551話 開国祭8
「さぁ!本戦準決勝戦が始まります!準決勝戦第1試合は経歴不詳の謎の傭兵シルバーウルフ対こちらも経歴不詳の謎の傭兵ゴールドレオ!お互いがここまで相手を圧倒する戦い振りで準決勝戦に昇ってきた猛者達です!双剣使いのシルバーウルフの方が強いのか!はたまた大剣使いのゴールドレオの方が強いのか!では、準決勝戦第1試合、開始です!!」
呼び込まれて会場入りした2人はお互いにリラックスしていた。
普段から2人で手合わせしているくらいだ。慣れた相手だとも言える。
壇上にあがり対峙する2人。
不意にゴールドレオがシルバーウルフに話しかけた。
「お前と本気でやり合うのは数年ぶりか。」
「あぁ。同じ傭兵団にいた時に小競り合いした程度だけどな。」
「うむ。あれから互いに成長もしておる。今日はとことんやり合おうぞ!」
「おうよ!望むところだ!」
飛び出したのはシルバーウルフ。
双剣を振り上げ交互に斬りつける。
ゴールドレオはこれを最小の動きで大剣で受け止め、反撃の横殴りの大剣の振り抜きを放つ。
これはバックステップで避けたシルバーウルフ。
大剣が振り抜かれた瞬間を見て再度近付くと双剣を振るう。
これは軽く後退したゴールドレオの眼前を空振りする。大剣を戻したゴールドレオが大上段からの振り下ろしを放ち、シルバーウルフは双剣を掲げて交差させた刃で受け止める。
押し込むゴールドレオ、させじと押し上げるシルバーウルフ。
シルバーウルフが前蹴りを放ちゴールドレオの身体を後退させる。
「やるな!」
「兄貴もな!」
再びシルバーウルフが攻めたてる。双剣を交互に振り抜き隙間なく攻める。
ゴールドレオも最小の動きで大剣を降り続け双剣による斬撃を防ぐ。
僅かに空いた隙間を縫うように大剣を振るうゴールドレオ。双剣を振り上げてこれを防ぐシルバーウルフ。
そこにゴールドレオの前蹴りが放たれシルバーウルフの腹部に突き刺さる。
よろめくシルバーウルフ。その隙を狙っての大剣の振り下ろしが迫る。
再び双剣を掲げて交差させた刃で受け止めるシルバーウルフ。
だがそこに再度ゴールドレオの蹴りが放たれる。
身体をくの字に折るシルバーウルフ。その頭部を狙って大剣が振り下ろされる。
咄嗟に頭を横にずらしたシルバーウルフの耳元すれすれを大剣が行き過ぎる。
当たっていればただでは済まなかったであろう一撃にシルバーウルフの額から汗が流れる。
その後も互いに斬り込み相手の斬撃を受け、弾き飛ばし、反撃に転ずるといった攻防が繰り返される。
「いくぞ!断頭斬!」
大きく跳躍したゴールドレオが大上段から大剣を振り下ろす。
双剣を掲げてこれを受け止めるシルバーウルフ。しかし余りの衝撃に膝が折れる。
「どうした!これでしまいか?」
「なんの!双狼刃!」
交差させた刃を振り抜き大剣を弾くシルバーウルフ。すぐさま立ち上がりゴールドレオとの距離を取る。
再び壮絶な斬り合いに発展。振り下ろされる双剣。小刻みに左右に振られる大剣。横薙ぎに払われる大剣。双剣で叩き落とすシルバーウルフ。
暫しの攻防ののち、互いに1歩後退する。
「やるようになったな。斬撃が鋭くなっておるわ。」
「なに。まだこれからさ!」
シルバーウルフが1歩前進して右手の剣を振るう。
「はっ。踏み込みが甘いぞ!それでは俺様には届かん!」
「忘れたか?俺が持つ剣は魔剣だぜ?」
振り下ろされる剣の刀身が伸びてゴールドレオを袈裟懸けに切り裂く。思わず膝をつくゴールドレオ。
「がっ!」
「見誤ったな。魔剣の攻撃範囲を見せるのは初めてだしな。」
「むぅ。やられたわ。すっかり忘れておったぞ。魔剣の存在を。」
「どうする?続けるか?」
「いや、傷は浅いが見事な1本を取られた。ここは俺様の負けでいい。」
そう言うと立ち上がり背を向けたゴールドレオは自分から場外に降りて敗北を認めた。
会場からは大歓声があがる。
決勝戦第1試合はシルバーウルフの勝利で幕を閉じたのである。
「さぁさぁ、準決勝第2試合はこれまた経歴不詳の謎の傭兵、パープルオーガ対勇者パーティーの戦士、ライオネルの登場だ!ここで勝ち昇った方が決勝戦でシルバーウルフとの対戦となります!両者壇上にどうぞ!」
呼び込まれた両選手が壇上にあがり睨み合う。
「ではぁ!準決勝第2試合開始です!」
まずは互いに様子見にするようになかなか近付かない。
円を描くようにジリジリと回りつつその直径を狭めていく。
互いの距離が2mを切ったところで、ライオネルが仕掛けた。
大きく踏み込むと大上段からの斧による斬り下ろしを放つ。
これを手甲に当てて受け流すパープルオーガ、だが受け流された斧をクルリと反転させてライオネルが下段からの振り上げを行う。これは半身になって避けたパープルオーガ。お返しとばかりにミドルキックを放つとライオネルが脇を締めて受け止める。だが蹴り足を戻して地に着くことなく再び放たれたハイキックはライオネルの頭部を直撃。ふらつくライオネルだったが、どうにか足を踏ん張り倒れることは避けた。だが、そこに迫るのはパープルオーガの猛ラッシュ。空を切り裂くジャブの連打に突き刺さるようなストレート。肉を抉り取るほどの威力を秘めたフックに、空かさず放たれるボディブロー。
ライオネルは身を丸めて防御姿勢を取るばかり。そんなガードの上から強烈なストレートがブチ込まれて蹈鞴を踏むライオネル。だがラッシュが止まった事を見るや反撃に転じた。横殴りに振るわれる斧は手甲により弾かれ、強引に引き戻して振り下ろしを行えば再び手甲に弾かれる。
パープルオーガは巧みに手甲を駆使してライオネルの攻撃をいなし、隙が出来れば拳や蹴りを放つ。ライオネルもよくガードした方である。
しかし唐突に距離を詰めて地面すれすれから放たれたアッパーを顎に受けて吹き飛び場外となった。
危なげない戦い振りでパープルオーガが決勝戦進出を決めたのだった。




