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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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544話 開国祭1

 翌日、朝からシーサーペントの肉を薄切りにして塩コショウで味付けたものをパンに挟んだサンドイッチを平らげてから全員で藍鷲のゲートでクロムウェル帝国首都ゼーテまで移動した。

「手荷物は借家に置いて早速街中に行ってみるか。」

 俺が皆に言うと、蒼龍が借家の鍵を開けてくれた。

 久しぶりに借家に入ったが、1階部分はキッチンとリビング、ともう1部屋の1LDK。二階にはさらに2部屋ある造りだったな。雑魚寝する分には部屋数も足りてるか。

 俺達は取り敢えず荷物をリビングに置いて早速街に向けて移動し始めた。

 郊外にあるため、街の中心部までは1時間程度歩く必要がある。

「この大所帯で祭りを回るのもしんどいよな。」

「あ、なら私はクロさんと2人で回りますよ。」

 銀狼の呟きに白狐が返す。

「それに紺馬さんも蒼龍さんと2人が良いでしょうし。」

「え?あ、ワタシはみんなと一緒でもいいのだが。」

「いや、折角だ。我と2人で祭りを楽しもうではないか。」

「そ、そこまで言うなら蒼龍と2人で回るよ。」

 白狐の提案に蒼龍と紺馬も乗っかった。

「それでもまだ大所帯だな。よし、藍鷲と緑鳥も2人で回れよ。」

 銀狼が藍鷲と緑鳥に言う。

「な?!え?僕と緑鳥さんですか?」

「わたしは構いませんよ。藍鷲様とお二人で回るのも楽しそうですし。」

「あ、ならそれでお願いします。」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

 頭を下げる藍鷲。下げ返す緑鳥。

 んー。あの2人の関係性はまだまだ発展途上かな?この祭りでもっと近くなればいいけどな。

 藍鷲の頑張りに期待しよう。


 街の中心部に向けて足を運んでいると前方から1人の女性が歩いてきた。

 金髪ロングの美形で白いシャツに黒のパンツ姿である。

 こちらに気付いた女性は駆け足で近付いてきた。

「やはりゼーテにおいででしたわね。もしかしたらと思って声掛けに窺いましたの。」

 知り合いか?蒼龍に向けて話しかけてきた。

「君は特例騎士の?普段の鎧姿ではないので、すぐには気付かなかったぞ。」

「はい。フェリオサでございますわ。もしよければ開国祭をワタシとご一緒に回りませんこと?」

 あぁ、帝国の特例騎士か。確か魔族領に一緒に行った女性騎士だ。蒼龍を祭りに誘いに来たようだ。

「あぁ。すまんな。今さっき妻と2人で回る事にしたのだ。」

「え?妻?結婚されていましたの?」

「あぁ。結婚したのは最近だがな。紹介しよう。妻の紺馬だ。紺馬、こちら帝国の特例騎士であるフェリオサ殿だ。」

「紺馬だ。よろしく。」

「あ、えぇ。フェリオサでございますわ。よろしくお願いいたしますわ。」

 ショックを受けたような表情のフェリオサ。

「では我等は街に向かうのでな。」

「あ、はい。気をつけて行ってらっしゃいませ。」

 蒼龍を呼びに来たはずのフェリオサは足を止めてしまった。戻らないのか?


 暫く離れてから後方から小さな声が聞こえてきた。

「まさか結婚してたなんて。大丈夫ですわ。失恋の1つや2つ。気にしませんわ。次ですわ。次を探すのですわ。」

 後方から聞こえてきた声で全てを察した。

 どうやらフェリオサは蒼龍に気があったらしい。だから結婚したと聞いてショックを受けていたのか。

 ただ親切心で祭りに誘いに来た訳ではなかったか。まぁそりゃそうか。残念だったなと心の中で合掌して俺は皆に続いて街の中心部を目指した。


 街に近付くにつれて祭りらしさが見て取れた。

 通りには帝国の国旗が多く飾られ、通りを挟む家々の2階同士でも紐を張って帝国国旗をぶら下げていた。

 帝国の国旗は簡易化された剣と斧が斜めに交差し、その中心部の上に王冠を現すMを2つ並べたようなマークが描かれたものだ。

 中心部へ向かう通りには所狭しと露店が並び、数多くの人々が行き交っていた。

「そろそろ人が多くなってきたな。ではさきほど決めた通りに別れるか。借家の鍵は蒼龍が持っておるよな?では借家には8時頃までに戻る事にするか。」

 金獅子が言うと皆頷いた。

「何かあれば通信用水晶でやりとりしよう。皆持ってきているだろ?」

「はい。大丈夫です。」

 俺が問い掛けると藍鷲が元気よく返事してくれた。他の皆も頷いている。

「よし、ではまた夜に。皆普段の事は忘れて祭りを楽しんで来いよ。」

 金獅子が言うとそれぞれペアになった者たちは離れて行った。

「クロさん、私達も行きましょうか。」

「あぁ。行くか。」

 こうして俺は白狐と2人で行動する事になった。


 皆と別れてから早速白狐は何かを探し始めた。

「何探してんだ?」

「宿屋ですよ。一部屋くらい空きがないかなと思いまして。」

「おいおい。俺は皆と一緒で構わないぞ?」

「私達の分じゃないですよ。蒼龍さんと紺馬さん達の分です。あの2人はまだ新婚さんですからね。少しでも2人で居られる時間を作ってあげたいじゃないですか。」

 なるほど。そこまで気が回らなかったな。そう言われてみれば新婚だな。白狐の奴、そういう所にも気を使えるんだな。

 と言うことでその後、宿屋を3軒回り、ツインの一部屋がちょうどキャンセルになったと言う宿屋を発見した俺達は、取り敢えず5日間、その部屋を押さえた。街中からはちょっと外れているが、借家よりは全然近い。

 部屋の鍵を預かった俺達は通信用水晶で早速蒼龍達に連絡をとったのだった。


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