528話 嘆きの迷宮20
リヴァイアサンのいる部屋は四方の壁に床近くに排水様の穴があいているようで、大量に襲い来た高波の水が段々とひいていった。
金獅子の咄嗟の判断で障壁を展開してくれたおかげで高波の衝突は免れたが、その後にうねるように襲い来る水にはあがなえず俺と紫鬼、紺馬に緑鳥は排水口まで流されていた。
床に武器を突き立てた金獅子、銀狼、白狐、蒼龍はなんとか耐え忍んだらしい。
「ほうほぅ。妾のタイダルウェーブを受けても潰れぬか。これは面白い。なれば褒美をやろう。ほら、好きに攻撃してくるといい。受けて立とうではないか。」
余裕そうにリヴァイアサンか言う。
「好きにって言いました?なら手加減なしで行かせていただきますね!」
白狐が白刃・白百合を床から引き抜き走り出す。
続いて金獅子、銀狼、蒼龍も駆け出す。
俺も水の流れにもみくちゃにされて平衡感覚が狂っていたが、必死に立ち上がり魔術を発動させる。
「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃え盛れ、燃え盛れ魔素よ。我が目前の敵達に数多の火球となりて打倒し給え!ファイアショット!!」
詠唱により手にした黒刃・右月の先に魔法陣が描かれ、直径5cm程度の小さな火球が数十個生み出され、リヴァイアサンへと飛んでいく。
「鬼火・満開!」
同じくフラつきながらも両腕を突き出した紫鬼の手の平の前に200cmもの超巨大な紫の火球が生まれ、次の瞬間10cm程度の火炎弾に分かれて次々と、リヴァイアサンへと迫る。
「電撃矢!」
紺馬もその場で雷撃の矢を射る。
俺のファイアショットと紫鬼の鬼火、それに紺馬の矢がリヴァイアサンの胴体部に当たり爆発を起こす。
「グハァァァァ!」
リヴァイアサンの身体から煙がたちのぼる。
「てりゃぁぁぁあ!抜刀術・飛光一閃!」
「はぁぁぁぁあ!雷撃断頭斬!」
「うぉぉぉぉぉお!氷結双狼刃!」
「双龍覇連突!」
爆発の後に続く4人の猛攻。
「グワァァァァァア!」
唸り声をあげるリヴァイアサン。
「くぅ。なかなか効くではないか。やられたわ。では次はこちらの番じゃ。ウォーターニードル!」
あまりこちらの攻撃が効いた様子も無くリヴァイアサンは魔法を放つ。
床から無数の水の針が発生し、近寄っていた4人を襲う。
「くっ!」
白狐はペガサスの靴の効果を使って空中へと逃れた。
「はぁぁぁぁあ!」
金獅子は大剣を振り回して水の槍を霧散させていく。
蒼龍は紅蓮の炎を纏う紅色の槍を叩き付けて蒸発させる。
「ぐはっ!」
銀狼は脇腹を水の槍に抉られて後方へと弾き飛ばされてきた。
一撃で王鎧を抉るとかとんでもない威力だ。よほどの魔力量を持った者が放った魔法だということがうかがい知れるというものだ。
「銀狼様!親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!!」
空かさず緑鳥が聖術で銀狼を癒す。
「ほほほほっ。妾のウォーターニードルも避けるか。面白い。実に面白いぞ。さて、次はお主らの番じゃ。かかってこよ。」
リヴァイアサンは余裕の声音で言い放つ。
その後も金獅子達が斬りかかる中、俺と紫鬼が火炎攻撃を仕掛け、リヴァイアサンのウォータースピアに白狐が貫かれたのを緑鳥が回復し、復帰した白狐が上空を駆けてリヴァイアサンのうなじに攻撃を仕掛けたり、リヴァイアサンの放つウォーターショットに全員が弾き飛ばされた中で緑鳥が回復し、とターン制バトルのように攻守を交代しつつ、戦闘は続いた。
「ほほほほっ。ここまでやるとは思わなんだ。今までで1番の強者よなぁ。じゃが、お主らを支えておるのは後方に控えた緑色の鎧姿の者であろう?こうしたらどうなる?ウォーターランス!」
金獅子の大剣を前脚の爪で弾きながらリヴァイアサンは緑地に向けて水で出来た高速回転するランスを放った。
「聖王!危ない!!」
咄嗟に紺馬が緑鳥を横に突き飛ばす。そこに迫るウォーターランス。緑鳥の立っていた場所には紺馬の姿が。避けられない。そう思った瞬間、回転するランスに巻き込まれて紺馬が壁に縫い止められた。
「がはっ!」
ウォーターランスは30cm程度で紺馬の左脇腹をかなりの範囲で抉っている。
ウォーターランスが消えて紺馬が倒れ込む。
「ぐふっ!」
「紺馬!」
蒼龍が声を上げる。
「紺馬様!親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者の零れる命の雫を止めて給え。ヘモスタシス!」
突き飛ばされた緑鳥もすぐさま止血の聖術を唱えた。
「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!!」
続けて回復の聖術をかける。
「よくも紺馬を!双龍閃!!」
怒りに燃えた蒼龍の紅色の槍に纏う紅蓮の炎がさらに燃えあがり、三叉の槍と共にリヴァイアサンの首へと叩き込まれる。
「うぉ?!」
「双龍覇連突!双龍閃!!双龍覇連突!!!」
蒼龍が怒りのままに突き、薙ぎ払い、さらに突く。
蒼龍の猛攻を受けてリヴァイアサンの首が上を向く。
そこへ金獅子と白狐も躍りかかる。
「雷撃剛殺剣!」
「抜刀術・飛光一閃!抜刀術・閃光二閃!!」
「グオォォォオ!」
首筋へと強打が撃ち込まれる。
「鬼火・満開!」
「ファイアショット!」
紫鬼と俺も火炎の攻撃を繰り返す。何度目かになる火炎攻撃を受けてリヴァイアサンの身体の鱗が炭化して崩れ落ちる。
白狐達の攻撃も鱗を砕き肉を断つ。
「ぬおぉぉぉお!タイダルウェーブ!」
再びリヴァイアサンの背後から高波が発生。俺達へと迫る。
「兄貴!緑鳥と紺馬だけでも!」
「おうよ!障壁!!」
紺馬に回復の聖術をかける緑鳥。その周りを透明な障壁が包み込む。
次の瞬間には俺達は上下左右も分からないくらいの大量の水に飲まれていた。




