543話 聖都セレスティア62
最終日もドランとヨルジュニアと戯れながら神器化の特訓をし、皆で水辺に入ってパシャパシャやりながら昼飯の準備をして、ほどほどのところで昼飯を食ってはまた2匹とじゃれ合い、ドランに跨がっては遊覧飛行を満喫した。
気付けばすでに時刻は夕方。そろそろ聖都に戻る時間になった。
「ドラン、また聖都まで頼むよ。」
「グギャ!」
ドランは身を屈めて俺達を背に乗せると上空高くに飛び上がった。
来るときは2時間程度の飛行だったから戻ったら夕飯の時間だな。待機組に魚料理でも振る舞うか。
そんな事を考えつつ聖都までの高速で飛びすぎてゆく景色を眺めるのだった。
結局夕飯はシーザー大ナマズの蒲焼きにしたが、みんなに好評でまたすぐにでも食べたいとの事なので仕込みだけ済ませて影収納に仕舞いこんでおいた。
「あーぁ。皆して美味いもん喰いながら迷宮探索とかずっるいわぁ。せやかて次はワイらも一緒に行くで。な、藍鷲殿。」
「あ、はい。僕らも王化の訓練は終わりましたので、次はご一緒出来るかと。ただ迷宮という限られた範囲内でどこまで役に立てるかはわかりませんが。」
朱鮫に話を振られてしどろもどろながら藍鷲が言う。
「何言うとんねん。ワイらかて立派な戦力やろがぃ。迷宮中火の海にしたらぁ。」
「それはオレ達も焼け死ぬだろ。」
朱鮫に銀狼がツッコむ。
「まぁ、そのくらいの気持ちで挑む言う話や。ほんまに火の海にはせぇへんよ。当たり前やん。」
「ちょっと勢いに乗ったらホントにやりかねん雰囲気はあったぞ?」
紫鬼も不安そうに朱鮫を見る。
「だ、大丈夫やって。ほんまにやらんから。」
「朱鮫はんは自分も使いもんになる言いたくて、ちょっと大袈裟に言うてもうたんやなぁ。」
翠鷹が助け船を出した。
「せやねん。ほんま。やらんから次は連れてってぇなぁ。」
「そう何度も言わなくともお前達も王化の訓練が終わったら連れて行くつもりだったぞ。安心せい。」
金獅子が朱鮫に優しく声をかける。
「金獅子殿ぉ!ありがとぅ!」
「大袈裟だな。それで藍鷲よ。帝国までのゲートはすぐにでも開けるのか?」
「えぇ。黒猫さんが片付けを終えたらすぐにでも。」
金獅子に問われて藍鷲が答えたので、俺も言う。
「片付けは終わったぞ。俺はすぐにでも行けるが他のメンツは荷物は出来てるのか?」
「あ!狡いですよクロさん。私は一緒に森に行ってたんですから準備出来てませんよ!」
「ウチらもまだ荷物は作っとらんかったわ。明日出発やろ?」
白狐に続けて翠鷹が言う。
「む?そうか?明日になると混むだろうから今日のうちに出発するのかと思っていたのだが。」
「借家は街中から離れているから祭りの喧騒には程遠いだろう。我も明日移動のつもりであったぞ?」
金獅子に蒼龍が言う。
「そうか。確かにそれもそうだな。では明日朝から移動と言うことで良いか?」
「オレはそれで構わないよ。」
「我も問題ない。」
「せやったら急いで荷物作らんとな。男共はええやろけども女には色々と準備があるんやで。」
「そうですよ。緑鳥さんに紺馬さんも荷物大丈夫ですか?」
「わたしは今から荷造りします。」
「ワタシはそこまで荷物はないからな。問題ない。」
「じゃあ緑鳥さんと翠鷹さんと私だけですね。急ぎましょう。」
「せやね。」
そう言い残して女性陣は食堂からバタバタと自室に戻って行った。
「女には色々ある、か。」
「そうだぞぉ。金獅子は女性の扱いをもうちと学んだ方がいいなぁ。」
金獅子の呟きに茶牛が答える。
「そういうお前は女の扱いを知っているとでも言うのか?」
「もちろんだぁ。儂はドワーフの中じゃイケメンだからなぁ。今は特定のあいてはいないがモテモテなんだぞぉ。」
髭面の茶牛がイケメンか。ドワーフの感性はわからんな。
「そ、そうか。モテモテか。なら後で女性の扱いについてレクチャーして貰うとするか。」
「任せとけぇ。1から10までしっかり教えてやっからよぉ。」
胸を張って答える茶牛。でもドワーフ特有の考え方とかありそうで全部が一般女性に当てはまるかは微妙そうだな。
「それでは我も着替えなどを準備ておこう。」
そう言って蒼龍も食堂を出て行く。
「せやな。ワイも荷造りやな。祭りやしそれなりの格好のがええやろ。」
「僕も忘れ物がないか確認してきます。」
「ならオレも部屋に戻るか。特に荷物はないけどな。」
そう言い残して朱鮫、藍鷲、銀狼も自室に戻る。
残ったのは金獅子と紫鬼と俺の3人。
「黒猫は準備出来ておるとのことだが、紫鬼も出来ておるのか?」
「あぁ。荷物と言っても下着くらいなもんだしな。足りなければ買い足せばよかろう。むしろ魔族領を進んでいた頃を考えれば着替えなどほとんど出来なかったしな。」
金獅子の問いに紫鬼が答える。
「でも今回は街中を歩くんだから着替えくらいは必要だぞ?」
思わず俺も口を出した。さすがに魔族領を進んでいた時と今回とでは話が違うだろう。
「そうか?んじゃあ着替えくらいは用意するか。」
「だな。俺様も今一度荷物を確認してこよう。」
「そうした方がいいな。俺はほとんどの荷物が影収納の中だから問題ないけどな。」
「つくづく便利な術よな。」
「ワシも羨ましいぞ。」
そんな呟きを残して3人して自室に戻るのだった。




