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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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555/558

554話 開国祭11

 迎えた開国祭最終日。

 朝から昨日食べた塩レモンヤキソバの露店に赴き、昼飯を購入する。

 いたく気に入った事を伝え今度自分でも作って見ようと思うと言ってみたところ、麺を蒸し焼きするのにもレモン汁を使っていると言うことを教えてくれた。レシピを教えて貰った礼を言って店を後にするとミスコン会場の広場にやって来た。

 会場はすでに沢山の人で溢れており、会場入口では投票用紙が配られていた。1から14の数字が書かれており、投票したい参加者のエントリーナンバー部分を切り取って投票箱に入れるように説明を受けた。エントリー数は14名らしい。


 さすがに人が多すぎて先に来ているはずの藍鷲を見つけることは難しそうだった。

 そうこうしているうちにミスコンは始まり、司会者が壇上に上がってきた。

「さぁ、遂に始まります。第37回開国祭ミスコン。今年の参加者は過去最高の14名です。参加者には最長5分のアピールタイムも設けてありますので、皆さんお楽しみに。では早速エントリーナンバー1番。中街商店街の花屋『並木』の看板娘、ミルローザさんから登場だ!」

 司会者と入れ替わるように壇上には1人の女性が現れた。

 長い茶色の髪をポニーテールにした純情そうな小柄の女性だ。

「中街商店街の『並木』って花屋さんで働いてます。ミルローザです。」

「ミルローザちゃーん!」

「今日も可愛いよー!」

「付き合ってぇー!」

 最初の参加者から会場は盛り上がりを見せている。

「えへへ。ありがとうございます。私のアピールタイムですが、この開国祭に合わせてフラワーアレンジメントを作ってきましたので披露させていただきます。」

 そう言って1度バックヤードに戻ったミルローザは戻ってきた際には手に抱えるほどの大きさの籠を持ってきた。

 籠の中には色とりどりの花が所狭しと飾られ、花に興味がない俺でも綺麗だなと思えるほどだった。

「様々な歴史ある帝国の事を考えて色々なお花を組み合わせて作りました。こちらはミスコン優勝者の方にプレゼントしたいと思います。お店にも素敵なお花が沢山ありますから是非お店にも遊びに来て下さいね。」

「行くよー!」

「付き合ってぇー!」

 かなり熱狂的なファンがいそうだな。


「はいー。エントリーナンバー1番、ミルローザさんでしたぁ。盛大な拍手を。次はエントリーナンバー2番、ソングバー『スロッツ』の人気歌手、サルファさんの登場です!」

 次に出てきたのは長身の美女、黒髪をワンレンに降ろした切れ長の目を持った少しキツそうな印象の女性だった。

「歌手やってます。サルファです。」

 ハスキーな声は随分と引き込まれる。

「サルファさーん!」

「結婚してぇー!」

 こちらも熱狂的なファンがいる様子。

「私は唄うことしか出来ないので1曲披露させていただきます。」

 そう言ってアカペラで歌い出したサルファだったが、地声からは想像も出来ないような高音から少女のような可愛らしい声、地声に近いハスキーな声にさらに低い低音ボイスと様々な声色を使い分けて歌い出された歌に会場は静まりかえった。

 長いようで短い1曲が歌い終わると会場中から溢れんばかりの盛大な拍手が鳴り響く。


「さぁ、エントリーナンバー3番は最年少、帝都高等学校2年生のレイカちゃんだ!」

 続いて壇上に上がったのはまだ幼い顔立ちの金髪ショートカットの快活そうな女の子だった。

「レイカぁー!今日も可愛いぞぉー!」

 1人のおっさんが声を張り上げる。あれは父親か?

「帝都高等学校2年生のレイカです。学校のお友達の推薦で参加しました。今日は最近ハマッてるリコーダーの演奏をしたいと思います。」

 そう言って取り出したのは何の変哲もない黒色のリコーダー。

 そして吹き始めたのは大人から子供まで知っているであろう童謡の演奏だった。決して大した技術があるとかではないが、会場中が和んだ。

「レイカぁー!上手だったぞぉー!」

 親父さんが1人熱烈な声援を送っているのが目に付いた。


 その後もアピールタイムにダンスをする者、手品を披露する者、パントマイムをする者、バイオリンを弾く者、口笛を吹く者など、様々だった。


「さぁ、次はいよいよ最終です。エントリーナンバー14番。え?これホント?えーまさかの出場者です。大陸中央の聖都からお越しいただきました。聖王、緑鳥様の登場です!」

 そして壇上に上がったのは豪奢な法衣を身に纏う緑色の髪色をして緑色の石をつけたサークレットを身に着けた儚げな女性、緑鳥だ。

「聖王様ぁー!」

「う、美しい!」

「きゃー!聖王様ぁー!」

 声援も一際大きい。

「わたしの特技と言えば聖術しかありませんので、ここにいる皆様に神のご加護をプレゼントいたします。」

 そう言うと2m近い錫杖を掲げて呪文を唱える。

「親愛なる聖神様、その庇護により目の前の傷つきし者達に癒しの奇跡を起こし給え。エリアヒーリング!」

 温かな光が会場中を照らす。すると

「おぉ!肩凝りが治った!」

「腰痛が楽になったぞ!」

「熱っぽいのが治まったわ!」

「凄い!これが聖術か!」

 会場中でどよめきが起こる。

「聖術は皆様の自己治癒力を高めるものです。決していかがわしい魔術ではありません。皆様もなにかあれば神殿や教会に足を運んで下さいね。」

 と聖術についてアピールする事で緑鳥が締めた。


「ではいよいよ投票の時です。皆さんのお手元の投票用紙にて投票先のエントリーナンバー部分を千切って投票箱に入れて下さい。」

 投票箱に投票用紙を入れてきた。もちろん投票先は緑鳥にした。集計に時間がかかると言うことで、その間を埋めるようにエントリーナンバー2番のサルファが再び歌を披露してくれた。やっぱり何度聞いても感動すら覚えるな。

 そして開票結果が出た。

 優勝者はなんと言っても1番会場を沸かせた緑鳥に決定。緑鳥には司会者から豪華なトロフィーが授与されたのだった。


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