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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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531話 嘆きの迷宮21

 高波に飲み込まれてもみくちゃにされた俺は壁の排水口にまで流されながらもすぐさま緑鳥達の様子を確認した。

 よかった。金獅子の張った障壁が間に合ったようで、先程と変わらぬ位置で紺馬の回復に努めている。かなり大きく脇腹を抉られていたからな。聖術も重ねがけしないと回復できないのだろう。

 周りを見渡せば俺以外の面々も排水口にまで流されてやっと立ち上がるところだった。


「ふぅ。タイダルウェイブでなければ消せないとは紫の炎が厄介よな。妾の鱗を焦がしてなお燃え続ける炎など聞いた事もない。これは妖術か?」

 リヴァイアサンが問うてきた。

「あぁ。ワシのオリジナルの妖術じゃ。半端な水じゃ消えはせん。対象を燃やし尽くす炎よ。」

 律儀に紫鬼が返答する。

「ふむ。このままでは良い的にされてしまうわなぁ。仕方ない。アレをするか。」

 そう呟いたリヴァイアサン。次の瞬間、リヴァイアサンの身体が光り始めて圧縮されたように小さくなっていく。

 余りの眩しさに直視出来ないが、30m程もあった身体が見る見る小さくなり、最終的には身長150cmほどの人型に変身した。


「ふぅ。この姿になるのも久々よなぁ。」

 リヴァイアサンは小柄で、水色の髪を縦ロールにして両サイドに垂らし、水色のワンピースを着た人型になっていた。

 その身長に似合わず手には2mほどの槍を携えている。二叉の槍の穂先が半ばから螺旋を描くように絡み合い1本の穂先となる作りの槍で、石突き部分には水色の魔石が埋め込まれている。

「さて、まずは試運転よな。」

 リヴァイアサンは言うなり1番近くにいた金獅子へと近付き槍を振るう。

「水刃!」

 槍は大剣で防いだものの、槍から放たれた水の刃が金獅子を襲った。

「ぐふっ!」

 王鎧には1本の横線が刻まれる。

 リヴァイアサンは槍を大剣に止められた状態でその場で跳躍、強烈な踵落としを金獅子に喰らわす。

「ごっ!」

 これには金獅子も腰を折る。

 その拍子に大剣から槍が外れた。

「ドラゴンファング!」

 続けてリヴァイアサンが放った高速突きにより金獅子が弾き飛ばされる。

「ぐはっ!」

 見れば攻撃を受けた肩口の王鎧が砕けていた。相当な威力だ。


「ふむ。なかなか悪くない。」

 満足げに頷くリヴァイアサンに向けて銀狼が突進する。

「双狼刃!」

 振るわれた双剣はリヴァイアサンの持つ槍に防がれてしまう。それどころか双剣を弾いた槍の石突きで銀狼の腹部を強打。そのまま顎先へと石突きを振り上げて銀狼をも吹き飛ばす。

「久々の人化じゃが具合は悪くないな。さぁ。第二ラウンドじゃ。掛かってくるが良い。」

 手元で槍を回しながらリヴァイアサンが言う。

「ふっ。人型になってくれたのなら戦い方も変わるってもんですよ!クロさん!お願いします!」

 白狐に言われてピンと来た俺は屈み込んで影収納から投擲用のナイフを取り出すとリヴァイアサンの影に向けてナイフを投げた。

「影縫い!」

 強力な力を持つ相手では数秒程度しか動きは止められないが、その数秒が命取りになる事もある。

「ナイスです。クロさん!」

 リヴァイアサンに駆け寄っていた白狐が言う。

 一方影縫いがヒットしたリヴァイアサンは

「む。動けぬ。」

 ちゃんと動きを止められたようだ。

「ふんぬっ!」

 だが動きを止められたのは2秒程度だろうか。

 その間に白狐が白刃・白百合を振るっている。

「破滅の刃、一の型:沈黙。」

 一瞬でも動きを止められてガードが間に合わなかったリヴァイアサンの脇腹に刃が吸い込まれる。

「…!」

「これで魔法は封じましたよ!」

 リヴァイアサンは片手で喉を押さえて声を発しようとしている。

 だが、白狐の破滅の刃はかなり強力な毒の攻撃だ。白狐の言う通り声を発せなければもう魔法は撃てないだろう。

 と思っていたのだが。

「…!…!ガッ!ガハッ!」

 リヴァイアサンは咳き込みながら声を発したではないか。

「ん!んん!喉の詰まりが取れたか。面白い術じゃな。相手の声を奪うか。じゃが残念じゃったな。妾には通用せん。ウォーターニードル。」

 リヴァイアサンの周りの床から大量な水の針が発生。これには白狐も下がるしかない。

「私の術が破られたですって?!そんな!屈辱です!!」

 床から生えた針の山が消えた後に金獅子と銀狼がリヴァイアサンに向けて駆け出した。

「雷撃剛殺剣!」

 雷撃を纏った大剣のフルスイングを放つ金獅子。

「氷結双狼刃!」

 双剣をクロスさせてから両サイドに斬り込む銀狼。

 同時に放たれた2つの技。どちらが防がれてもどちらか当たる。そんなタイミングだった。

 しかし、リヴァイアサンは手にした槍で大剣を受け流すと共に石突きで双剣を弾いた。

「「なっ?!」」

 それどころかその場で1回転し、反撃とばかりに槍を振るい金獅子と銀狼を吹き飛ばす。

 だがその背後に白狐が迫る。

「影縫い!」

 俺も支援に回る。

「破滅の刃、二の型:盲目。」

 ワンピースの背中部分をザックリと白刃・白百合が切り裂いた。

 だが人型になっても竜鱗は健在のようでそこまで痛打にはなっていないように見える。

「む?次は視力を奪われたか。じゃが見えずとも視えるぞ!この方向から殺気じゃ!」

 視力を奪ったはずのリヴァイアサンが的確に白狐に向けて槍を薙ぎ払ってきた。

 反撃が来るとは思ってもいなかったであろう白狐は左肩へと槍の薙ぎ払いを受けて後退させられる。

「双龍閃!」

 そこに蒼龍が2槍で斬り込む。

「鬼火・大輪。」

 紫鬼も両手を突き出して100cm程の紫の大火球を生み出してリヴァイアサンへと向ける。

「影縫い!」

 俺が放ったナイフはリヴァイアサンの影に的中。一瞬動きを止める。

 そこへ蒼龍が斬り込みリヴァイアサンの胸部に斬撃が与えられる。

 そしてその後を追うように紫鬼の鬼火がリヴァイアサンを包み込んだ。


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