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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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59話 死人4

 ヴァンパイアにはランクがある。

 純血種、貴族階級、一般階級、元人間の4種だ。

 人族領でたまに出没するのは一般階級か元人間だけであり、陽光に弱かったり銀の武器に弱かったりと弱点があった。

 ちなみに元人間と言うのはヴァンパイアに噛まれ血を吸われ息絶えた者がヴァンパイア化した状態だ。

 この元人間はヴァンパイアを増やすことはできない。

 その上位種である純血種と貴族階級には弱点という弱点がないと言う。

 陽光も克服し、日が昇る日中も行動出来る。

 ヴァンパイアの面倒なところはその不死性である。

 単純な攻撃では致命傷を与えても回復してしまうのだ。

 だから人族領に出たヴァンパイアの多くは銀の武器で心臓を貫かれて死亡するケースがほとんどだった。

 弱点のない貴族階級のヴァンパイアなどどう戦ったらいいかわからない。


 そう思っていてると女ヴァンパイア達が蝙蝠の翼を広げたまま帝国兵士達の上空を飛び、目から怪光線を放ってきた。

 まだ敵と接触しない位置に待機していた兵士達がその怪光線に焼かれていく。

「「ぐわー」」

「「ぎゃー」」

 空からの攻撃など想定していなかった為、現場は混乱状態となる。

 そこで将軍バルバドスが声を上げる。

「弓兵、射撃準備!上空を跳ぶヴァンパイア目掛けて一斉射撃するぞ!」

 そう言って旋回してまた帝国兵の上空に到達する前の女ヴァンパイア達に向けて矢を射る。

 一斉に数百の矢に襲われた女ヴァンパイア達はその翼に矢を受けバランスを崩し、地上へと降りてきた。

 が、また目から怪光線を放ってきた。

 重装兵が大楯で怪光線を受ける。

 最初こそ受けきれていたが、段々と怪光線が大楯を浸食し始める。

 やがて大楯に穴が開き重装兵の腹を怪光線が突き抜けた。

「ぐふっ」

 重装兵は血を吐いて倒れる。

 すると楯を失った槍兵と歩兵も次々と怪光線に射られて倒れて行く。

 そんな中また弓兵が矢を放った。

 数百の矢を一身に受ける女ヴァンパイア達。

 しかしその多くはその肌に弾かれてダメージはほぼ無い。


 そこで前線に躍り出たのは勇者パーティーの4人とシャラマンとフェリオサの2人組、それに将軍バルバドスだった。

「矢を受けている間は怪光線が止まる。そこが接近のチャンスだ。俺に続け!」

 バルバドスが前線の重装兵達に声をかける。

「第2射、放て!」

 バルバドスの掛け声に合わせて再び数百の矢が放たれる。

 女ヴァンパイア達は顔を覆うように腕を持ち上げている為、目からの怪光線が一時的に放てなくなるのだ。

「進めー!」

 前線の重装兵達が女ヴァンパイア達に肉迫する。

 重装兵が大楯を構えて怪光線を受ける体勢になると、その横から槍兵が手にした槍で女ヴァンパイア達を突く。

 しかし槍の穂先すら女ヴァンパイア達の肌には刺さらない。

 歩兵が楯の後ろから飛び出して長剣で斬りつけるもやはり女ヴァンパイアの肌には傷1つつかない。

「ダメです!槍では刺さりません!」

「長剣による攻撃でも傷1つつけられません!」

「一体どうしたらいいんだ?!」

 兵士達はパニック状態である。


 颯爽と勇者パーティーが最前線に躍り出た。

「皆!心配すんな!こっちには勇者様がいるんだ!」

 戦士ライオネルが叫ぶ。

「おぉ。そうだ。勇者様だ。」

「希望の光だ。」

「勇者様」

「「勇者様!」」

 勇者様コールが兵士達の間で起こり始める。

「任せろ!」

 勇者バッシュが長髪の女ヴァンパイアに斬りかかる。

 顔面を狙ったものであり、女ヴァンパイアは片手を上げてこれを受ける。

 先程までは兵士の長剣も槍も弾いていた女ヴァンパイアの皮膚に切れ目が入った。

 鮮血が飛び散る。

 ここで兵士達のボルテージは最高潮。

「やったー!斬ったぞ!」

「あんなに硬かった皮膚を斬り裂いた!」

「流石勇者様だ!」

「勇者様!」

「「勇者様!」」

 どんどん勇者様コールが大きくなる。

 が、バッシュは内心焦っていた。

 腕を斬り飛ばすつもりで斬りかかったのだ。

 それなのに僅かに剣が食い込んだだけで止まってしまった。

 これは今まで戦ってきた相手とは違う、と。

 ライオネルがバッシュに続けて巨大斧で斬りかかる。

 こちらも腕を切り裂きはしたものの、切断には至らない。

「くそ硬いですね。勇者様。」

「あぁ。同じ箇所を何度も斬りつける必要があるな。」

「えぇ。それでいきましょう。」

 バッシュとライオネルは交互に斬りかかり何度も同じ場所に斬りつけた。

 その合間を縫ってドリストルが魔術を放つ。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、女ヴァンパイアにへと命中した。

 一瞬大きく燃え上がった女ヴァンパイアだったが、炭化した皮膚が剥がれるようにして崩れると元通りの女ヴァンパイアの姿があった。

 衣服だけが燃えた後を残す。

「あたしの魔術が効かない?!」

 驚愕するドリストルの肩に女ヴァンパイアの放った怪光線が当たる。

 肩を貫通した怪光線。

 そのまま後方の重装兵にも当たってしまう。

「うぎゃー!肩が!あたしの肩が!!」

 痛みに耐えかねて蹲るドリストルにサーファが駆け寄り聖術を唱える。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に僅かながらの癒やしの奇跡を起こし給え。ローヒーリング!」

 徐々に穴が空いた肩に肉が盛り上がり穴を塞いでいく。

 本来ヒーリングであれば一瞬で塞がる傷であったが、サーファの聖気はそこまで多くない為、本当に緊急な時以外はローヒーリングを使用している。

「ありがとう。サーファ。」

「どういたしまして。」


 この2人の関係性は微妙だ。

 共に勇者に気があり言わば恋のライバルである。

 しかし共に戦う仲間でもあり、お互いを邪魔に思いながらも邪険には出来ないと言った感じだ。


 それはさておき女ヴァンパイア戦はライオネルとバッシュが交互に斬りかかり何度も斬りつけた傷さえも治ってしまっていた。

「ちっ。ふりだしか。」

 ライオネルが呟く。

「攻め続ければいずれ勝機は来るさ。」

 バッシュは言うが内心焦っていた。

 敵の再生能力にも上限があるはずだとは思うものの、このまま攻め続けても大したダメージは与えられない。

 なにか打開策はないものかと頭を捻りながらも、ライオネルと共に女ヴァンパイアに斬りかかる。

 女ヴァンパイアもただ斬られているばかりではなく、目からの怪光線をライオネルやバッシュにも放ってくる。

 当たった箇所には穴が空くがサーファの癒やしの聖術で回復、また斬りかかるを繰り返した。

 ドリストルは2人の邪魔になりそうなスケルトンやゾンビに向けて魔術を放っている。

 勇者パーティーと女ヴァンパイアの戦いはお互いに決定打がないまま続く。


 一方の将軍バルバドスとシャラマン、フェリオサの3人も短髪の女ヴァンパイアに苦戦していた。

 バルバドスが凧楯で怪光線を弾きながら両刃の片手斧で斬りかかるも女ヴァンパイアは片手で受け止める。

 シャラマンも大楯で怪光線を弾きながら片手斧で斬りかかるも片手で防がれる。

 その隙を見てフェリオサが細剣で刺突を放つも女ヴァンパイアの胸部にはわずかな傷しかつけられない。

 こちらは楯持ちが2人いることでダメージを回避出来ているが逆にダメージも負わせられないと言う状況。

 こちらも決定打がないまま戦いは続く。


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