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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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57話 死人2

「親愛なる聖神様、その比護により彷徨う魂を救い給え、そのお力で彼らに慈悲を与え給え。ターンアンデッド!」

 もう何度目になるのかわからないほど聖術を連発している緑鳥。

「おい。そんなに連発して大丈夫なのか?」

 俺は緑鳥に問う。

「わたしは普通の聖者や聖女よりも聖気が多いんです。ターンアンデッドならあと100回はいけますよ!」

 緑鳥が答える。

『聖気ってやつにもかぎりがあるんだろう?この先なにがあるかわからん。回復に回せるだけの余力は残しておけよ。』

 俺の外套のフードの中からヨルが偉そうに言う。

「はい。問題ありません。」

 緑鳥は答えるが、なにせあたり一面が墓場だったことを考えるとアンデッドはまだまだそこを尽きないだろう。

 1回のターンアンデッドで4,5体のアンデッドを浄化出来ているがあと500体じゃ済まないだろう。

 紅猿も蒼龍も長物武器を振り回し、一気に2,3体の頭を飛ばしているがなにせ寄ってくる数が多い。

 なにか別の範囲攻撃があれば。

 俺は橙犬を思い出す。

 あの魔術があればもっと戦いが楽になっただろう。

 とそこに見知らぬ声が響いた。


「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。岩石の力へとその姿を変えよ。魔素よ固まれ、固まれ魔素よ。我が目前の敵達に数多の石礫となりて打倒し給え!ストーンショット!!」

 その呪文の詠唱が終わると辺りにいた数十のアンデッドが頭を撃ち抜かれて崩れ落ちた。

 魔術?誰だ?

 と思っているとまだ若い青年兵士がこちらに向かって駆けてくるところだった。

「よかった。合流出来た。オラは将軍バルバドス様から伝言を言付かってきた伝令兵っす。」

 成年兵士は俺に言う。

「お前、魔術が使えるのか?」

「はい。オラの唯一の取り柄でして。土系統の魔術が使えるっす。」

「魔術が使えるのに伝令兵なのか?」

「はい。帝国では魔術師の地位は低いんす。みんな伝令兵や衛生兵として参加しています。」

「そうか。で、バルバドスはなんと?」

「はい。敵の数が多いため、あなた方も帝国軍兵士に交じって一緒に戦って欲しいと。一気に相手する数を少しでも減らせるようにしたいとのことっす。」

「そうか。少し皆と相談したい。お前、名前は?」

「はい。桃犬(とうけん)と言います。桃色の犬って書きます。」

 その名前を聞いて固まってしまった。

 魔術師で漢字は異なれど橙犬と同じ呼び方だ。 必然橙犬の事を思い出してしまう。

「わかった。桃犬だな。仲間達に伝えてくる間、ここの守護を頼めるか?」

「はい。お任せください。」

 そう言うので俺は金獅子や銀狼がいる辺りに行き、先ほどのバルバドスの申し出について話す。

「確かにオレ達だけで丸まっているよりは帝国軍に混ざった方が一気に相手する対象は減るな。」

「しかし帝国軍の駒として扱われるのはやりづらくなるぞ。俺様は指図されたくない。」

「じゃあ。帝国軍に混ざりはするがやり方はこちらが決めるってのでどうだ?」

「うむ。帝国兵士共が邪魔にならなければいいが。」

「オレは賛成だ。緑鳥も連続して聖術を行使して疲労が溜まっているはずだ。安全な柵の中に入れて少し休ませてやりたい。」

「了解。じゃあ申し出を受けるって話してくる。」

 俺は元の位置に戻り、岩の弾丸を放ちアンデッドを食い止めてくれていた桃犬に声をかける。

「バルバドスの申し出を受けるよ。どう合流すればいい?」

「では向こうに合図を送ります。合図したら直進して帝国兵に合流してください。直進経路には魔術が飛んでこないように制限することになっていますのでご安心を。」

 そういうと桃犬は照明弾を空に打ち上げた。

「よし!みんな!帝国軍に合流するぞ!少しずつ移動開始だ!」

 俺は声を張り上げみんなに聞こえるよう移動の指示を出す。


 どうにか帝国兵士達に合流した俺達。

 帝国兵達は例の5人1組で盾持ちが前面に出てアンデッドの侵攻を押さえている間に槍兵や歩兵が横から出て頭を潰す作戦のようだ。

 後方からもいつくも魔術が飛ぶ。

 火炎魔術が多いが橙犬のファイアボールと比べてだいぶその火球の大きさは小さく、全身を燃え上がらせるには至らず、部分的に焼くことしか出来ていない。

 それでも片腕を燃やし尽くされたり頭部に当たって頭を燃え上がらせたりしているので全く無意味ではない。

 俺達は最初に出会った橙犬という魔術師が強すぎた為、魔術についての認識が他とは異なるようだ。

 確かにこの威力では桃犬に聞いた通り、魔術師の存在意義が問われ、普段は伝令兵や衛生兵として運用されているのもうなずける。


 俺達が帝国兵士達に合流してからしばらくして空気がより冷たくなるのを感じた。

 そしてアンデッド達の上位個体が出始めた。

 スケルトンが剣や鎧を着けたスケルトンソルジャー、大剣に全身鎧を着けたスケルトンナイト、ゾンビも人型ではなくジャイアントゾンビやドラゴンゾンビなんかも奥の方に見え始めた。

 スケルトンの上位種はまだ帝国兵士でも相手が出来るだろうがジャイアントゾンビやドラゴンゾンビともなると対処は難しいだろう。

 いずれもAランクの魔物がゾンビ化したものだ。

 俺達も王化しないと厳しい。

「ジャイアントゾンビとドラゴンゾンビ達は俺様達で対処するぞ!全員王化!」

 金獅子が声を上げる。

 俺はまだ近くにいた桃犬にその旨伝える。


「王化!獣王!」

 金獅子が王化し、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると獅子を想起させる兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王形態となる。

「王化!牙王!」

 銀狼が王化し、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狼を象った兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王形態となる。

「王化!龍王!」

 蒼龍が王化し、首から下げたネックレスにはまる王玉から蒼色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着けた龍王形態となる。

「王化!武王!」

 紅猿が王化し、左手親指のリングにはまる王玉から紅色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると猿をイメージさせる兜に紅色の王鎧を身に着けた武王形態となる。

「王化!不死王!」

 黄豹が王化し、右足のアンクレットにはまる王玉から黄色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着けた不死王形態となる。

「王化!破王!」

 白狐が王化し、右耳のピアスにはまる王玉から真っ白な煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狐を想起させる兜に真っ白な王鎧を身に着けた破王形態となる。

「王化!鬼王!剛鬼!」

 紫鬼が王化し、右腕にしたバングルにはまる王玉から赤紫色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると額に2本の角を持つ鬼を象った兜に赤紫色の王鎧を身に着けた鬼王形態となる。

「王化!爪王!」

 灰虎が王化し、左腕にしたバングルにはまる王玉から灰色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると虎をイメージさせる兜に灰色の王鎧を身に着けた爪王形態となる。

「王化!聖王!」

 緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると鳥をイメージさせる兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王形態となる。


 最後に俺も王化する。

「頼んだぞ。相棒!」

『あぁ。任せておけ。』

「王化!夜王!!」

 ヨルが俺の体の中に入り、左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 俺は体の制御権を手放した。

 ヨルはいつものナイフを影収納から取り出した。


 全員が王化し、ジャイアントゾンビとドラゴンゾンビに向かって駆けていく。

 その数はジャイアントゾンビ3体にドラゴンゾンビ2体だ。

 銀狼と灰虎は緑鳥を守る為、やや後方を走る。

 

 こうしてアンデッド達との交戦はますます激しくなるのであった。


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