倒れ込む。

 だが女ヴァンパイアはまだ止まらない。

 わずかに心臓部からずれていたのだ。

 失くした左足首を無視し、また左脚で廻し蹴りを繰り出す女ヴァンパイア。

 しかしわずかに破王の大上段からの斬り落としの方が早かった。

 体を左右に分離された女ヴァンパイアはようやくその動きを止め、灰になって散っていった。

「ふう。なかなかの相手でしたよ。」

 破王は言うと負傷した左肩を押さえながら仲間達の元へと戻っていった。


 一方の将軍バルバドスとシャラマン、フェリオサの3人も短髪の女ヴァンパイアに苦戦していた。

 目からの怪光線はバルバドスが凧楯で、シャラマンは大楯で弾いている為、ダメージはないが、2人の斧による攻撃は少しも女ヴァンパイアを傷付ける事が出来ない。

 ダメージを回避出来ているが逆にダメージも負わせられないと言う状況だった。

 そんな中に入り込んだのは龍王だ。

 龍王は手にした三又の槍で女ヴァンパイアの腹部を刺した。

 それまでバルバドスの両刃の片手斧やシャラマンの手斧、フェリオサの細剣で幾度となく斬りつけたが傷1つ付かなかった女ヴァンパイアの腹部に龍王の槍が刺さった。

 龍王は槍先に女ヴァンパイアを縫い留めたまま槍を大きく振り被り、その体を吹き飛ばす。

「ここは我に任せよ。お主らは自分達が倒せる敵を探すが良い。」

 龍王はそう言うとバルバドス達の返事も待たずに吹き飛ばした女ヴァンパイアの後を追って駆けだした。


「なんだったんだありゃ?」

 シャラマンが言う。

「おれ達が傷1つ付けられなかった相手を串刺しにしたぞ?」

「ううむ。俺達もまだまだ修行が足りんと言う事だな。」

 バルバドスが答える。

「ワタシ達もまだまだ強くなる必要がありますわね。」

 フェリオサも言うと、

「さぁ。あの方が言うようにワタシ達が倒せる敵を討ちに行きましょう。」

 後方でスケルトン達と戦う兵士達に向けた駆け出す。

「よし。俺達は俺達に出来る事を、だ。」

 バルバドスも駆け出す。

「パワーが足りんかったのか。スピードもか。あの槍使い。相当な手練れだな。」

 シャラマンは言うとフェリオサ達を追って兵士達の戦闘の場へと戻っていった。


 さて龍王と短髪の女ヴァンパイアの一騎打ちとなった。

 腹に穴を空けられて吹き飛ばされた女ヴァンパイアであったが、龍王がその前に到着する事にはその穴は塞がっていた。

 そこに傷があったとわかるのはドレスに穴が開いているからだ。

「君なかなかやるねぇ。」

 女ヴァンパイアが初めて口を開く。

「それでもボクには通じないよ。こんな傷すぐに治せちゃう。」

「うむ。確かに塞がっておるな。」

 龍王も応答する。

「あははっ。僕の皮膚を貫いたのだけは褒めてあげるよっ!」

 言いながら女ヴァンパイアは目から怪光線を出す。

 それを屈んで避ける龍王。

 その龍王へ近づき左右の拳で殴り掛かる女ヴァンパイア。

 不意をつかれた龍王は顔面に左右のパンチを受けてよろめく。

「くっ。魔法だけじゃなく打撃も出来るのか。」

 龍王は呟くと手にした槍で女ヴァンパイアを突く。

 しかし後方に跳んで逃げられる。

 追う龍王。

 逃げる女ヴァンパイア。

 逃げながらも目から怪光線を放ち攻撃してくる為、龍王は追いながらも攻撃を避けつつ、槍での突きを繰り出す。


 しばらく後方に逃げ続けた女ヴァンパイアであったが、龍王の鋭い突きに退避が間に合わず、蝙蝠の翼を生やして空へと回避した。

 腹部にかすったのか新たな傷がドレスに空いていた。

「あはははっ。君凄いね。僕がここまで追いつめられるとは思わなかったよ。でも空に上がってしまえば自慢の槍も届かないでしょ?」

 そう言いつつ目から怪光線を放つ女ヴァンパイア。

 上空から照射される光線を時には転がり、時には跳躍しながら避ける龍王。

 確かに上空にいられては槍は届かない。 が、龍王はその場で槍を構える。

「水撃・龍翔閃!」

 突き出された槍の先端から高圧の水撃が放たれ、女ヴァンパイアの蝙蝠の翼に穴を開ける。 バランスを崩し落下する女ヴァンパイア。

 その落下地点へと先回りした龍王は天に向けて槍を突き出した。

 再び腹部を貫通する三又の槍。

 ドレスにも新しい穴が開く。


「ぐふっ。へぇ。空にいても攻撃が届くんだね。」

 腹部を槍で貫かれながらも喋る女ヴァンパイア。

 龍王が槍を引き抜くとそのまま地面へと落下する。

 立ち上がった女ヴァンパイアの腹部には小さくない穴が開いていた。

 それでも構わず喋り続ける女ヴァンパイア。

「空に逃げてもダメなんじゃ、地上で勝負するしかないね。」

 女ヴァンパイアは龍王に向けて駆け出し、跳躍し、右手の拳を突き出してきた。

 龍王は左に体ごと避ける。

 後方に回った女ヴァンパイアは背を向けている龍王に対して猛ラッシュを仕掛ける。

 ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブ、フック、ストレート。

 龍王は両腕を上げてこの攻撃を受ける。

 ジャブ、ジャブ、フック、ストレート、フック。

 息つく真もない猛ラッシュであったが、龍王はすべて防御しきった。

 軽く飛んで距離を取る龍王。


「腹部の傷はまた塞がったようだな?」

 龍王が問う。

「ふふん。どうだ。僕の回復力は凄いだろ?君の攻撃なんて受けたところですぐに回復できるのさ。」

 女ヴァンパイアは調子に乗って答える。

「腹部の傷は癒せても心臓部を狙ったらどうなるかな?」

 龍王は言うと女ヴァンパイアに向かって駆けだす。

「龍覇連突!」

 高速突きによる連続攻撃を女ヴァンパイアの胸部に向かって放つ。

 後方に跳んで避けようとする女ヴァンパイアであったが龍王が迫る方が早かった。

 その胸部に連続で突きを受けて胸部に大きな穴を開ける。

「ぐふっ。そんな僕が負けるなんて。」

 頭部から徐々に灰になっていく女ヴァンパイア。

 足先まで灰になるのにそこまで時間はかからなかった。

「さて。戻るか。」

 龍王は呟くと仲間達の元へと戻っていった。


 こうして5体全てのヴァンパイアは灰となって消えたのであった。


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