545話 開国祭2
金獅子、銀狼、紫鬼、翠鷹、茶牛、朱鮫ら6人は露店で様々な物を買いつつ、街の中心部へと向かっていた。
各々の手にはイカの姿焼きやら焼きそばやらお好み焼きやらリンゴ飴やら露店で買った物が溢れんばかりである。
どこかで腰を据えて食べようかと彷徨っているうちに街の中心部にある闘技場付近にまでやって来ていた。
闘技場の周りには規制でもあるのか露店は建っておらず、露店で買った物を食べるために道端に座り込む人達が多々見られた。
「俺様達もあの辺りで腰を降ろして食べるか。」
「そやね。もう両手一杯に買い物してもうたし、1回食べましょか。」
そうして金獅子達がやって来たのは闘技場の入口付近。
そこには簡易テントが組まれて何かの受付をしているようだった。
テントにいるスキンヘッドの髭面の男が声を張り上げる。
「さぁさぁ、開国祭名物、大闘技大会の出場者募集中だよ!今大会は優勝賞金はなんと金貨10枚、一千万リラだ!我こそはと思う強者はこぞって参加しな!」
その台詞を聞いて紫鬼が静かに言う。
「闘技大会か。」
「あぁ。そう言えば灰虎とは闘技大会で知り合ったんだったか。大丈夫か?」
気を遣った銀狼か声をかける。
「あぁ。大丈夫じゃ。もう乗り越えたからな。」
「灰虎って誰や?」
朱鮫が何気なく問い掛けた。
「一緒に魔族領に向かった昔の仲間じゃ。残念ながら戦死してな。」
「そうやったんか。魔族領でも色々あったんやなぁ。」
「あぁ。色々あったさ。」
しみじみと答える紫鬼。
「ふむ。闘技大会か。優勝賞金金貨10枚は魅力的よなぁ。」
金獅子が呟く。
「なんで大金貨1枚やのうて金貨10枚言うんやろな?」
翠鷹はそこが気になったようだ。
「庶民は大金貨なんて目にする機会が無いからな。金貨だって手にする機会はない。精々大銀貨くらいなもんだろ。だから大金貨1枚って言うよりは金貨10枚って言った方が分かり易いのさ。」
銀狼が答える。
「そうか。そう言われてみればそうやね。」
「一国の軍師様やから翠鷹殿も感覚が庶民とちゃうんやな。」
「まぁ、それなりに給金は貰っとったからなぁ。」
朱鮫とそんな事を言い合う翠鷹。
「普段は財布事情は黒猫に任せきりだからな。ここらで俺様達も1つ大金を手に入れるか?」
「闘技大会に出るって事か?まぁオレは構わないが。」
「そうじゃな。たまには訓練だけでなくひと暴れするかのぅ。」
金獅子の提案に銀狼と紫鬼は乗り気だ。
「ウチはやめとくわ。見世物になるのはあんま好かんわ。」
「儂もそもそも戦闘向きじゃないからやめておくぞぉ。」
「ワイもやな。闘技大会で魔術は使えんやろし。そもそも参加費とかかかるんちゃうん?」
「む?そうだな。聞いてみるか。」
朱鮫に指摘されて金獅子が呼び子の元へと向かう。
「闘技大会に参加するにはどうしたらいい?」
スキンヘッドの髭面は和やかな笑みを浮かべながら言う。
「ご参加希望ですかい?参加費は銀貨1枚。優勝賞金は金貨10枚だよ。」
「普段の武装でいいのか?」
「あぁ。もちろんだ。参加者はかなりの数になる予定だからね。こっちで武具を用意なんてとてもじゃないけど出来ないよ。」
「そんなに数がいるのか?大会のスケジュールはどんな予定なんだ?」
「今日中に参加は締め切りで明日に予選、32名に絞ってから明後日から2日に渡って本戦が行われる予定だよ。」
「本戦に行けるのは32名か。」
それを聞いていた紫鬼が言う。
「ワシが前に出た時は16人で4日間だったと思うが、倍で2日となると過密スケジュールじゃな。」
「普段とは違う祭りの特別ルールだからね。1日目で8名まで絞ってから最終日に準々決勝から決勝を行うんだ。お兄さんも参加希望で?」
「あぁ。3人参加で頼む。参加費の銀貨3枚な。」
金獅子がスキンヘッドの髭面に金を渡す。
「はいよ。ありがとさん。したら大会に出る人の名前を書いてってくれな。本名じゃなくても構わないよ。リングネームで出る奴もいるくらいだからね。」
紙とペンを渡される。
「本名でいいか?」
「いや、さすがに獣王の名前があったら騒ぎになるだろ。紫鬼も1回出てるだろ?オレが適当に3人分書いておくよ。」
「うむ。それなら頼んだ。」
「ワシもそれでいいぞ。」
と言うことで銀狼が名前を書いていく。
金獅子をゴールドレオ、紫鬼をパープルオーガ、自分をシルバーウルフと。本当に適当である。
「書いたか?ゴールドレオにパープルオーガ、シルバーウルフか。明日の10時から予選開始だから9時半にはここに集まってくれよ。今でだいたい300人くらい集まってるから予選は10人程度でのバトルロイヤルになると思うが、詳しくは明日また説明があるよ。」
「分かった。9時半だな。」
「あぁ。時間厳守で頼むよ。遅れてきても参加費の返金はないからね。」
それだけ聞いてテントを離れた。
「エントリー出来たん?」
戻ってきた銀狼に朱鮫が問う。
「あぁ。明日から予選らしい。」
「ほな黒猫殿や蒼龍殿、藍鷲殿達にも夜にでも伝えよか。観戦したがるかも知れへんし。」
「そうだな。一応伝えるだけ伝えておこうか。」
こうして闘技大会に参加する事にした金獅子達。明日からは大会参加と言う事もあり、ひとまず今日の所は露店での食べ歩きに専念する事にしたのだった。




