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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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553/558

552話 開国祭9

「さて、いよいよ本大会も決勝戦です!ここまで勝ち上がってきた2人の猛者に、皆様盛大な拍手を!まずは経歴不詳の謎の傭兵、双剣使いのシルバーウルフ!」

「おぉー!」

「頑張れー!」

 会場のボルテージも最高潮である。

「お次も経歴不詳の謎の傭兵、拳闘士のパープルオーガ!」

「オーガぁ!」

「やってやれぇー!」

 会場には割れんばかりの声援と沢山の拍手が送られる。

「さぁ、泣いても笑っても最終戦!決勝戦の開戦です!!」


 開始の合図と共にお互いに無造作に歩み寄る2人。すでに互いの射程圏内に入り込んだところで歩みを止める。

「お前とは初めてやり合うな。」

「そうじゃな。まぁ祭りじゃ楽しもうではないか。」

「ふっ。余裕そうだな?」

「なぁに。こう言うのは楽しんだもん勝ちじゃからな。」

 そう言うと拳を突き出すパープルオーガ。応じるようにシルバーウルフも拳を掲げて互いの拳をぶつけ合う。

 次の瞬間には互いに1歩飛び下がり距離を取る。

 ここで初めてシルバーウルフは双剣を抜き放った。

 それを待っていたかのようにパープルオーガが駆け寄る。

「しゃらっ!」

 初めっから渾身の右ストレートが放たれる。

 双剣をクロスさせてこれを受けるシルバーウルフ。だが余りの勢いに負けて1歩下がる。

 が、シルバーウルフもやられっぱなしではない。下がったことで空いた隙間を埋めるように双剣を振り抜く。

 追撃しようと前に出たパープルオーガは双剣の斬り下げを手甲で受け流す。とここでシルバーウルフが前蹴りを放つ。まさか拳闘士たる自分相手に双剣使いのシルバーウルフが蹴りを放ってくるとは思いも寄らなかったパープルオーガは鳩尾に蹴り足が埋まり後退させられる。

 そこに追撃を仕掛けるシルバーウルフ。双剣による連撃。上から下から横から正面から。次々に放たれる斬撃がパープルオーガを襲う。だが、パープルオーガも全ての攻撃を手甲で弾き、受け流し、受け止める。

 観客達が息をつく間もなく繰り返されるシルバーウルフの連撃。その全てに反応するパープルオーガ。

「双狼刃!」

 上段からのクロスさせた双剣による斬り下ろしが放たれる。

「オラッ!」

 双剣を手甲で弾き上げると蹴りを放つパープルオーガ。

 咄嗟に身を引きこれを避けたシルバーウルフ。だが、蹴り足が地面に付く前に飛び上がったパープルオーガの後ろ回し蹴りが腹部に突き刺さる。

 蹈鞴を踏むシルバーウルフ。そこに反撃を仕掛けるパープルオーガ。今度は自分の番だと言わんばかりの連打を浴びせる。

 風切り音を起こす高速のジャブ。鋭いストレート。抉るようなフックに突き上げるボディブロー。双剣で受けていたシルバーウルフだったが、両手を弾かれてガードが開いた。その隙間を縫うように突き上げられたアッパーカットを首を限界まで伸ばしてギリギリで躱すシルバーウルフ。そのままその場で1回転して双剣を横薙ぎに振るう。

 バックステップでこれを避けたパープルオーガ。だがシルバーウルフの回転は止まらない。廻りながらもパープルオーガを追って双剣が迫る。

 バックステップを繰り返しこれを避け続けるパープルオーガだったが、不意に片方の剣先が伸びた。ゴールドレオ戦でも見せた伸びる魔剣の効果だ。

「シャオラッ!」

 迫る切っ先を手刀で叩き落とすパープルオーガ。

 とそこへ回転を止めたシルバーウルフが上段からの斬り下ろしを放つ。

「オラッ!」

 拳を突き上げてこれを受け止めたパープルオーガ。ここで互いに1歩飛び下がり再び距離を取る。

 手に汗握る互いの猛攻に会場は静まりかえっていたが、距離が空いたことで一気に爆発したような歓声が上がる。

「いいぞー!」

「もっとやれー!」

「うぉー!」


「なかなかやるな。」

「こっちの台詞じゃ。まさかあのラッシュからのアッパーを躱されるとは思わなんだ。」

 ニヤリと笑い合う2人。そこからはまた互いに近付くと猛攻を仕掛け合う。

 突き出される拳、振り下ろされる双剣。手甲で弾き上げる、双剣で受け止める。

 パープルオーガのラッシュが始まる。繰り出される高速のジャブ。力強いストレート。抉るようなフックに重くのしかかるボディブロー。さらに拳の隙間を縫うように鋭いローキックが放たれる。

 拳の攻撃をなんとか双剣で防いでいたシルバーウルフだったが、ローキック対策が出来ていなかった。カットすることも出来ず太股にローキックが突き刺さる。5度目のローキックを受けてシルバーウルフが足を着いた。ダメージが蓄積して立っていられなくなったのだ。

 その隙をついて地面すれすれから放たれるアッパーカット。首を伸ばして避けようとするシルバーウルフだったが、パープルオーガの踏み込みが深い。

 顎先を的確に打った拳により、シルバーウルフの身体が持ち上がる。

 そこにダメ押しのハイキック。

 脳を揺らされたシルバーウルフは倒れ込む。

 しばらく動けないシルバーウルフ。意識を刈り取られた様子。

 そこで審判員が割って入り、シルバーウルフのリタイアを宣言。

 ここにパープルオーガの優勝が決まったのであった。


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